見出し画像

市民開発者主導の自動化プロジェクト成功のための3つの秘訣

こんにちは、koko です。
RPA を含むビジネスオートメーションプラットフォーム (ビジネス自動化プラットフォーム)を提供している UiPath という外資系ITソフトウェアベンダーに勤務しています。(入社6年目)

UiPath について、もっと知りたい方は下記の記事をご覧ください:

ここでは、PwC ProEdge チームが2023年1月4日に公開した英語記事 『Three ways to boost the success of your citizen-led automation program』(市民開発者リードの自動化プログラムの成功するための3つの方法)を日本語でメモします。

注意:翻訳は独自で行ったため、UiPath 公式の日本語訳ではないことご了承ください。

テクノロジーを使いこなせることの強み

ここ2年間で、RPA を中心とした業務自動化にあたり開発者不足であったり、または業務自動化の必要性に駆られたりと、市民開発者や業務ユーザーがリードする自動化プログラムの数は47%も増加しています。
業務自動化推進において、社員を巻き込み、市民開発をする社員のスキル向上支援をおこなったり、市民開発をする社員向けの報酬制度がある企業では、結果的に収益がアップし、一方の経費は削減され、業務の質が改善されたというポジティブな結果になっています。

PwC と UiPath は調査機関 IDC の『Accelerating the Impact of Robotic Process Automation』(RPAによる効果の促進)研究に協賛しました。
この研究では、CoEの機能がある組織にフォーカスし、その組織に、市民開発者がリードする自動化プログラムがあるかどうか、また、業務自動化がもたらす利益を増やすにあたり、社員教育や社員のスキル向上はどれだけ意味があるのかを調査しました。
調査対象のうち、75%の組織が既に市民開発者による自動化プログラムを提供しており、残りの11%が1年以内に市民開発者による自動化プログラムの導入を検討しているということです。

では、社内の自動化推進において、どのような組織が一番うまくいっているのでしょうか?
やはり、市民開発者による自動化プログラムとCoE リードの自動化の両方を組み合わせている組織の方が、トップダウンで行う自動化のみを行っている企業よりも、圧倒的に利益を出しているということでした。
CoE リードの自動化プログラムと市民開発者リードの自動化プログラムを組み合わせたアプローチは、CoE リードのみのいわゆるトップダウンのプログラムを展開するよりも 39% も高い効果を出しています。

このような統計をみると、なぜ市民開発者リードによる自動化があまり受け入れられていないのだろうと疑問を持つ方もいるでしょう。
企業が「自動化」というキーワードを使いだし、またロボットというワードが定着してくると、社員たちは、自分の仕事がロボットに奪われてなくなると不安になり、このようなテクノロジーに反発することがあります。
しかし、実際は、このような自動化ツールを活用することで、今の業務を行いつつも、業務のうち、反復作業が多い作業や複製しやすい作業の自動化で時間を作り出し、その空いた時間は、より複雑で付加価値のある業務に充てることができるようになります。
同様に、市民開発ができる社員が増えれば、IT部門の作業も減ります。社内でデジタルが得意な業務ユーザーたちがローコードやノーコードで自動化できるようにトレーニングすることで、社内のIT部門はよりビジネスクリティカルな分野に注力できます。

社内で新たに開発者となった社員は、生産性、やる気、仕事に対する満足度が高くなり、より積極的に業務を行うようになります。さらに、組織内で経営層と一般社員のコラボレーションがあると、企業の成長を促進するスケール可能なソリューションを生み出しつつも創意工夫して問題解決できるスキルを持つ市民開発者同士のコミュニティやつながりを生み出すこともできます。

たくさんのポジティブな側面はあるものの、市民開発の是非については、しばし議論となることがあります。どうすれば、市民開発に対する否定的な印象や先入観を払拭し、効果的な市民開発者リードの自動化がもたらす利益を得ることができるでしょうか?
それには、次の3つがキーとなります:

  1. 市民開発者向けプログラムの再構築でキーとなる強みを理解する

  2. 市民開発者に学んだことを活かす時間と自動化するための時間を与える

  3. 組織内の自動化チャンピオンとなる市民開発者を見つける

1. 市民開発者向けプログラムの再構築でキーとなる強みを理解する

市民開発者や業務ユーザーがリードする自動化プログラムは、近代企業において、過去20~30年間で生まれたテクノロジーにより築かれてきたIT部門と社内の業務ユーザーの関係性の核心をついています。次の3点を理解することで、市民開発者や業務ユーザーがリードする自動化プログラムに関する認識をアップデートしたり、誤解を払拭することにつながります。

今日の職場はテクノロジーに関するリテラシーが向上している

昨今のビジネスパーソン(業務ユーザー)は、テクノロジー怖気づいてしまうことはありません。新しいテクノロジーに気後れすることもありませんし、昔に比べ、新しいテクノロジー触れることには慣れており、新しいテクノロジーのトレーニングを受ける意欲が高いです。77%が新しい技術を習得したり、完全に再学習をする心構えができている、つまりどんどんリスキリングしたいのです*。
*出典:https://www.pwc.com/hopes-fears

今日の市民開発者はプログラミングの経験値が高い

市民開発が始まった当初、多くのチャレンジがありました。たくさんの中途半端なコードや精査されていない Excel のマクロが横行していました。
監査の証跡やソースコードがなく、IT部門はどこからそのコードが来たのか、だれが作ったのかを把握できず、それらを整理したり、修正する時間や方法がありませんでした。
現在の市民開発者は、プログラミング知識もあり、市民開発に対するアプローチも統制が取れています。

使いやすいプラットフォームの登場で従前のプログラムのパッチワーク的な方法が色あせてきた

PwC や UiPath のような企業は、各々の自動化プロジェクトにおいて、ユーザーが上達しやすい、合理的でユーザーフレンドリーのプラットフォームを用意しています。プロセスをスケールする部分がより簡素化することで、社員が開発した自動化アセットの共有が楽になり、迅速な共有が可能になりました。

2. 市民開発者が学んだことを活かす時間を提供する

組織内において、IT専門の社員は、技術開発を本業としています。同様に、他の社員もそれぞれの分野における専門家として、それぞれの役割を担っています。IT以外を専門とする社員に自動化の開発や自動化ロボット作成方法を教えるのであれば、教わる側の社員が本業での責務とのバランスがとれるように実際に開発する時間も与える必要があります。

市民開発の黎明期は、数多くのプログラムが失敗に終わりました。ほとんどの場合、上司(マネージャー)が、ただ単に市民開発者に開発やトレーニングで一度習得したスキルを活かすために十分な時間を与えていなかったのです。意欲的な市民開発者は、1つか2つのプロジェクトを遂行する機会はあったものの、市民開発プログラムを指導するのに必要なサポートを得られていなかったのです。そして、また普段の業務に戻らざるを得ず、結局学んだことも、新に習得したスキルも忘れてしまうのです。

市民開発者がリードする自動化を取り入れている組織においては、実際に市民開発者が新しいスキルを通常の業務の一部として取り入れる時間を与えることが組織における成功において不可欠になってきています。

市民開発者が新しいスキルを磨き上げることで、ビジネスユニット内でコーチングやメンターリングなどを含む新しいロールを設置することができます。実際のところ、調査対象の組織のうち、36%が新たにフルタイムの市民開発者のポジションを設置したということです。スキルアップした従業員は、新しいロールにチャレンジしたり、ビジネスユニット内の開発者としてより大きなチームをサポートしたりと、従来からの専門知識と新に習得した技術的なスキルを最大限に活用することができます。

調査対象のうち52%のスキルアップした市民開発者は、各々のビジネスユニットにおいて、フルタイムの市民開発者になっているとのことです。
そのほか54% の方々は、IT組織内のギャップを埋めれるようなIT部門に異動しているとのことです。
このような市民開発者がリードする自動化プロジェクトを優秀な採用ツールとみなし始めている組織において、これは一般的な流れになりつつあります。社員がこのような新しいロールにステップアップしていくのを見守り、他の社員が新しいスキルを習得し、成長していくことを後押しできます。人事にとっても、これはいいニュースで、人材不足だったIT部門の採用でなく、ほかの重要なチームの採用へ注力することができるからです。

3. 自動化の第一人者を発掘し、イノベーション文化を作り上げる

組織において、もっとも優れた自動化アイディアの数々は、ボトムアップで生み出されるでしょう。現場の問題に最も近く、問題に対するソリューションを見つけるのにふさわしい業務ユーザからです。ここで自動化の第一人者の出番となります。自動化の第一人者は、これらのアイデアをクラウドソーシングし、優先度をつけ、CoEに対し、大規模な自動化を実装することを推進できます。

自動化の第一人者は、所属しているビジネスユニットまたは業務領域で、他の同僚をサポートしたり、開発関連のアクティビティやコーディング、ほか、市民開発をサポートするのに必要な様々な業務を行うの3割程度の時間を使います。

市民開発者として、自動化の第一人者たちは、自動化プロジェクト、プロジェクトの CoE チームとのコラボレーション、自動化教育関連のコーチングやサポートに一部の業務時間を割り当てているのです。これらの自動化第一人者たちは、組織の自動化の取り組みをサポートしており、平均して、31%程度の時間を次のような多岐にわたる自動化関連プロジェクトに使っています:

  • 29% : 自動化ロボット開発や自動化

  • 34% :ハッカソンの運用やRPA推進のための教育活動

  • 44% :ほかの市民開発者の自動化支援のメンターまたはコーチ活動

  • 48% :タスクマイニングの利用

  • 52% :プロジェクトメンバーとして、CoE とともにプロジェクト活動

  • 61% :特定のタスクやプロセスを自動化できるかどうかのフィードバック提供

CoE の拡張として、組織での市民開発者リードのプログラムをサポートする追加のサービスを提供する組織においては、うち27%がメンターやサポートチームへのアクセスできるようにしていると報告されています。この調査よりIDCは、メンターは、そのビジネスユニットにおける自動化第一人者であることもあれば、特定のロールの人であることもあると発見しました。

パンデミック中において、メンターやハンズオンなどへのアクセスを提供することは、課題となっていました。 IDC の調査結果よると、調査対象のうち、たった9% がハッカソンを運営していたととのことです。バーチャルオフィスアワーは、CoEにより、市民開発者のエコシステムをより活性化、教育し、実現するためのクリエイティブな方法の一つです。しかし、ビジネスが対面式に戻るにつれ、学びの推進に人気なハッカソンが復活してくるでしょう。

市民開発者発のイノベーションー社員のリスキリングやスキルアップに投資する

日々の業務改善にカスタムの技術的なツールを使う人たちがそのツールの設計者である場合、そのメリットはとても大きいです。市民開発者がリードする開発は、もしかしたら、ビジネスにおける人員不足への対処やデジタルトランスフォーメーション対応に対するソリューションになりうるかもしれあせん。このようなソリューションを検討したことのない組織は、従業員のロールをただの従事者ではなく、既存の RPA プログラムに幅や深み、自動化推進速度を上げるため、市民開発者がリードする自動化プロジェクトに活用することを考慮したらいかがでしょうか。 

自動化を導入している企業のうち、72% は、市民開発者の参画によって、大きな利益を得ており、市民開発がない企業や強力な自動化プログラムがない企業は、競争上、不利な状況となっています。今、我々は、業務ユーザーは自動化開発を学ぶことができるだけでなく、既に開発しており、価値創出を行っているという現実にどう向き合うか学ぶべきです。 そして、組織は、このようなプログラムを正確にそして効率的に立ち上げていく方法を学ぶべきです。

市民開発者プログラムの立ち上げや改善には、綿密な計画が必要です。立派な市民開発者になるには、従業員向けの充実したアップスキリングと支援プログラムが必要です。 アップスキリングや役割、報酬について把握してください。社内での表彰制度や報酬制度など適切な配慮がない場合、プログラム自体が市民開発者の離職などのリスクに見舞われます。

有意義なパイロットから立ち上げ

パイロットすることで、文化上の問題が明らかになったり、市民開発者の技術習得や CoE の適性を習得するのに役立つ方法がわかったり、ビジネスリーダーや管理職層からの支持度合を判断することができます。

新設したロールの管轄を決める

メンター、コーチング、タスクマイニング、テスト自動化の4つの領域において、計画策定時または実務の進化により、そのような機能性がビジネス側管轄となるか CoE 側管轄かを決めます。

自動化のライフサイクルにおける後任者計画を立てる

市民開発者が別の新しいビジネス上の役割を担うようになると、本番環境における自動化の責任は、ビジネス側での後任者へ引き継がれるか、 CoE管理に戻す必要があります。

最後に

自動化は、人にとって代わるものではありません。オートメーションとは、技術を屈指し、面倒な手作業を合理化したり、自動化したりすることです。それにより、人間は、各々の専門分野において、ビジネス上の課題を対処するためにより多くの時間を確保することができます。つまり、技術力のある従業員がデータを取り扱う業務を自ら自動化することを可能にし、より創造的で価値のある仕事に集中できるような時間を創出することができます。 従業員のエンゲージメント、生産性、想像力が一気に高まり、お互いにとって有益になります。事実、多くのリーダーは、今、自動化を成長への道であるとみなしています。

デジタルのアップスキリングや新しい技術の習得により、従業員の役割が高められ、そして、従業員にとっては、好んでやっていない業務の一部を自動化できるようになり、総じて業務そのものがよりやりがいのあるものになります。そして、従業員は、より創造的に働けると感じたり、具体的な形で組織に意味のある貢献できると感じることで、従業員の定着が進むでしょう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?