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東畑開人『ふつうの相談』を読んで考えた、「専門知に逢うては専門知をころせ」

かつて、ある相談者の方から面談終了後に「正直、残念でした」と言われた。「もっとアドバイスとか、山中さんがどう考えるかを知りたかった」と。

キャリアコンサルタントの資格をとるとき、「相談に来る方の自己決定を尊重して、なるべくアドバイスなどはしない」と口酸っぱく教えられていた。なので、資格取得後もそれを意識してカウンセリングしてたのだった。

だから、その方の苦言はショックだった。まじか〜、と。
キャリコンの専門知だけでは満たせないニーズがある。そう悟ったのだ。

でも、そりゃそうだ。相手は生身の人間なのだし。マニュアル的な対応からはこぼれおちるものがあるよね。

それからは「僕はこう思います」と、アドバイスや投げかけもするようになった。そしたら、相談者の方からの反応もいい感じになった。


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そのあたりのことが、東畑開人さんの『ふつうの相談』を読むと腑に落ちる。

専門的な知識を参照しつつ、でもそこだけによりかかることなく、世間知もふまえて価値判断して、雑談したり、説明したり、評価したり、アドバイスしたりしながら問題に対処すること。それが、人の心と向き合う仕事にはもとめられる。

僕の場合はキャリアコンサルタントだけど、カウンセラー、コーチなども、「ふつうの相談」というカードを持っておくことはとっても大事、だとおもう。

専門知を学びたてのときは、こどもがおもちゃを買ってもらったときみたいにそれをふりまわしたくなりがち。でも、臨済宗の言葉に「仏に逢うては仏を殺せ(自分にとっていちばん大切なものにも執着するな)」ってあるけど、「専門知に逢うては専門知を殺せ」。専門知至上主義になることのあやうさと限界があることは、つよ〜く胸に刻んで、ほどよく手放したい。


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