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若者のメンタルヘルス促進には「物語の力」が必要だ。
僕は過去に心を病んだ。それが2018年の大学3年生の頃と社会人2年目の頃のこと。現在は当事者としての経験を学生たちに語る活動をしている。
自転車日本一周旅を開始し各地域に訪れ、これまで全国約30ヶ所、4000人ほどの学生に対し、自分が経験したことを伝えてきた。
これまでの活動や実体験の中で感じてきたことが一つある。
それは学生のメンタルヘルス教育には「物語の力」が必要ということだ。
ここで言う「物語」には色々なものがある。
家族や友人の物語。アスリートやアーティストの物語。アニメやドラマのキャラクターや登場人物の物語。そして、自分自身の物語。
誰かの苦悩や葛藤、挑戦や挫折に自分と重なる部分があった時、人は心を動かされ、行動にも変化が生まれる。
僕が学生に提供しているのは、メンタルヘルスに関する「正しい知識」ではない。「挑戦、挫折、再起」を通じ、当事者が心と向き合う物語だ。
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学生時代はスポーツで華々しい成績を残しつつ有名大学へ進学、順風満帆と思われるような生活を送っていたこと。
チームメイトとの人間関係、就職活動、金銭面のこと、家族との関係に悩み心を壊し、人生の淵まで沈んでいったこと。
周囲の仲間や家族の支えもあり、社会復帰することができたこと。
自身と同じ苦しみを抱える人を減らそうと、新たな挑戦を始めたこと。
悩みや不安を抱える学生は、「当時の悩んでいた時の状況や気持ち」に共感し、授業に関心を寄せてくれた。
新たな挑戦に踏み切ることができず、悶々としていた学生は「新たな挑戦を始めた覚悟と勇気」に共感し、授業に関心を寄せてくれた。
「こころの不安定」は病気云々関係なく、誰にでも訪れるもの。
その不安定とどのように向き合うかによって、病気を予防することもできるし、新たな挑戦に向けたエネルギーにも変換していくことができること。
そして、そういったエネルギーを生んでいく際には周囲にいる人たちのサポートが必要不可欠であったということ。
そういったメッセージを飾らずに自分の言葉で伝えられることが僕の一番の強みであり、学生たちの意識変容や行動変容のきっかけになっているのだと思う。
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とある支援者の方に物語の重要性について話すと「それは原さんだったからできたんじゃないの。」と言われることが何度かあった。ここについては「全くそんなことはない。」と伝えている。
実際、人には「その人だからこそ動かせる心」があるからだ。
僕はバスケットボールをしてきたから学生バスケの時の話を例に出したい。
学生最後の試合の第4ピリオド。4年間、出場機会に恵まれてこなかった4年生がコートに入り、シュートを決めた。その時のチームの盛り上がりはとてつもなく、そういったシーンはこれまでにも何度も見てきた。そして、その盛り上がりの正体は「彼がこれまで積み重ねてきた努力の物語」なのだと思った。
そういった彼の物語(努力の積み重ね)を見てきたチームメイトだからこそ、そのシュートにそれだけ心を動かされていたのだと僕は思う。
おそらく彼には日本代表の渡邊選手や河村選手のように1万人の観客の心を動かすプレーはできない。でも逆に彼らには動かせない数人のチームメイトや友人、家族の心を動かすプレーをすることはできる。
伝えたいことはスキルや質といった存在を超えて、その人だからこそ動かせる心があるということ。そして、誰かの物語に心を動かされ行動を起こした人の物語が、また他の誰かの心の支えになっていくということ。
出会った学生たちのそれぞれの物語が動き出し、家族や友人、大切な人たちの心を癒し、勇気づける存在になっていくことが僕の望みであり、実現していきたいこと。
と、この夢みがちな理想を実現できるよう、これからも前進していきたいと思う。
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