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3Dの知識ゼロだった私が、 #VRoidStudio でオリジナルアバターを作るまで


 はじめまして! バーチャルクリエイターの紅花(こうか)と申します!

さっそくですが、タイトルについて結論から。

“3Dの知識ゼロだった私が、VRoid Studio でオリジナルアバターを作るまで”に、かかった時間はおよそ2年です。この記事は、その2年間の紆余曲折を綴った体験記となります。

noteに書き記しておく一番の目的は、数年後自分がVRに慣れきった状態でこの記事を見返した時、初心者だった頃の気持ちを思い出せるようにです。

願わくば、これからVRoid Studio を使ってみたいという方や、VRや3DCGに興味があるけれど今一歩踏み出せないという方に「自分にもできるかも!」と少しでも勇気を与えられる記事になっていれば幸いです。

VRoid Studio に関する技術的なノウハウ解説記事ではありませんので、ご注意ください。

全部で4章です。スタート!
(お急ぎの方は目次から最後の章へすっ飛ばしてお読みくださいませ!)




1.VRoid Studio との出会い

 まず、VRoid Studio とはなんぞや?という方もいるかもしれないので、念のためご説明します。

VRoid Studio とは、ピクシブ株式会社が無料提供しているソフトウェアです。VRoidと呼ばれる人型のデフォルトキャラから造形や色などを変更して、オリジナルの3Dキャラを作ることができます。

VRoid Studioについて詳しくは下記公式サイトをご覧ください!


私は2年前までモデリングはおろか3DCG自体が何なのかよく分かっていませんでした。コンピューターで作られていることはなんとなく理解できても、具体的にどういう技術なのか、どうやって動いているのかを全く知らなかったんです。

たとえば「ポリゴン」という言葉。3Dモデリングにおいて、立体モデルの形状を構成するひとつひとつの多角形のことです。当初はポリゴンの意味も存在も知りませんでした。

ポケットモンスター(略してポケモン)をご存知ですか? ポリゴンという角張った見た目のポケモンがいるのですが、名前の由来がCG用語だったことをようやく理解して「たしかに3DCGのポリゴンみたいな見た目してるな!」と感動したのは、つい最近のことです。


そんなある日、VRoid Studio のベータ版がもうすぐリリースされるという情報を見つけます。

掲載されたプロモーション動画には、電子ペンでディスプレイをなぞると3Dキャラクターの髪の毛が立体的に形成されていく様子が映っていました。


「お絵描き感覚で3Dキャラが作れる」。その謳い文句に、私は一気に引き込まれました。

前述のとおり、私はモデリングについて全く知識がありませんでした。3DCGに対して「大変そう」「難しそう」と感じる以前に、そもそも何も知らないので「自分とは関係のない世界」という認識でした。CG制作ツールに興味を持つなんてあり得ないことだったんです。

ところが、絵を描くように3Dキャラを作ることができるという、まるで魔法のような映像を見た時、「自分もやってみたい」と思いました。

自分の得意分野であった「絵を描くこと」と、自分に関係ないと思っていた「3DCG制作」が、VRoid Studio の登場によって結びついたのです。

モデリング作業にかかる労力を知っている人たちがVRoid Studioの登場に多かれ少なかれ興味を示すのはある意味当然です。

しかしそういった人のみならず、3Dモデリングに無縁な人間をも惹き付けてしまう強い訴求力がある点がVRoid Studio のすごいところなのかもしれません。というかそれが、pixiv社の狙いなのでしょうね。

2.挫折

 そして2018年夏、VRoid Studio ベータ版が正式にリリースされました。いざやってみようとダウンロードするも、私は早々に挫折します。

 
VRoid Studio は、マウスでパラメータを操作するだけである程度自由にキャラメイクすることが可能です。

ただし、プロモーション映像にあったような“お絵描き感覚”を体験したい場合には、基本的にペンタブや液タブといったお絵描き用デバイスの使用が想定されています。

私は当時そういった道具は持っていませんでした。デバイスが必要なことは事前にわかってはいましたが、まぁマウスでもなんとかできるでしょ!と高を括っていました。その結果案の定、期待していたような“魔法”は何も出来なかったのです。無知って悲しいですね。

まずもって、マウスでどこを操作すればいいのか理解できません。もともとパソコン操作が苦手な私にはどれが何のボタンで何の機能なのかちんぷんかんぷんです。

特にその頃はまだデジタルで絵を描いた経験が一回もなかったので、“テクスチャ”やら“レイヤー”やら専門用語の意味も全くわからず本当に手も足も出ませんでした。

3.スマホだけで

 しかし、それでも心に小さく灯った3DCGの世界への興味の灯火は消えず、そこから色々と調べ始めます。そして、どうやらVRMというのが今キテるらしいと知ります。

VRMとは、人々が3Dモデルを自分の「アバター(=分身)」として円滑に使えるようにするために考案されたファイルフォーマットです。

当初専門的なことはよくわかりません(今もわかりません)でしたが、何やらVRM形式の3Dモデルがあれば色々なVRアプリで遊べるようだぞ、ということは自分なりに理解しました。

そうしてVRM関連の情報を追い続け辿り着いたのが、VTuberのみみんく様が開発された“VRM ICON AVATAR MAKER”(以下「アイコンアバターメーカー」と記載)です。

アイコンアバターメーカーはその名の通り、顔部分にアイコン画像が貼りついた「アイコンアバター」が手に入るWEBサービスです。

利用方法は、自分が持っている画像の中から任意の画像を選んでボタンをクリックするだけです。VRM形式のアバターなので、その一体さえ手に入ってしまえば、VRM対応をしている様々なアプリやソフトで遊ぶとができます。

これが実際にアイコンアバターメーカーを使って手に入れたアバターです。

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ヒト型(リンク先:VRoid Hub)
画像2
ロボ型(リンク先:VRoid Hub)

当時、パーツを選んで3Dキャラが作れるアプリは他にも幾つかありました。でも、私がやりたかったのは既存のパーツのカスタムではなく「オリジナルのデザインが反映されたキャラを作りたい」

任天堂の『あつまれどうぶつの森』というゲーム、やったことありますか?ちょうどあの「マイデザイン」のようなイメージです。あれがやりたかった。

ちょうどこの頃にはスマホでデジタルお絵描きもやり始めて、素材として使える画像が手元にある状態でした。

だから、任意の画像(=自分で描いたイラスト)をアバターにすることが出来るアイコンアバターメーカーは、私のやりたいことを叶えてくれる理想のツールでした。

そしてもう一つ、私にとって重要なことがありました。それは“スマホで出来ること”だということです。アイコンアバターメーカーはスマホ(ブラウザと画像データ)だけあればアバターが作れます。

ここまで読んでくださった方には薄々伝わっているかと思いますが、私はとにかくパソコンに馴染みがなく、ネットもアプリももっぱらスマホで楽しむタイプです。ゲームもスマホか家庭用ゲーム機でしかやりません。

だから、パソコンを一切使わずに、3Dアバターを作って遊べるまでがすべてスマホで完結できること、これが何よりも重要でした(そうじゃないと操作の段階で挫折しちゃうのです)。

これは、アイコンアバターを使ってスマホアプリ「VPocket」を遊んでみた時のツイートです。

VPocket…VRMを表示できるスマホアプリ。

「スマホは2D画面なんだから、それじゃ普通のゲームや動画と変わらない。VRにはHMD(ヘッドマウントディスプレイ)があってこそだ!」と思う方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、VRに免疫のない私にとっては目の前が2D画面か3D画面かという以前に、「自分だけのアバターを生み出せたという事実そのもの」がまず何よりも衝撃的で嬉しいことでした。

 アイコンに使った画像は自分がスマホで描いたオリジナルのイラストでしたので、正真正銘、世界にたった一つしか存在しません。

市販のゲームで既存のキャラクターを使って操作するのとは訳が違います。たとえそれが顔や衣装を好きなようにカスタムして作ったアバターだったとしても、自分の手で描いたイラストが顔に付いているアイコンアバターのオリジナリティは、その比じゃありません。その時点でHMDを被っているか否かは、関係ありませんでした。

“この世にたった一つしかないオリジナルの物体が、画面内の空間でまるで生きているかのように動いている”という特別な状況──。

それだけで、私にとってそれは立派なVR=“バーチャルリアリティ”だったのです。

その感動とワクワクといったら、凄まじいものでした!

その証拠に上記のツイート、床にアバターの影が映っているだけで喜んでいます。アバターがそこに存在しているという実感を感じて、新鮮だったんですね。

この記事を書いている今となってはアバターに影がつくなんていうことには驚かなくなりましたが、バーチャル初心者ならではのこの感覚を今後も忘れず大事にしたいなと思います。

4.VRoid Studio への再チャレンジ

 そんな体験を経て、私は3D制作への関心をいよいよ強くし、VRoid Studio に再挑戦したいと思うようになりました。画像をただ貼りつけただけのアバターでこんなに楽しいなら、顔や髪や服を自由に描けるVRoidはもっと楽しいはずだと確信したのです。

そう決心してから、私は徐々にスマホアプリだけでなく、簡単にワールド制作ができる「Vワールド」や、3Dモデリングソフト「Blender」、ゲームエンジン「Unity」など色々なPCソフトに挑戦し、3DCGやVRのコンテンツを楽しみ、学ぶようになっていきます

VRoidをやりたいならペンタブを買ってくるのが先決でしょとツッコまれそうですが、どうせ買うなら液タブが欲しいと思ったので、ペンタブは買わずに液タブを買うためのお金を貯めることにしました。

そして液タブを手に入れるまでは、今持っているスマホやノートパソコンで出来ることからとりあえずやってみよう!と、あれこれソフトを使って遊んでみたのです。     

たとえば、バーチャル空間にワールドを作ってVRMアバターの動画を撮影してみたり、CC0ライセンスで無料配布されていた3Dデータにボーン(骨組み)を入れて、自力でVRMアバターを作ってみたりもしました。

そうして過ごすこと十数ヵ月、ようやく念願の液タブを手に入れ、挫折してアンインストールしていたVRoid Studio を改めてダウンロードするに至ったわけです。

そんなこんなでVRoid Studio の存在を最初に知ってから実際に触れるようになるまで、およそ2年も遠回りをしてしまいました。

2年越しのVRoid Studio の使い心地はどうだったかといいますと、以前の挫折がまるで嘘のようにめちゃくちゃ楽しいです!

 以前とは違い、他のアプリやソフトでVRMを触っていたことによってモデリングの予備知識が少し着いてきていたので、それが役に立ってスムーズに使いこなせたという側面もあります。

私の記念すべき初VRoid作品は「少女漫画風アバター」です。思い描いていたイメージの通りに作れたので、お気に入りです!

アバターはこちらのVRoid Hub にアップロードしています。よければ見てみてね!

5.いま一番伝えたいこと

 話がやっと冒頭に戻りました。この記事で私がみなさんに何を伝えたかったのかというと、「PCやCG技術に素養のない全くの初心者には、3DCG制作はあまりにも難解すぎた」という、至極当然の事実です。

簡単に3Dキャラが作れるということで、こんなにも世間に評価されているVRoid Studio でさえ、ここまでお話ししたとおり、当時の私にとっては相当なハードルの高さでした。

たしかにVRoid Studio は、3Dモデリングのハードルを圧倒的に引き下げてくれた画期的なサービスです。ただそれは、少なくともパソコンの操作に慣れていて、デジタル絵や3DCGに素養のある人たちにとって、という前提があります。

アナログ人間がVRoid Studio をいきなり使いこなすのには、やはりちょっと無理がありました。あくまでそれは、PCソフト全般に不慣れという私(ユーザー側)の事情であって、VRoid Studio が悪いわけでは決してないのですけどね!

しかし、ここからが主張したいところなのですが、エンジニアやクリエイティブ職でもない限り、世間一般の大多数の人たちが持つVRに対する感覚って、正直ほぼこんなかんじなのではないでしょうか!?

「パソコンには疎い」
「自分には関係ない」
「3DCGって何」
「どうやって作ってるの」
「なんで動くの」
「わからないし、なんかキモイ」
「なんかコワイ」

VRは最近注目されている技術とはいえ、なかなか一般人には普及しないと嘆かれていると聞きます。

個人的な意見ですが、一般人は、業界の方々が想定している数百歩くらい手前のところでつまずいているような気がしてなりません。

というのも、私自身がそうだったように、初心者ってその道に精通する人達からすれば本当にびっくりするぐらい、そこから!?みたいなところからわからないんですよね。

これは初心者に何かを教えたことのある人はとてもよく共感できると思います。部活動やアルバイトの後輩、会社の新入社員とか。当たり前の前提知識が通用しないんです。

だから、誰かが何かを新しく始めようとする時には、最初のハードルを思ったよりうんと低くしておく必要があります。

たとえば学校の勉強も、最初の導入部分が理解出来れば嬉しくてやる気も出ますが、逆であればたちまちやる気は失せてしまいます。最初が簡単で楽しくなくちゃ、始まりません!

いままで他人事だった(と思い込んでいた)ものが自分事に変わってはじめて、人はやっとその重い腰をあげるのです。

「これは自分にとって楽しいことかも」という感覚が必要なのです。実感や手応えが伴った「楽しい」と感じる気持ちが好奇心や興味を刺激し、次のハードルを超えるためのモチベーションとなります。そうやって次の段階へステップアップしていきます。

VRにも同じことが言えるのではないでしょうか。どんなに興味があることでも、何か大きな壁にぶつかってしまえばモチベーションを持ち続けることは容易ではありません。

せっかく新しいことに興味を持ったのに、最初の越えるべきハードルが高すぎるせいで挑戦をやめてしまうのは、その人自身にとっても、社会にとっても、すごくもったいないことです!

新しく始めた人が、もしかしたらすごい才能を開花させてその専門分野・業界に貢献するかもしれないし、そうとはいかなくても、参入する人口が増えればそこに文化や経済が生まれます。それはすなわち、その分野や業界が発展することを意味します。

いいえ、もっといえば、才能だとか発展とか関係なく、その人が新しいことを始めそれを「楽しい」と感じたなら、もうそれだけで素晴らしいことです。

では、初心者がくじけずに歩み続けるためには何が必要か。それは、他者の存在。仲間です。友人や先生でも、ネットの記事や動画でも本でも、だれかが作った便利な道具(ツール)でも構いません。

私の場合は、アイコンアバターメーカーとの出会いが決定的でした。アイコンアバターメーカーに救われて、オリジナルのアバターを作ることの楽しさを兎にも角にもまず実感できたことが、次のVRoid Studio での創作意欲に繋がりました。

ここで、アイコンアバターメーカーでVRMアバターを作りまくり、さらにスマホアプリ「Vスタンプ」で遊びまくる私のツイートをいくつか載せておきます。楽しんでいた様子が伝わるかと思います。笑

Vスタンプ…VRMアバターをポージングさせてスタンプにできるスマホアプリ。

もちろん私を助けてくれたのは、アイコンアバターメーカーやVPocket、Vスタンプといったアプリだけではありません。

有志の先人クリエイターの方々が残してくれた、わかりやすく噛み砕いて書かれた解説記事や解説動画にも、たくさん助けられました。

VRoid Studio だって企業開発にもかかわらず無料でリリースされていますから、金銭面でも初心者には大変有難いことです。

まずは、簡単に、手軽に、楽しい!嬉しい!を味わえる。それがどんなに大切なことか。

VR界隈にはそういった足がかり的ツールやコンテンツが、この記事で紹介したアプリ等の他にも実はたくさん存在しています。

しかしそれでもまだまだ情報は見つかりにくく、本来必要としている初心者にそれが届いていない状況だと思います。

興味を深掘りできずに挫折者が出て、ニッチな雰囲気が漂ってしまう。その雰囲気は一見居心地がよく、一概に悪いとも思いませんが、VRコンテンツの提供者が目指している未来とはちょっと違う気がします。

3DやVRとは全く縁遠い人たちがもっともっと、さらに気軽に、楽しくVRを体験出来るようになったら・・・。その先に、VRがよりメジャーな文化、産業となる未来が待っているのではないでしょうか。

以上、「3Dの知識ゼロだった私が、VRoid Studioでオリジナルアバターを作るまで」のお話でした。どこかのだれかへ、ちょっとした勇気を与えられることがありますよう!

最後まで読んでいただき、誠にありがとうございました!


ライター:紅花(こうか)



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