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日本の宗教の歴史をざっくり振り返る その3

前回は、奈良時代(奈良仏教)と平安時代(平安二宗)についての流れを見てきました。

今日は、鎌倉時代です。

(鎌倉時代)ある教えに特化し、庶民へと広がりをみせた鎌倉仏教

伝統的な奈良仏教に反発して、平安二宗を比叡山で立ち上げた最澄と空海。
その後、比叡山は仏教の聖地となり、多くの僧侶が仏門を叩きました。

奈良仏教では、国の学問機関から認可を受けた僧侶しか悟れない。
平安仏教では、仏道を目指すものなら誰でも悟れる。
…でしたが、まだ仏教は政治に近い存在でした。
(政変や飢饉などを鎮める怨霊対策として、天皇が求めていた)

それが鎌倉仏教では、庶民へと広がります。そして、室町時代に様々な文化として花開き、武士の精神性とも繋がってくるのです。

庶民への広がり以外に、鎌倉仏教の特徴がもう1つあります。
それは、仏教の経典の中でも、ある教えに特化した仏教ばかりということです。(禅とか念仏とかお題目とか)

鎌倉仏教の始まり ~法然のあゆみ~

最初に、比叡山を降りて庶民に広めたのは、浄土宗の法然です。

9歳の頃、父を亡くし、母方の叔父のお寺に預けられます。そこで勉学の才を発揮した法然は、仏教の最高学府だった比叡山に12歳で登ります。様々な師匠の元で学ぶのですが、みな絶賛したり、これ以上教えることはないと言いますが、法然は満足しません。愚者の私でも悟れる方法はないかと、23歳のときに、比叡山を下りて、奈良を遊学したりします。

仏教の経典すべてを5回は読んだという法然に、43歳のとき転機が訪れます。ある書を読んでいて「阿弥陀仏を称えれば誰もが必ず救われる」という教えを目にします。「これだー!!」と思い、山を下りた法然は、南無阿弥陀仏と一心に念仏する「専修念仏」の教えを、人々に広めていきます。

この教えは万人の救いとして瞬く間に民衆に受け入れられていきました。やがて貴族や武士にも広まり、上皇、天皇までもが法然から授戒を受けます。

あまりの広がりに、既存の仏教勢力から目をつけられ、専修念仏の停止を訴えられたりもしました。法然としては、既存仏教にケチをつける気は全くなかったのですが、最終的に、75歳で土佐へ流刑になり、79歳で京に戻りますが、その翌年生涯を終えます。

法然の壮絶な人生、すごくないですか?

主な鎌倉仏教のラインナップ

さて、そうして庶民に広がりを見せた仏教ですが、その後、様々な宗派が登場していきます。主なラインナップ6つを見ていきましょう。

①浄土宗(法然)…「阿弥陀さま、助けて!」(南無阿弥陀仏)と何度も唱えるだけで、誰でも極楽に行ける。と説いた。

②浄土真宗(親鸞)…法然の弟子。念仏を唱えなくても信仰さえあればいいよ。悪人(欲・煩悩にまみれた愚者であると自覚している人)こそ救われる。と説いた。

③時宗(一編)…法然のひ孫弟子。信心の有無や善人悪人に関係なく念仏を唱えれば、全ての人が救われる。と説いた。「踊念仏」が、字が読めない人々にも信仰を広げた。

④日蓮宗(日蓮)…法華経(経典の1つ)の教えがすべて。と説いた。「法華経、助けて!」(南無妙法蓮華経)というお題目を唱える。日蓮自身は、元寇を予言したり、他宗を批判しつつ、「あの世の救いではなく、この世を浄土に変えていこう。」と主張した。

⑤臨済宗(栄西)…坐禅を組む事で悟りが開けると説く。禅宗(5,6世紀にインドから中国に禅を伝えた達磨大師が初祖)の1つで、禅問答などの修行に重きが置かれる。

⑥曹洞宗(道元)…禅宗の1つ。坐禅のときは、雑念をいっさい捨て去って、ただひたすら1つのことに集中する。日常生活すべてが座禅と同じ価値を持つ。「雲水」という良き師を求めて、日本全国の全修行を行い、複数の師を持つことができる制度がある。

昔は、歴史の教科書で、文字の羅列を暗記していましたが、こう見てみると、結構どの宗派も違ってて、考え方が特徴的ですよね。

(余談1)宗派・系統別の信者数

あと、文化庁が毎年作成している宗教年鑑(令和4年度版)によると、仏教の宗派別の信者数は、こんな感じらしいです。

文化庁 宗教年鑑(令和4年度版)
※数字は令和3年12月31日現在

浄土系の中でも、浄土真宗が一番多いみたい。
浄土真宗は、戦国時代には戦国大名最大の勢力を誇ってた時期もあるしね。(その後、信長に比叡山焼き討ちされるも徹底抗戦→和平→西本願寺派と東本願寺派に分裂)

(余談2)浄土真宗で有名な本「歎異抄」

浄土真宗といえば、最近「歎異抄(たんにしょう)」の広告を、新聞や書店でやたら目にします。

「歎異抄」は、親鸞の語録をもとにしつつ、親鸞の死後に現れた様々な異説を歎き、親鸞の真意を伝えることを目的として作られました。著者は、親鸞の弟子の唯円(ゆいえん)であるという説が有力です。

作家・司馬遼太郎が「無人島に一冊の本を持っていくとしたら『歎異抄』だ」と言ったり、有名な哲学者や齋藤孝さん、武田鉄矢さんも絶賛されているそう。

2019年には「歎異抄をひらく」が映画化もされたそうですよ。

(余談3)日本の寺院数はコンビニより多い

日本の寺院数(神社は除く)って、コンビニ大手3社を合計した店舗数(6万弱)より多いんだって。ちなみに、寺院と神社の数は、だいたい同じくらい。どちらも8万前後。

そして室町時代へ

奈良仏教、平安仏教、鎌倉仏教と見てきました。
これで現在の日本の仏教の9割くらいは網羅したことになります。

そして、室町時代に仏教文化の栄華を極めることになります。
その話は、また今度。

ではまた!

しゅんたろう



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