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生き​て​いる​犬​は​死ん​だ​ライオン​より​は​まし​だ​から​。

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だれかが落とした1セント玉が、薄汚れたニューヨークの暗い地下道で光っている。だれも見向きもしない小さな銅貨だけれど、ピリリとした存在感があった。

それは・・・何か・・・こう・・・とても素敵なコトだと、地下道を歩きながらボクは思う。それで、地べたに這いつくばって、その表情を写してみる。暗がりに光る1セント玉が、ボクを詩の世界へと誘った。

パンデミックの世界は、暗い地下道のようだ。先の見えない不安な毎日は、星のない夜空のようだ。そのどんよりとした空気が、ボクの上にのしかかって来る時がある。

そんな時は、バイブル(ギリシャ語:ビブリア)のページをめくってみる。分厚いその「本」は、深い海のようだ。深海を探検するように小声で読めば、人生の闇を照らしてくれる金言が無数に見つかる。 

「生きているなら希望が持てる。生きている犬は死んだライオンよりはましだからだ。」

                   ー(聖書/伝道の書 9章4節)

シンプルな言い回しが、ボクの心にストンと落ちた。

ボクらが生きてる今の世界。その「空気」に、ある種の匂いを感じるのはボクだけだろうか。自己中心的な物差しで人をランク付けしたり、それで人間の価値が決められてしまったり、そんな競争社会のいびつなルールはどこかマリワナの匂いのようにも感じてしまう・・・。

大切なのは、そういうコトではないはずだ。

では、なんだろう・・・、人間として大切なコトってなんだろう?

それは・・・命というコト・・ 生きているなら希望が持てる という、きらめく事実だ。バイブルのこの節は、そう明言することでボクの心の中に確かな拠り所を与えてくれた。人へのいたわりと肯定。それがあれば前向きになれる。だって、命は光だから、だれでも磨けば光るというわけだ。

ボクは、暗い夜空に北極星を見つけたような安心感と、新鮮な空気を吸い込んだ時のようなすがすがしさをもらって、ホッとする。

さあ、そろそろ地下鉄を降りて、外に出て歩いてみようか。こんな時はグリニッジ・ビレッジの小道をのんびり。

すると・・・路上駐車の車の窓にキミがいて、目が合う。

「どうだい 兄貴 乗せてあげよか・・・?」

「・・・」

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