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#102 道つくり

 10月の中旬の日曜日、私は、地域の毎年の行事になっている、道つくりに参加した。私たちの地区の道つくりでは、地域内を通る道や、地域が所有する土地の草刈りなどの清掃作業をする。

 草刈りを中心とした環境美化作業だが、『道つくり』というのは何故かということを古老に聞いた。昔は、台風が通ってあれた、地道の補修作業だった。道つくりの後、私たちの地域では、一斉に稲刈りが始まった。お米を積んだ荷車が、補修された地道を通ったとのことだった。そこで、台風がほぼ終わる10月頃の地域の行事として、道つくり(地道の補修作業・環境美化作業)として古くから続いているとのことだった。

 私たちは、1組10名ほどに分かれ、自分たちの担当するところの作業にとりかかった。舗装された道路と獣害防止柵との間の草を刈った。ところどころの獣害防止柵は、耕作放棄地の側に傾いていた。耕作放棄地では、土手や畔の管理もされず雑草が伸びていた。伸びた蔓が柵に絡まり、頑丈な獣害防止柵を傾けるくらいまで、強く引っ張っていた。

 その後、みんなで一休みした。仕事の話や、年金の話や、地域のお得な情報も話題に上がった。「わたしは、ここに家を立てて30年近くになります。しかし、メンバーはほとんど変わっていませんわ。」と隣の人が言っていた。

 休憩後、地域の空き地の草刈りにとりかかった。すすきが生い茂っている土地だった。すすきの中には、何本ものけもの道があった。すすきが生えていないところはぬかるんでいて、イノシシの沼田場(泥を浴びるところ)になっていた。

 私が子供のころ、山にはマツタケが生え、村は賑やかだった。働くようになっていつの間にか、山の相が変わり、松が枯れた。そのころ、山のふもとに、小さなシカを見た。今は、獣害防止柵をしても、シカやイノシシの被害は増加している。

 ふるさとは、変わった。しかし、私は、生まれすんでいるここから、離れることはない。今でも初夏になると、小川にホタルが飛び交っている。畑での仕事を終えた頃、山に沈もうとしている秋の夕日を、私は、昔から吸い込まれるようにながめている気がする。  @地域 2

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