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東大ポルノという麻薬

はじめに~東大現役学生との出会いとディスカッション~

刺激的なタイトルですが、背景事情がちゃんとありまして。先日、「深津さんの各種活動で興味を持ったので、何か深津さん独自の目線で登壇してくれないでしょうか?」という東京大学の学生さんからのご依頼があり。

2つの案を提案させていただきましたところ、1つが採用された(っぽい)ので、仮に本番があるとしたら、とりあえずはそちらになるので、表題の件は、今回は、パスし、しばらく寝かせようと思っているテーマだったりします。

それでも、この記事を書いているのは、昨年から、UT-BASEという東京大学の学生が主体となっている団体現役メンバーの方々と勉強会や講義をする機会に恵まれ続けていることに起因します。この学生団体は、僕が現役生だった頃には存在しない団体で。その理念は、素晴らしく

東大を世界一の学び場にする

というもので。学生さんたちと話をしていると、本気で東京大学という場をさらにより良くし、さらに自分たちも東京大学という場をうまく活用して、日本で、世界で、幅広く活躍したい!! という強い意志を感じました。

そんな学生さんたちと、継続的にディスカッションを続けていく上で、今まで、どんなディスカッションをしてきて、どういう活動・目標を見据えているのか、ここで一度まとめておいた方がいいなということでキーボードをカタカタ動かしているところです。

話は、あっちこっちいきますが、最後はちゃんと表題のテーマに戻ってきます。というわけで、はじまりはじまり。

「新東京大学物語」というヴィークル(小説という手段)

そもそも、現役の東大生の皆さまが、僕に興味を持ってくれた理由の1つに、

深津さんが書かれた小説ってどんな内容で、どういう目的をもって書かれたのですか? 

ということがありまして。まずは、その疑問に簡単にお答えします。僕が、文章を書くのが得意で、かつ、意外なことに小説を最初から終わりまで書ききる能力があったというのが前提なのですが(文章力があるかどうかはまた別として)。

その能力を最大限活かして、自分にしか書けない物語、かつ、それによって読者に良い影響を与えられるテーマ。そうすると、まずは、東大を舞台にした小説なんじゃないかなって直感したんです(本当の本当に深堀りすると、物語って自分の中から勝手に湧いて出てくるので。これから記述することは、その直感を後で言語化したものになります)。

分かりやすく、狙ったポジショニングとターゲットを図式化すると次のような感じになります。

令和の三四郎

ターゲットオケージョン

こんな感じに一応は分析はしてみました。ただ、物語を書いている時って実はそんなことは一切考えておらず。僕の場合は、場面と登場人物とをうまく設定してやり、物語が動き出すのを待ちつつ、書きつつという執筆方法で(僕の場合は、プロットをあまり作らないタイプ)。

上の図は、物語を書き終え、しばらく自分の中で推敲を重ね、周囲の人々に読んでもらった感想から、「こういうことなんだろうなあー」と後付けで言語化したものになります。

で、どういう内容なのさ?(ネタバレ含むので飛ばしていただいてもOK)

それで、実際にどういう内容なのか、要点だけでも知りたい方もいると思います。そこで、ネタバレも含みますが、ざーっと。ここは、読み飛ばしてしまった方がいいかもしれない部分ですね。

主人公である上杉は、大学1年生。日本の中では、一番優秀とされ、かつ、良くも悪くも注目される東京大学に入学できたのに、どこか気分が晴れないでいた。周囲の多数派のように、サークルだったり、バイトだったり、起業だったり、夢中になれるものが見つけられないというのもあったが。何よりも、才能に溢れ、自分の道をひた進む同級生たちの眩しさが、彼の立ち位置に影を落としていた。上杉は、自分の気持ちの昇華先をキャンパス内に見つけられず、文字通り燻っていた。火種は見つけられないままに。そんな時、入学前の健康診断で会った、学部違いの桜という同級生と体育の授業で再会し、恋に落ちる。彼女と渋谷でデートすることになり、上杉は自分の気持ちを率直に伝える。その想いは、彼女には、結局は届かなかった。
 その後、上杉は、桜との失恋により、やり場のない葛藤を抱える。そして、その気持ちを昇華させるため、勉強に打ち込むことを決意する。どこまでもストイックに。2年生、3年生のその過程は、何人もの素敵な先輩、教師との出会いへと導き、彼を徐々に成長させていく。同時に、東京大学、さらには日本に存在する、多くの問題点(教育システム、受動的な進路選択)にも気付き、自分なりの向き合い方を模索する。1つ1つ、石を積み上げていくように、上杉はゆっくりと前に進み始める。
 時間は、大学4年生まで流れ、このまま地味に学生生活を終えると思っていた矢先、クラスメートである親友雨宮の勧めで、ミス&ミスターコンテストに出場することになる。そして、そこで出会った1年生のミス候補者である奈々華に心を魅かれ始める。勇気を出して、彼女と何回か会う口実を作るものの、その過程で彼女の気持ちを揺らす元彼氏の存在が判明する。上杉は、動揺することになるが、、、
 コンテスト終了後、上杉は、もう一度奈々華にデートを申し込む。そこで、彼は、無意識のうちに大学4年間で経験してきたことを想い出していた。

ざっくりストーリーをまとめるとこんな感じでしょうか。ややもすれば、単なるエンタメ?とも取れそうかもしれませんが。いえいえ、実はこれを読むと多くの東大に対する誤解や偏見が解消される内容にもなってたりします(多分)。

現役学生の皆さまの問題意識と、東大ポルノ

そんなこんなで、現役の東大生の方々とディスカッションさせていただいた時に、多くの学生から出てきた意見が、次のようなものでして。

東京大学および東大生に対する偏見を何とかしたい。最近の、特に
テレビ番組は、世間に変な偏見を植え付けすぎている

はあ、そりゃあ、仰る通りかもしれませんなと。特に、学生の皆さまに刺さったスライドが、表題にもある、東大ポルノというメッセージを込めたものでして。

いかとうとまさとうの最新版

 例えば、正確に調査をしたことはないのですが、恐らく、海外の番組で、「スタンフォード王」「ハーバード王」「オックスフォード王」のように、一部のエリート大学生にクイズをひたすら解かせるようなものは存在しないはずで(そもそも、問題を解くことに価値はなく、適切な問題・課題設定をできることに本当の価値がある)。

 エンターテインメントとして成立しているので、それはそれで仕方ないと思うのですが(テレビ局の人からすれば、数字が取れることが全てで、数字が取れている以上何の問題もない)。

この構図は、実は、僕が学生の頃から変わらないし、最近はSNSやyoutubeなどが流行することにより、その傾向はより固定化・助長化されているような印象を持っております。

どうして、こういう構図が出来てしまったのか?について誰かが調査してくれてそうなものですが。まずは、私見を記載してみようという試みです。

甘くて、優しくて、現実から目を背けさせる痛み止めとしての東大ポルノ

 少し論理の飛躍があることを承知で記載しますが、東大ポルノが世間に広まっている背景には、東京大学に対する無条件の信頼・陶酔みたいなものがあると感じておりまして。特に視聴率を上げているだろう想像される40代以降のバブルを経験している世代。

 Japan as No.1を経験し、日本製品が世界を席巻していた時代を知っている人々。今でも日本の科学技術は圧倒的で、そのビジネス推進力においても世界で圧倒的だと信じている人々。そんな日本を代表する東京大学の学生何だから、とてつもない能力を持っていて、世界でも日本でも、簡単に活躍できるし、就職活動も楽勝で、お金を稼ぎまくっている。こんな感じで、無条件の信頼・陶酔があるのではないかと。

別の表現をすれば、東大ポルノは、日本はまだ、世界で1番になれる可能性を持った国なんだ!!と信じさせてくれる痛み止めや幻視薬として機能しているのではないでしょうか?

 ただ、多くの有識者の皆さまはご存知の通り、実際は、そんなことはないわけで。就職先であれ、留学先であれ、日本がいかにこの20年間でやるべきことをやらず、多くの可能性を失ってきたか。。。

 そして、今の学生たちは、僕たちが想像しているよりもはるかに、明確にこの問題に気付いているし(自分たちでよく調べているし)、だからこそ東大に対する偏見を解きたいと考え、さらには、もがきつつも前に進もうとしている東大・東大生のリアルな等身大の姿を世間に見て欲しい(最終的にはその上で、一緒に頑張って欲しい)と思っている。僕は、現役生からそういう熱を感じ取りました。

「新東京大学物語」という小説の効用

ここまで来て、ようやく小説の話に戻ります。結論から言いますと、僕が書いたこの小説の効用は、世間に東京大学・東大の等身大の姿を伝えられることにもありまして。図式化するとこういうことになるんじゃないかなと思っております。

世間の固定観念を覆す

東京大学と最先端の問題

これらも、実際は、物語を書いた後の後付けのようなチャートなのですが。周囲の親しい人何人かに読んでもらって、特に東大出身じゃない人の感想の多くに、

物語も楽しかったけど、それ以上に東京大学のリアルなイメージだったり、東大の学生生活を追体験できることだったりも良かった。

ということをいただくことが多数で。これは、なるほどなと。

確かに、物語を書いて後になって振り返ってみると、これって読者に物語として刺さるのと同じくらい、東大のイメージを覆せる可能性持ってるじゃん!! ってことに気付きまして。

この物語が広まれば、少しは東大に対する偏見も変わり、さらには、日本が持っている最先端の課題に対し、世間の注目も集まってくれるのかしら?とか考え始めたのでした。

東大ポルノは、完全には無くならないだろうと想像するものの、リアルな東大を伝える1つのソリューションになるのではないか。そんな自負を持ち始めている今日この頃です。

それで、これからはどうするん?

東大出身の人、そうでない人、何人かに読んでいただきまして(結構な人数の方に読んでいただきました。本当ありがたい)。お願いする時はドキドキだったのですが、嬉しいことにかなり良好なフィードバックをいただくことがほとんどで(極力厳しめのフィードバックをもらおうと心掛けてお願いもしたのですが、本当にポジティブな意見ばかりだった)。

この経験を通じ、ベンチャーキャピタル風に言えば、「これは、PMF(Product Market Fit)しているな」という確信が生まれ始めておりまして(仮説検証に1年以上かけました)。まだ、形式など修正したい部分はあるものの、適切な形で出版されて、ちゃんとマーケティングさえできれば、しっかり世に広まるんだろうなーとは思ってます。

ただ、残念なことに小説の出版のハードルは異常に高く(もちろん、実務書も同じ)。僕のような人間は、相手にすらされないので。しばらくは、自分のブランディング・プロデュースをしつつ、仕事での実績を積み上げつつ、出版のチャンスを待つしかないんだろうなと思ってます(この経験を通じて、ベンチャーがベンチャーキャピタルに投資を断られる時の気持ちが心底良く分かりました)。

自分の本業である、ベンチャーキャピタル業に関する真面目な記事が多めでしたが。これからは、学生と接していて感じたことだったり、自分の趣味的なことだったり。そんなこともゆるーく書いていこうと思ってます。

学生とのつながりが増えたのは、東京大学関連の仕事を受けることが多くなったことにも起因してますので。全てはどこかで何かにつながると信じ、日々あきらめずに頑張ろうと思ってます。

今回の記事は、どちらかというと現役学生とディスカッションする時の題材みたいな感じになっちゃいましたが。僕も皆さまと同じく、熱い思いを持ってますよーということが伝われば。



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