メイクアップアーティストが私の右肩に力を込めた日


(元のURL:https://www.dtto.com/f/jp_daily/p/241326457?ref=ios )

春が近づいてきた。
新作のコスメや春服が出たり、
陽の光が温かかったり、
花粉で鼻がムズムズしたり。
心もだんだんウキウキしてきた。

この春はいちご狩りに行きたいな〜とか。
三茶を散歩したいなぁとか。
そういえば髪切るの、どうしようかなとか。

心が外向きになってきたのを実感する。

今まで、いろんな春があったなと思う。
私にとって春は、今ほど前向きなものではなかった。
環境が変わり、周辺人物にも変化が訪れ、振り回されがちになることが多かった。
春は、別れの季節でもある。


昨年の春、私は、父と弟と祖父に、
別れを告げることになりました。
生まれ育った生家にも。
どんな別れやどんな失恋よりもつらい
壮絶な喪失体験でした。
今もまだ、乗り越えている最中です。
5ヶ月間に渡る死に物狂いの恋さえも
たった3ヶ月で忘れさせるくらい、
それくらい大きな出来事でした。


人は、ネガティブに蓋をしてしまいがちだと思う。
疲れた。嫌いだ。うるさい。めんどくさい。
腹が立つ。許せない。うんざり。もう無理。
どれも一つ一つ大事な、
抱いた本人にしか抱けない、
唯一無二の感情。
抱いた本人に無視され捨てられた感情は、
一体誰が拾ってくれるの?
あなただけが抱いて捨てた感情は、
あなたにしか拾えないんじゃないかな。
この一年は、私にとってそういう感情の取り扱い方を真摯に考えた、貴重な一年でした。

ものすごく大きく揺れ動く感情を
人は認めたがりません。
だって、それでも毎日がやってくるから。
日々や学校や会社は、待ってはくれないから。
けれど、大きく削れた身をメンテナンスしないまま走れるほど、人間は最強じゃない。
私もその1人でした。

メンタルケアの世界には、「グリーフワーク」というものが存在します。
これは、大震災などで家族や大切な人たちを亡くした方達が、
それでも毎日を生きていく、
悲しみや怒りから解放される、
黙っていれば心の中で膿んでいってしまう感情をケアするためのワークです。
こういうケアを初期段階できちんと行うことが、心の風邪の治療・予防になるようです。
私も初期段階で、この処置を施しました。



今日はそういう、「別れに伴う心の傷」とどう向き合うかについて、ハッとさせられた日でした。

https://yoi.shueisha.co.jp/body/beauty/4589/

メイクアップアーティストの吉川康雄さん。
彼の連載はどれも興味深く、まだ全て読むに至っていないのですが、こんなふうに書かれています。


「失恋は傷と同じ。触り続けるとなかなか治らないし、触らなければ、治りも早い。」

「そのためには、別の好きなコトを見つけるのがいいんじゃないかな。」

「『この世の終わり』と思える別れを経験したとしても、人生はそれで終わりではありません。」

「生きてさえいたら、時間がかかったとしても少しずつ、自分なりに受け入れられます。」





私はずっと、自分が負っている傷を
「見ていなければならない」
と考えていたことに気づく。

また膿むと嫌だから。
何度もガーゼを剥がしては、膿んでないか確認する。
確認しては「ほらまだ治ってないじゃん」とセカンドオピニオンを探し始める。
こんなにグズグズ傷を触り続けてたら、治るものも治らないな。
それに、傷の観察が「義務」になっていた。
もうそこから解き放たれて、視線を外して、また春がやってくる世界を見つめたい気がする。
今年こそ、もっと可愛い春服を着たい。
服を選ぶことも靴を履くことも億劫だったのは、もうずっと前の話。


最近の私は、「整う」について考えています。
これまでは傷を見張り続けるのに全エネルギーを注ぎ、整えるエネルギーは残っていなかった。
新しい好きなことももう沢山見つけているのだし、少しずつエネルギーを「明日の私」に向けてあげられるようにしたい。
明日の自分の準備を整えたい。
あしたを整えるために使ったエネルギーは、
あしたの自分に引き継がれる気がする。

私もいよいよ「結(ゆう)」から卒業せねばならないなと考えた、2月24日金曜日。

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