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#101 無農薬栽培
私の家の田のとなりに、大阪の佐藤さんの家の土地がある。佐藤さんのお父さんが、定年後に家を建てるために買った150坪ぐらいの土地だ。30年ほど前から、毎年5月の連休のころになると、家族みんなで草刈りに来ていた。しかし、秋には土地一面に背の高いすすきが生い茂っていた。
今年、春になったころ、佐藤さんと奥さんが私の家に来た。今年から、農地にして、無農薬の野菜を作りたいとのことだった。
春の彼岸の頃、佐藤さんは、土地全体の草を刈り始めた。最初は2坪ほどの土地の周囲をスコップで掘り起こし、水はけがよくなるようにした。そしてその中にある、草の根を鍬で掘り起こすことから始めた。太い茅の根は、赤土の硬い土地に深く根付いていた。佐藤さんは、その太い根を根気よく掘り起こしていた。毎週大阪から2時間近くかけて畑に通ってきた。
根を掘り起こした土地に、有機肥料を入れて、大豆やトウモロコシを植えていた。刈り取った草は、苗の周りに丁寧に敷き、雑草除去に使っていた。毎回根気よく茅の根を掘り起こしては畑を広げ、そこにオクラやサツマイモなどいろいろな野菜を育て始めた。
私は、佐藤さんに、この辺りは、水不足になやむことや、イノシシやシカの被害もあることも話をした。彼は、雨水を貯めるタンクを設置した。畑の周囲には、獣害用にフェンスを張り巡らせた。
佐藤さんは、ほぼ毎週奥さんと畑に来て、野菜の世話をし、茅の根をとって着実に畑を増やしていった。夏でも、空調服を着て長い間作業をしていた。私が「暑いので、体に無理せんといて。」と言うと、彼は、「私は、この畑がすきです。ずっとここにいたいです。先週、はじめて自分の畑でできた枝豆をおつまみにして、妻と二人でビールを飲みました。おいしかったです。」と笑顔で私に言った。
夏の終わりには、半分以上の土地が畑になっていた。縁あって、頼もしい人が、私が住んでいる近くに来てくれた。 @地域 1
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