今、再度読む『聖の青春』


まずは映画化される頃に読んだこの本から

村山聖先生の生涯を描いた作品で、松山ケンイチさん主演で映画になっています。

著者の大崎さんと村山先生の師匠森信雄先生が親しい関係にあったことから、ものすごい信頼関係のもとに書かれたものです。
最初に読んだときは、「腎臓にお酒もよくないし、塩気のある食事もいけないよと村山先生は、自分で人生縮めてるなあ」思ったのでした。(持病持ちの父と生活した経験からです。)

この本は、文章から「におい」がします。
森先生の一人暮らしのアパートに中学生の村山くんが下宿したところからずっと。
タバコのにおい、お風呂に入らなくて寝ているにおい、定食屋さんの焼き魚のにおい。一人で布団にくるまって病気と闘う村山先生の脂汗のにおい。
それは不快ではなく、生きた証なのです。
一日を一局を魂の限り、命の限りを尽くして生きた村山聖先生の心は、今も一緒に戦った棋士の心に宿っています。

最初に読んだときは、将棋の世界のことを谷川先生と羽生先生くらいしか知りませんでした。しかし、一年くらい前に読み返してびっくりしました。あの、藤井聡太先生の師匠杉本先生も何度か登場しています。村山聖先生とは奨励会時代が重なっていたのですね。村山先生が杉本先生を苦手にしていたという記載もどこかで見ました。杉本先生の著書にも村山先生に厳しいこと言われて刺激を受けたという話が書かれています。歯に衣着せぬ物言いと、純粋な人柄で皆に愛されていたのが村山先生なのでした。

この春から夏、この本を皮切りに、どんどんと将棋の世界を描いた本を読むようになりました。この時期のことを描かれた本には必ず村山先生が亡くなられた時のことが出てきます。
『純粋なるもの』島朗著
『編集者T君の謎』大崎善生著
その他、先崎学先生のエッセイなど、いろいろなところに顔を出す村山先生のエピソードが本当にたくさんあります。
そうやって、いろいろ読んでいくうちにどんどん本が進んでしまうのでした。
羽生世代のみなさまや、その少し下で村山先生と一緒に時間を過ごした先生方が今も頑張っておられるのは、みなさんの心の中に村山先生が住んでおられて一緒に戦っておられるのではないかと思うのでした。







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