見出し画像

「趣味はなんですか?」という質問が、世界で8番目くらいに困る

趣味はなんですか?
と聞かれると、うろたえてた。

シュミ。趣味。しゅみ。僕の趣味はなんなんだ。



たとえば映画は観る。でも、「映画が趣味ですね〜」なんて言ったそばから、「あ、わたしも好きで。年間300本くらい観てるんです〜」なんて言われた日にはたまらない。こちとら年間50本いけばいいとこだ。ジョージ・ルーカスとスティーブン・スピルバーグがたまにごっちゃになる。ぶっちゃけ、『耳をすませば』とか、ちゃんとみてないから、ジブリの話もあんまりついていけない。

「趣味って、観た映画の数とか知識とか関係ないでしょ。本人が本当に楽しいかどうか、それをやってると夢中になれるかどうかなのだと思うけど」

って意見もあると思う。
正直なところ、大賛成です。趣味って、きっと誰から頼まれたりしなくても、つい夢中になってしまう何か、なのだと思う。

でも、それこそが僕には問題だ。趣味を聞かれて困るのは、夢中になってやれることなんて見当たらないからなのだ。


俺は、あいつやあの子みたいに夢中になれる趣味がない。
そのことは、ちょっとしたコンプレックスだった。

でもある時から、そういえばいつも、頼まれなくてもやってることがあると気づいた。それは、散歩だ。

僕は歩く。
というと、サカナクションの曲のイントロが流れてきそうだけど、あのMVの山口一郎さんばりに僕は歩いている。家の近所で、旅先で、仕事場のまわりで。たぶん散歩ができなくなったら、僕は死んでしまうな、と、比喩じゃなく真剣に思う。ストレスが溜まってしまうのだ。

と、気づいた時、「趣味、散歩じゃん」と腑に落ちた。たぶん他の誰よりも散歩してる。その時の自分は、夢中になってるっていってもいい。言い方を変えれば、ゾーンに入ってる。オリンピック競技に「散歩」があれば、日本代表くらいにはなれるんじゃないかと思うくらいだ。

「夢中になれること」は、自分にとってあまりにもあたり前で、自覚しづらいことも多い。だから、「趣味はなんですか?」とか、「好きなことはなんですか?」と聞かれて、答えに困ってしまう、という人をたくさんみてきた。

たとえば、他人から見たらとても聴き上手で、本人もいくらでも人の話を「聴く」ことができるがいても、その人にとって「聴く」は呼吸みたいに自然なことなので、「自分なんて…」と言っていたりする。それで、「夢中になれることがないわ〜」といって、googleで「趣味 見つからない」と調べたりする(かつての俺だ)。

でも、幸せの青い鳥じゃないけれど、「夢中になれること」や「好きなこと」は意外と身近にあることが多いんだと思う。ひたすら寝てるわ、という人は、睡眠が趣味だっていいわけだし。散歩だって、もちろんいいわけだ。


そんなわけで、「趣味はなんですか?」と聞かれて、もううろたえなくてよくなった。「散歩です」と、キラキラしたまなこで答えればいい。相手に「散歩…ですか。」と訝しがらるかもしれない。でも、関係ない。だって好きなんだもん、散歩。



サポートがきましたって通知、ドキドキします。