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「未練を紡ぐ」2023年8月18日の日記

・「宇宙の音楽」1・2巻を読んだ。読み終わったそばから何度も読み返している。

・この日記にはネタバレという程ではないが若干漫画の内容が含まれます。



・主人公・零は吹奏楽こよなく愛する少年だが、持病の喘息を理由に中学の吹奏楽部を中途退部した。進学先もわざわざ吹奏楽部のない松籟高校を選んだ、はずだったのに、何故かそこで吹奏楽部が新入生歓迎演奏をやっている。何故!しかもへたくそ!というとこから始まる。

・吹奏楽部のなかった松籟高で楽器を吹く吹奏楽部員たちは、(高校から始めたわけでなければ)みんな「1回やめたはずだったけど、また楽器をやり始めた」というプロセスを経ている。物語の中でその細部に触れられている人物はまだほんの僅かだが(2巻後半で主人公がやっと「みんな何かしら事情がある…ってコト…!?」と気付いた)、同じく出戻り組としては全員分のエピソードに興味がある。ぜひ聞かせてほしい。

・零の中学時代の先輩・あかりが、零が指揮する演奏を聴いたあとに発した「零が音楽続けててよかった」「いつか零の指揮で演奏すると決めた」というセリフが、〜〜〜っっっ、もう、あかり先輩と全力握手ハグしたい。

・人に対して「あなたが音楽やっててくれてよかった」と思うときの気持ちは温かくて切ない。あなたの不在のために音楽を愛していなかった私のいる並行世界、一緒に演奏していた人が音楽(ないし楽器演奏)から去っていった記憶、確実に迫りくる、隣の席にいるあなたと演奏できなくなる未来、これらが「あなたが音楽やっててくれてよかった」に詰まっている。

・考えてるとめちゃくちゃ辛くなってくるな…。

・楽器演奏という趣味は、ただ「楽しいから」で続けるには、あまりにも割くべきリソースが多い。楽器の管理、練習時間、体力、団費、交通費、人間関係。学生時代でさえそれらが大きな負担に感じることがあるし、社会人になってからは尚更だ。それでも楽器を吹く人は、自分の趣味への執着心を手放さない。いったい何が彼らをそうさせるのだろうか。

・私の場合は「未練」の力が大きい。あのときあれができなかった、もっとこんな演奏がしたかった、またあの人と演奏したかった。時折楽器を置いてはまた手にしてしまうのは、多かれ少なかれそういう思いに駆られてのことだ。全部諦めることができないのだ。

・皮肉にも楽器を吹けば吹くほど、様々な人と演奏すればするほど、「未練」は新たな感情を含んで強まるばかり。断ち切られることがない。繊維を次々絡めて糸を紡ぐように、私は楽器を吹き続ける。

・その根底には「きっともう戻ってきてくれない人とまた一緒に吹きたい」という呪いのような導き糸がある。いつまでも叶うことのない望みに引かれ、未練の糸はどんどん太く強くなり、私をここに縛り付けている。

・きっとここに戻ることはないあなたの音を待つために、私は楽器を吹いています。生きていてくださいね。


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