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出逢いにまつわる本の話

何を読んだらいいかわからない、と言ったあなたへ、私の好きな本の話をしよう


春は新しいことを始める機会でもあるけれど、何か新しいものに出会ったでしょうか?
私は最近は散歩にハマっていたりする。
といっても、ご近所をそぞろ歩く感じだけれど。

驚くくらい暑くなってきているけれど、季節としはまだ春だし、今日は「出逢い」にまつわる、と思っている本の話をしてみようと思います。

私は幸せになりたい。長い間、川底をさらい続ける苦労よりも、手にしたひと握りの砂金に心うばわれる。そして、私の愛する人たちがすべて今より幸せになるといいと思う。

「ムーンライト・シャドウ」キッチン 吉本ばなな

「キッチン」はもう古い本になってしまって、どこでも買えないのかもしれない。もしくは、少し大きめの古本屋さんなら、どこにでもあるのかもしれない。
ベストセラーってそういう運命なのかもね。

実は私は「キッチン」が好きすぎて、単行本と文庫本(角川の)と電子書籍と持っている。多すぎ。
「キッチン」を初めて読んだときは、実は「友達のお母さん」に貸してもらったんだけどね。

何度読み返してもしみじみと、「キッチン」はいつ読んでも飽きないと思うし、「満月ーキッチン2」は、とても胸に来る話。
余談としては、「キッチン2」は読むと絶対においしいカツ丼が食べたくなる。

でも今日は、「キッチン」に収録されている「ムーンライト・シャドウ」について話してみようと思う。

生きていると、出逢いもあるし別れもあるよね、っていうのは、とても凡庸なフレーズだね。
でも本当にそうで、何気ない会話が最後になったりもするし、なんということもない出逢いが、なぜか長く続いたりもする。

この話では、もうすぐ100年に一度の見ものがある、って、朝のランニング中に突然出逢った人から教えてもらうのが、ある意味でスタートなんだけど。

例えばもしあなたが、そんな話をされたら信じる?
まぁ、そのなんとも言えないものを見られるかもしれない手段は、たいして大変ではないのよ。
とある日の朝早く、あなたが歩いていける範囲にある、とある川に行くだけ。
ただ、見えるかどうか、何が見えるか、そんなことははっきりしていないのだけど。
その川は、主人公にとって亡くなった恋人との思い出が強いだけに、いろいろ思うところもある感じで話は進む。

あなたには今、そんなふうに見えるとも見えないともわからないような、しかも何が見えるかもわからない、それでもいいから、万が一の望みをかけて早朝の川に佇む。
そんな必死な気持ちを持つ誰か、何かは、いる?
もし突然そんな話をされて、信じる?

私はこの本の中で、その100年に一度の見もの、かげろうのようなものを見られるかもしれない、って話をしてくれた人と主人公の出逢いの場面が好きなの。
この出逢いこそが、とても大切。

そしてこの話の舞台として、川が重要なんだけどね。この話を読むたびに、いつも思い浮かぶ川があるんだ。
私が小さな頃に身近だった川。
いつもそこを思い浮かべちゃう。
それもあって、私はこの「ムーンライト・シャドウ」を読むと、子供時代の自分のことをちょっと思い出すんだ。高校生くらいまでの自分のことをね。

もちろんこの話の中には、他の出逢いや別れもある。いくつも出逢いと別れが当たり前のようにあって、いつの間にかその中で自分は生きているよね。
それは人だけじゃなくて、ものだったり、私が思い出す川みたいな、風景や場所だったりもあるなぁ、と思ったりする。

さて、こんな私からのなんということもない話を読んで、あなたは何か気になったかな?
逢いたい人がいた?
なくしたものを思い出した?
思い出の川がある?
素敵な出逢いがしたい?
それとも私みたいに、高校時代くらいまでのことを思い浮かべた?

いつかそんな話ができたら楽しそうだな。
ではでは、また書くね。

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