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障害児育児の才能とは

最近はもう言われなくなりましたが。

私の苦手な言葉に、
「障害児を育てていてすごいよね」
「障害児を育てられる人だと、子供から選ばれたんだよ」
という言葉があります。

この言葉をかけてくださった方は、たぶん、私をあげますために言ってくれたと思うんですけど。その気持ちはとってもありがたいんですけど。

私としては、「障害児を育ててすごいね」とか、「選ばれたんだね」とか言われても実はあんまり嬉しくなくって。

言われると、逆に、子供みたいに拗ねてしまってですね。

障害児育児なんて最初から出来たわけじゃないのに、なぜ分からないの!!
と、言い返したくなるんですよね。

例えばピアノがめちゃくちゃ上手な人。その人だって、初日から上手に引けたわけじゃないっていうことは誰だって分かりますよね。(初日からプロ並みに弾ける天才がいるとは思いますが、そんな天才はちょっと置いときます)

サッカーとか、野球とか、テニスとか。
スポーツじゃなくても、自転車とか、お料理とか、掃除とか。
仕事とか、電話応対とか、名刺交換とか。
今ならプロみたいに上手にできる人だって、やり始めた初日から上手にできた人って多分いないと思うんですよね。
(初日からプロ以上の腕前だった人もいるとは思うのですが、そんな天才はちょっと置いときます)

だから、障害児育児だって、初日からできたわけじゃないんですよね。

そもそも私は、障害児の育児どころか。
一般的に育てやすいと言われてるような、よく寝て、よく飲んで、必要以上に泣かない赤ちゃんだって、ろくに育てることができなかったんですよね。

そんな育児に関してはレベル0の私だったんですけれども、コツコツコツコツ、コツコツコツコツ。
時間と、体力と、時にはお金を費やして、やっと人から見て、障害児の育児をやってる人だなっていうレベルまでやってこれたんですよね。

しかも、障害児育児っていうのは、課金したらすごい武器がもらえるとか、病院が治るとかはなくてですね。

マンツーマンのプライベートレッスンをしてくれる教室もなくて。

さらに言えば、裏道もなくて、近道もなくて。

それどころか、人間がほんんど通らない、うっすら獣道が残っている、これ道なの?みたいな道を進むしかなくって。
しかもある日突然、LEDライトをポンと1個渡されて、「なんとか頑張れ」って言われて放り出されて。
とりあえず転けないように、足元だけはライトで照らしながら一歩一歩、育児を続けてきたんですよね。

そもそも私だって、障害児を生む予定なんかなかったんです。

障害児の子育てをする予定はなくて、もともとは、障害児との接点のない世界で生きてきた人なんです。

それが何かの運命で、私のところに生まれてきた赤ちゃんは生まれつき足が動かないし。
生まれて当日に「手術しましょう」って言われてしまうし。

手術したら、子供の病気は完治するのかなと思ったら、手術っていうのはただ死なないための応急処置でして。

医師からは、「残念ですが、お子さんは入退院を繰り返すような子供時代を過ごしますよ」って言われてしまうし。
実際にその通りになるし。

市役所の制度は分かりにくいし。

保育園入れないし。

小学校とか中学校、高校、大学とか将来のことを考えると、不安すぎてバグってしまうし。

もうなんか無理ですごめんなさい、私なんかが子供を産んでしまってごめんなさい。

と思った日も一度じゃなくって、100や200でも足りないくらいなんですけど。

それでも、最後の、最後の、最後は逃げずに、障害児育児を続けてきたんですよね。

なのであなたの目の前に私の子供が生きて存在しているっていうことは、涙ながらになりながら、障害児育児レベル0からレベル99までやっとやっとたどり着けた証拠なんですよね。

それを、「障害児育児ができるから、子供から選ばれたんですね」なんて一言で片付けられてしまうと、こうやって言い返してしまいたくなる。

私がすごいわけじゃなくって、努力なんです。
選ばれたわけでもなくって、毎日1歩ずつの努力なんです。

障害児育児の相談をしても誰も経験してないから共感もされなくって、そんな孤独な日を過ごしながら、それでも進んできてやっと得られた結果なんです。

万里の道を一歩から歩いただけなんです。

それを、すごいとか、選ばれた、というたった一言で片付けられてしまうと。

まるで、私に生まれつき障害児育児の才能があって、それを発揮しただけっていう簡単なものとして片付けられてしまうんですよね。

そうではないのです。努力したんです。


というわけで、私の苦手な言葉と、その理由でした。

でも最近はまったく言われなくなったのですが。どうしてなのでしょうか。

ではまた。

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