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人生で初めてもらったバイトの給料で『Oh! My! Goodness!』を買った。 〜あの時のある男子中学生がV6にハマり,高校生は青春と共に...〜

#勤続25年の男たち というハッシュタグがVクラ界隈のTwitterを埋め尽くした今日,新曲『It's my life/PINEAPPLE』を9月の下旬に発売するV6という,現役活動中のジャニーズアイドルたちのなかで長男的グループはボクにとって特別な存在だ。気づけば,今年の外出自粛期間のときに近所をちょっとだけ散歩するときに聴いていた曲のほとんどはV6であった。ここ半年くらいはもしかすると,V6の曲を一番聴いていたかもしれない。V6を聴かない日なんてないというくらいにボクは彼らの曲を聴いていた。

 ボクは一応「事務所担」と自称しているのだが「V6が一番好きなの?」と聴かれるとちょっとなんか違う。ボクにとってV6というグループは,どのグループよりも見てて一番テンションが上がるというよりかは,見てて一番心が落ち着くといった感じ。もちろんテンションを上げるために『ROCK YOUR SOUL』を聴いたり『Swing!』を聴いたりすることもあるけど,基本的には心に平穏を取り戻したりそれをキープさせたいときに聴いている。究極的にいうと,いわば何でも話せる古い時代の友人みたいなものだ。

 V6に本格的にハマったのは,今でも忘れられない中2(2010-2011年)の頃。2010年に開催されたコンサートツアー『READY?』のDVDが発売された直後くらいにスポットCMを観て,知ってはいたれどちゃんとは観たことのない彼らが気になって,レンタルでDVDを借りた。ハマるつもりはそのときにはなかったので,適当に『Air』を選んで再生していのっちとリーダーの歌い出しから始まり「おしゃれな曲だな〜」とぼーっと適当に観ていた矢先に,剛の見た目と反した甘い声ではじまるAメロを聴いて一瞬で沼に落ちたのだ。これがいわゆるギャップ萌えというやつだ。剛の存在はもちろんそれまでにも知っていたけれど,歌声にまで注目したことはなかった。『READY?』のときの金髪×ツーブロックはあまりにもチャラくて,なんだかEXILEにいそうな漢字の「男!」という感じなのに,声はあまりにも甘くて優しいというこの差に惹かれたのである。

ボクのV6の楽しみ方

 V6を含め,ボクのジャニーズの楽しみ方はもしかすると人とは違うかもしれない。基本的にボクは全グループのシングル曲と可能な限りのカップリング曲やアルバム曲の全てに耳を通す。デビューして一番若いグループから,滅多にリリースをしないマッチもボクのなかでは対象内だ。これはただ単に,どっぷりハマるともう抜け出せなくなってしまうボクの体質によるものなのだが,たくさんの曲を聴いていくなかでボクにとってのお気に入りの曲が選抜され,何気ないときにそれらを鬼のようにリピートする。

 ボクはそのときの気分や感情によって誰のどの曲を聴くかを決めるのだが,例えば今はまだ20ちょいの若者だからきゃぴきゃぴしていきたい!と思えばキンプリやセクゾの曲を聴くし,ちょっと大人にならないとダメだなと思うときにはSMAPやTOKIOを聴くし,しっとりと曲を聴いて落ち着きたいみたいなときにはKinKiを聴いたりする。大人になりたいという点に関しては,その度合いに応じてJフレあたりを聴くことがあればそこまで程度が少ないときにはA.B.C-Zあたりを聴いたりすることもある。とはいえ,どのグループもボクにとっては同じくらい大切なグループだ。ここに優劣なんてものはない。

 けれど,よく考えてみるとボクはどんな気分においてでもV6の曲は聴いていた気がするのである。キャピっとしたいときは『スピリット』('09)を聴いたり『COSMIC RESCUE』を聴いたり,大人になりたいときはそれこそ『Air』であったりだとか,『親愛なる君へ』とかを聴くし,しんみりしたいときは『ありがとうのうた』とか『ボクラノオト』や『羽根』を聴いたりしていた。もちろん他のグループたちにも振り幅やバリエーションは存在しているが,V6のようなトニセンとカミセンにきっぱりと2グループに分けられて,且つそのどちらのグループの性格や特徴は全く異なる異種混合な1グループは彼らだけだ。トニセンは余裕のある大人という感じだし,カミセンはきゃっきゃとしたアイドル感がある感じ。

 そんな2つのグループが1つになってV6は出来上がっているために,気づけばどんな気分や感情のときにもV6を常に求める自分がいる。ちょっと背伸びして大人になりたいときもV6,まだまだ若いこの年齢にあやかってきゃぴきゃぴしていたいと思うときもV6。2017年のコンサート『The Ones』においては,大人な『Can't Get Enough』やカミセンの『Get Naked』が披露される一方で『太陽と月の子どもたち』や『レッツゴー6匹』のような子どもにもハマりそうな曲も披露されていたので,彼らの持つ振り幅に改めてまた驚かされたものだ。

 思い返せば,このような楽しみ方をボクはV6に傾倒した中2くらいの頃からしている気がする。正直,中高生くらいの時期に最もハマったのは例えばSMAPや関ジャニ∞,赤西仁あたりでV6もそれなりに聴いてはいたけれど,その当時は見たり聴くだけでテンションが上がるのはSMAPとかであった。しかしながら,もはや見るだけでテンションが上がるというこの熱狂度は有限なもので,例えばエイトの場合は,彼らが10周年を迎えてアニバーサリーライブを感動しながら見届けた直後に「ありがとう,エイト」と言わんばかりになぜかここで気持ちがスパンと切れてしまった。それから数年,彼らの出るバラエティ番組はなんとなく観るけれど,新曲を追いかけるみたいなことは数年一切しなくなってしまった。

 そんな中で,V6はボクにとって精神安定剤というか,最後の最後に帰ってくる場所みたいな感じで,彼らに対してスパンと切ったことは一度もない。彼らを見ていると,テンションが上がるというよりかは,落ち着くとか安心するとか,そういった感じ。

人生で初めてもらったバイトの給料で『Oh! My! Goodness!』を買った。

 ジャニーズの各グループにボクが今までに生きていた時代の青春が詰まっているけれど,ボクが高校生のとき(2012-2015)のV6はとりわけ特別な存在として,心のなかにある思い出にたしかに存在している。まず,記事タイトルにもありこの節の小見出しタイトルにもなっている「人生で初めてもらったバイトの給料で『Oh! My! Goodness!』を買った。」というのは文字通りの事実であり,過去に発売されたV6のアルバムのなかで一番聴き込んだのが『Oh! My! Goodness!』である。

 この記事の最初のほうにボクがV6にハマったきっかけとして,『READY?』で披露された『Air』を中2のときに観たからだということを述べたのだが,いかんせんこの頃は中学2年生という学年が終わるか終わらないかの時期で,そろそろ受験を控えた中3になる頃合いの時期であった。ボクはそこまであまりまじめな中学生ではなかったが,「受験」という響きにやられて,この受験学年のときはあまり新しい情報を求めることはせずに過去をちょいちょい振り返りつつまじめにこのときは1年間過ごしていた。

 このときにも『Honey Beat』などを聴いて自分を鼓舞していたりして,全く距離を話したワケではない(現に高校受験へ向かう道中の駅のバスロータリーやバスのなかで死ぬほど『Honey Beat』を聴いていた)。しかしながら,今までは当たり前のように追い求めていたものやことと長期間距離を話すことによる反動はでかい。受験が終わった瞬間にV6をはじめ,一気にのめり込んだ。ちなみに,受験が終わって最初にお母さんに買ってもらったのが赤西仁の『JAPONICANA』であった(V6ちゃうんかい)。

 無事に高校受験を終え,行きたい高校へ受かり,入学してそれなりに友達を作れたボクは毎日ウハウハな気持ちで学校へ通っていた。当時流行っていたmixiで「ジャニーズ好きです!」みたいなことを書いていたら一部の野郎どもに「男でジャニーズ好きとかホモじゃん笑」といわれ,陰湿な嫌がらせを受けることもあったけれど,自分の近くにいる友人は全くそんなことをしない(少なからず,表面上は特に何もしてこなかった)ということもあって,基本的に常にテンションは高かった。通学するときのバスのなかでは『SMAP AID』を聴いて,降りて学校へ向かう道中ではV6の『READY?』を聴いて,特に春の頃は博の『桜色桜風』をリピートしまくっていた。

 幸せにこの1年を過ごして,そろそろ高1が終わる頃にV6は3年ぶりのアルバムとなる『Oh! My! Goodness!』をリリースすることになる。このときには高校生活にももう慣れたため,アルバイトをすることを考えていたのだが,アルバムのリリースを知った瞬間に「買う!絶対買う!」と思い立ち,近所の焼肉屋さんに電話して面接を取り付け,キッチンで働くことになった。

 面接に受かり,人生で初めてのアルバイト初日を迎えた。業務内容としては焼肉屋さんのキッチンと聴いて思い浮かべるその内容の通り,皿に肉を並べたりキムチとかナムルとか小料理的なものを作ったり,ビビンバを炒めたり,皿洗ったりといった内容なのだが,キッチンで一緒になった先輩がとにかく怖すぎる。手始めにビビンバの作り方を一通り教えてもらって,「じゃあ自分で作ってみて」と急に1人で作らされ,自分のメモと記憶を頼りに作りはじめるのだが,ちょっと手順を間違えたりすると大声での怒号が飛ぶ。これだけでもかなり怖かったのに,極め付けは,テキトーな洗い物であったり,状態の悪いキムチを客に提供したりするというこのズサンさ。最終的にこの店はボクがバイトを辞めた後に食中毒を出して営業停止になるのだが,焼肉屋さんが大好きなだけあって,このショックは計り知れなかった。

 バイト初日は失意のなかで終わった。歩きで20分くらいの近場だったので,行きも帰りも歩きで行ったのだが,今でも明確に残っている帰り道のボクはカミセンの『ファイト』をiPodから流していた。その当時,この曲のことがめっちゃ好きかといわれるとそこまで特別聴き込んだワケではないけれど,あの時は何ら選曲に迷うことなくこの曲を再生したのだ。別にそんな大したことでショックを受けたワケではないけれど,この曲の最初,健の歌う「理不尽だらけの世の中で 理想と現実の狭間で 押し潰されそうになる僕 ただ負けたくないと今呟く」という歌い出しで歩きながらボロボロ涙を流した。

   結果,このアルバイトはもう何回か出勤したのだが,1ヶ月以内ですぐ辞めた。過去の自分を庇うつもりではないけれど「この店は色々やばい」と思い立ち,シフト表提出日のときに「今日でやめます」と書き残し,出勤しなくなった。「給料ちゃんと振り込まれるかな?」と心配になったけれど,これはちゃんと振り込まれた。自分なりに耐えて働いた結果,初めて給料としてもらったおよそ6,500円。今考えてみると「それだけ??笑」と思ってしまうけど,ボクはこのお金で迷わず『Oh! My! Goodness!』を買った。歳をとってしまったせいなのかアルバム1枚1枚の重みなのか,今やどのグループのアルバムの収録曲もカラオケで全部歌えるかといわれるとあまり自信がないけれど,このアルバムに関しては全部歌える。『BING♂』『Maybe』『D.I.S』『エキゾチック・トリップ』も…全部歌えるくらいに聴き込んだ。

 このようなドラマがあって『Oh! My! Goodness!』はボクにとってかなり思い出深いアルバムなのだ。

23歳,今のボクのV6の楽しみ方

 『Oh! My! Goodness!』よりも前,ボクが高1ほやほやの頃の2012年の8月8日にリリースされた『kEEP oN.』にも実はかなり深い思い出が残っているのだが,これを語り出してしまうとこの記事の文字数が10,000字以上いってしまう気がするので,これはまた後日に🙇‍♂️ 導入だけ言うのであれば,このシングルはカップリングも込みでどれもボク好みの楽曲で,1年以上これを聴きまくった。高2の春に初めて異性の好きな人に告白して,「彼女」とハッキリ言える女性が現れることになるのだが,まだ色々と夢見る青かった高校生の頃のボクはその彼女の前で「愛をこめて」や「一生で最後の恋」(どちらも『kEEP oN.』のカップリング曲)を歌ったりなんかするという,今リアルに話すと顔面蒼白レベルでクサいある種の思い出もある。

 そんなことはどうでもいいけれど,改めて彼らの曲を振り返って聴いてみると,V6は本当に振り幅があるなあと思わせられる。先日の「THE MUSIC DAY(ザ ミュージックデイ) 人はなぜ歌うのか?」でV6は”大人のエロかっこいいSPメドレー”というメドレータイトルのもとで『Supernova』と『Darling』,『PINEAPPLE』を披露し,日本中のファンを興奮させた。この記事の1節目でも触れたように,エロスがある一方で『太陽と月の子どもたち』や『レッツゴー6匹』のような曲たちだってあるし,『ボク・空・キミ』や『COLORS』といった楽曲まで彼らにとっては得意ジャンルだ。それこそ『Oh! My! Goodness!』を聴いていると,コミカル系のジャンルだってモノにできるところを確認することができるだろう。

 彼らにとっての武器となる様々な楽曲があるなかで,ボクは最近彼らだからこそ醸し出せる,哀愁や悲しみのなかで格闘する「自分」を歌う曲を中心に聴いている。例えばさきほどの『ボク・空・キミ』や『COLORS』をはじめ,『涙のアトが消える頃に』やグンネスにも収録されている『親愛なる君へ』や『ボクラノオト』などの2010年代に歌われた曲たちだ。他のグループだとまだまだ容易に聴き逃してしまったり,KinKiだとその時の気分的にちょっと重たい感じがするときに,V6が程よく,ちょうどいい。KinKi Kidsの楽曲の多くはジャニーズ史に名を馳せる名曲の数々はマイナー調かつ深い歌詞が多い故に,腰を据えているときに真剣に聴き込める姿勢のときは彼らの曲を聴きたいところ。それに比べてV6は『TAKE ME HIGHER』や『Darling』など,これまたジャニーズ史に残る楽曲はあるものの,往々にしてファンだけに共有されている以上にボクが挙げたような名曲たちが多い。そんな曲たちを最近特に聴き込んでは味わっているのである。

 それにしてもV6はすごい(今更)。特に,今年買ったトニセンの舞台『カノトイハナサガモノラ』を観ていると,この3人は新しい地図(慎吾・剛・吾郎ちゃん)と比べると年上で,なんなら中居・木村と同じくらいのトリオであるのにもかかわらず,新しい地図の3人よりも超アイドルな感じで歌う(『Traveler』や『カノトイハナサガモノラ』)ときもあれば2TOPよりも大人な感じで歌う(『Glory』や『WISHES ~I'll be there~』)場面もある。

 カミセンはカミセンで,まずここ最近の彼らの見た目のスタイルとして,トニセンの3人よりおでこを見せたいわゆる「男らしさ」を醸すヘアスタイルのことが多く,さきほどにも出た『Get Naked』はあまりにもエロすぎる。彼らもまあまあいいおじさんたちではあるけれど,様々なメイキング映像や『アメージパング!』なんかを観ていると「やっぱ年下組なんだな笑」と思わせられる,昔から変わらぬ関係性を見ることができて,見ててやはり心が休まる。

   次に発売される彼らの新曲『It's my life/PINEAPPLE』はまさに今のボクもそうだし,ファンたちにとって,今だからこそ,そして今の彼らにだからこそ歌って欲しいテイストの曲が少なからずこの表題曲の2つに詰め込まれているようにボクは感じている。これらの曲もきっとこれから聴き継がれていくことだろうし,少なからずボクはこの曲をあと30年は聴くし,これまでの曲と共に忘れないはず。今後の人生に希望を見出せそうで,思い出に必ず残る新曲を楽しみに待っている今日なのである。

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この記事が収録されている「“ジャニ男タ研究者”のジャニーズ史」では東京工業大学大学院で男性ジャニーズファンやジャニーズ,男性について研究している私(小埜)が,男性ジャニーズファンの当事者として今まで1人でジャニーズを楽しみ,何を感じてきたのかについて振り返ってみたり,ただただ思いを綴ったりしています。

 そして,ジャニーズのある人物や楽曲やグループなどについてボクの研究分野(文化人類学/社会学/ジェンダー)などを絡めて,そこそこマジメに考察してみる記事を以下の「AMto. J」にて更新しております。

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