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スポーツ立国論「ちゃんと真似しよう、勿体ないから。」

3月13日、Twitter上で「スポーツ立国論」という本をプレゼントする株式会社ドームの安田さんのツイートを見つけました。

僕が通う筑波大は約3年前から本格的にアメリカの大学スポーツ組織であるNCAAの日本版を作る先駆けとして、安田さんが代表を務めるドームと共に、アスレチックデパートメントという大学に統括組織を置く活動を行っています。

安田さんの協力の元、ゆくゆくはチームそのものが大学、地域と密接に関わりながら、活動していけるシステムです。

そういったきっかけで、安田さんを知ることになり、今回たまたま見かけたプレゼントの募集に応募させていただくことにしました。

「安田さんがどんなことを考えてながら、なにを目指しながら行動しているのか」

僭越ながら、それらのことが僕自身の実寸大として手に取るようにわかる内容でした。

そしてその本を読み終えたいま、とてつもない武者震いが、文章から感じられた日本のスポーツ界の可能性と、安田さんの人柄が感じられる文章からきていることに気づきました。

本にも書かれていますが、内容的には一石を投じる内容が多く、見る人が見たら「批判的な内容が多い」と捉えられる方がいるかもしれません。

しかし、その本質的な目的は日本スポーツ界の発展であり、そのためにビジネスをうまく使うことを推奨している内容になっているのです。

僕自身、デンマークのことをこれまで多く発信してきました。

「デンマークのここが素晴らしい」
「日本とこういうところが違う」

これは日本を卑下したいわけでは毛頭なく、活かせるところがあれば活かして行くぞ。という意思表示です。

むしろ、日本を否定することはこれまで日本で活動してきた僕自身を否定することになります。

身近だと、筑波大ハンド部やそのコーチ、これまで僕に関わっていただいた全ての方への感謝の気持ちを忘れるわけがありません。

今回は、本を提供していただいている恩返しとしてこの記事を書こうと思いました。
というか、書かなければならないと思いました。

少しでもこの本の内容に興味を持ってくださる方が増えたら、これほど嬉しいことはありません。

スポンサーや提供という言葉は

「無料」で何かをくれる。
「タダ」で何かをしてくれる。

訳ではありません。

その対価として、お金には変えがたい個人や団体が持つエネルギーを「影響力」という形で支払っていると思っています。

筑波大ハンドボールでは、アンダーアーマー社製のトレーニングウエアをはじめとする多くの支給品を頂いております。

そして、トレーニングでは必ず支給されたものを身につけてくることが義務となっております。

そのウエアを着てトレーニングしたり、ゲームをすることで筑波大の良さと共に、アンダーアーマーさんの良さが同時に観ている人に伝わる。

こういった体験があったからこそ、この記事を書かずにはいられなかったんだと思います。
要するにタダなんてないよ。ってことです。

先程、安田さんの考えていたこと手に取るようにわかったと書きましたが、その理由はご自身の体験を僕たち読者が追体験できるような形で本を読み進めていく場面があったからです。

そのときの状況から、何を感じ、何を思い、何を志したのかとても掴みやすく自分に置き換えて読むことができました。

中でも印象的だった場面は安田さんが全米スキースノーボード連盟の最先端の施設を訪れられたときの話。

競技施設を始め、トレーニング施設も充実しており、そのほかプールに体育館、スタジオ、栄養センター、ケアルーム、カフェテリアなどのハード面、さらにコーチはもちろんトレーナーやドクターが常駐しておりソフト面も充実。

そんな施設を目の当たりにしたとき
日本の選手がどんなに頑張っても、これでは勝てるわけがない。」
ため息と共にその言葉が出たそうです。

僕もデンマークにハンドボール留学をしている際、詳細は異なりますが似たような感覚を覚えました。

各地域チームがカフェテリアや売店が併設されているホームアリーナを持っており、そこで大々的に行われるリーグ戦。

かと思えば平日の夕方や、土日の朝から夕方まで一日中そのアリーナを使って行われ続けるU-9からU-19のゲーム。

国内で、デンマーク版チャンピオンズリーグのようなものを作る動きもあるとデンマークの友人が教えてくれました。

「こりゃ、敵わないわ。」
まさに同じような気持ちを抱きました。
これは日本を卑下しているわけではありません。

ハンドボールトップレベルの国がこれだけの取り組みをしているなら、それは強いよな。」
と、妙に合点がいく感覚を覚えました。

同時に、日本にも活かせられる部分が多くある。
そのように思いました。

まさに、安田さんが本書で何度も繰り返し出されていた言葉「コピー&インプルーブ」の精神です。

これこそが日本人の強みだと僕も思います。

前回の記事にも書きました。
日本にいるときには気づきませんでしたが、同じ「ノート」という1つの種類の物でも日本には数え切れないほど沢山の種類のものが存在します。

その一つ一つが誰かがどこかからインスピレーションを受けて、改善して用途に合わせて産み出されてきたものです。

この事は「ノート」に限らず、全てのモノやコトに当てはまると思います。

1つの成功事例をもとに、それを自分たちの土台に当てはめて、活かしていくのは日本人の専売特許なはずです。

なのに、スポーツという分野においてそれが上手く機能していないと、この本の中で安田さんは嘆いています。それがとても勿体ないと。

その原因の一つとして、日本にスポーツが取り入れられたきっかけが、他の国とは少しだけ異なっていたことが挙げられています。

ヨーロッパでは、「憂いを取り去る」
つまり、自分の中の欲望をスポーツという形で体現させて、その憂いを発散するという本質があります。

なので、ヨーロッパの人の中にスポーツは基本的に「楽しい」ものだという共通認識が無意識の中に埋め込まれているような気がします。

だから、プロフェッショナル、アマチュア共に、その試合を観にくる人たちは自分の中に湧き出る「欲望」を、選手たちに投影しているのです。

それを投影する機会にお金を払う。
これがスポーツビジネスのひとつ目の本質だとこの本に書いてありました。

日本では明治維新以降の「富国強兵」を目的とした体育から基本的な哲学が変わっていないと述べられています。

勝つために何かを犠牲にしなければならないという考え方は、オフさえもその競技に時間を割けという風潮からも見え隠れしているように思えます。

もうひとつが「ロイヤリティ」

僕は、甲子園で1度も練習を見たことがないチームでも、地元の学校だからという理由で応援したことがあります。

そんなチームにはもちろん頑張って欲しいし、機会があれば試合を観に行ってみたいと思います。

大会で優勝した日には、自分のことのように喜んで、また勝って欲しい。そう思わせてくれますよね。

そのような気持ちが、試合に足を運ぶことに繋がり、地域とチームで経済を回すことに繋がります。

そこに必要不可欠な要素がスタジアムです。
この問題は難しかったので、ちゃんと理解できているかどうか自信がありません。

現在の日本でスタジアムやアリーナを持っているチームはとても少ないです。
多くのチームは地方自治体から「借用」していることがほとんど。

例えそこに多くの出店があり、多くの集客が出来た上で、多くの収益を挙げたとしてもそのお金はその施設の維持費として吸い上げられてしまいます。

そこで、チーム自体が施設を所有することが出来たら。

この本で安田さんが具体的な方法を書いてくださっています。とても1人の力ではどうにもなりませんが、力を合わせれば実現できない理想ではないはずです。

そうして得られた収益はほとんどホームチームに入ることになります。税金の補助金使って運営する施設から、お金を生み出す施設へと変えることができる。

もちろん、実際本の中では日本のサッカーや野球規模の話で展開されていたのでハンドボールにそのまま転用できる訳ではありませんが可能性は十分にあると思います。

この話を聞いて、出来るかできないかは置いておいてとてもワクワクしました。

僕がデンマークに行ってトップチームの試合を間近に見たあと、感動の奥にあったモヤモヤが少しだけ晴れたような気がしました。

僕の体験と少なからずリンクする話の内容が数多くあったので、ここに書かせていただきました。

あまり長くなっても読んでいただいた方の時間を過剰に奪ってしまうことになるので…。

そのほかにも体育や部活の学校スポーツ問題の話や、女性がどのようにスポーツに参加してきたかの話、スポーツの可能性をもっと広げるメディアの話、東日本大震災から安田さん自身が感じたこと、起こした行動の話などなど

これからのスポーツ界の可能性の幅を広げる、ビジネスとの関わり方が書かれています。

私の持っていた日本のスポーツビジネスとはなんなんだという未知のたまごに小さな木槌でヒビを入れてくれたそんな本でした。

最後に、安田さんを始めとするこの本のプレゼント企画に携わってくださった方に改めて感謝を申し上げたいと思います。
ありがとうございました。

何回も読みます。

Amazonのリンクを貼っておきます。

スポーツ立国論: 日本人だけが知らない「経済、人材、健康」すべてを強くする戦略 https://www.amazon.co.jp/dp/4492503129/ref=cm_sw_r_cp_api_i_Pi.HEbNCYYJXT

森永浩壽


2022年の今、フルタイムで働きながら日本リーグ参入を目指すハンドボールチーム"富山ドリームス"の選手として活動しています。ここでのサポートは自身の競技力の向上(主に食費です...)と、富山県内の地域との交流に使わせていただきます。