「自分らしく働こう」の、その先へ。
「自分らしく働く」という言葉を、書店や記事などでよく見かける。
なんとなく、耳ざわりのいい言葉として流してしまいそうになる。けれど、元来ひねくれ者なので、あまりの耳ざわりのよさに若干の違和感を持って、僕の思考ははたと立ち止まる。
「自分らしく働く」ってどういうことなんだろうか?
たとえばある記事には、自分らしく働いている人の特徴として、次の項目があげられている。
自分のスキルを活かしている
目標を持って努力している
働きやすい環境を自分で作っている
自分をさらけ出している
価値観を共有できる仲間がいる
なるほどそれっぽい項目がならんでるし、箇条書きにすると、「なるほどそういうもんか」という気もしてくる。僕だってこの項目にしたがったら「自分らしく働けている」かもしれない。
けれども、僕だって「自分らしく働けている」感覚は100%はないわけだ。
「自分らしく働く」という言葉にはもっと、湖のような、覗き込んでもどれほど深さがわからない感じがあると思うのだけど。
働き方研究家の西村佳哲さんは、「仕事」を次のようにとらえているという。
仕事とは特定の職業や職能ではなく、自分の中心から生まれてくる力を「働き」にして社会化する、ひとつながりの営みだ。
(『自分の仕事を考える3日間Ⅰ』西村佳哲 6頁)
西村さんの「仕事」の定義には、「自分らしく働く」ということを考える上でも大事な要素が含まれている。
ひとつは、自分の中心から生まれてくる力がみなもとになること。(特定の職業や職能ではない!)
もうひとつは、その力を社会化すること。
そして、力が社会化する営みそれ自体が仕事であること。
「自分らしく働く」という言葉に沿わせれば、「自分らしく働けている」状態は、自分の中心から力がわき、それを他者と分かち合うことができるように動いている、そんな状態。
そう考えると、「自分らしく働く」という言葉の耳ざわりのよさに停止しそうになった思考は動き出す。
「自分の中心」には、どのようにしたらつながれるのか?
そして、そこから生まれてくる力は、どのようにしたら社会化できるのか?
「自分らしく働く」と題した本や記事がたくさんあるという現象は、「自分らしく働けていない」ことにモヤモヤを感じていて、何とかしてほしい人がたくさんいるという事実と、けっきょく「自分らしく働く」系の本を読んだところでそのモヤモヤからは抜け出すことがむずかしいことを照射しているように思う。
だから、「自分らしく働こうぜ」というアジテーションではなくて、「どうしたら自分らしく働けるのか」ということを実践を通じて探求していきたいのです。
今のところ、「U理論」や、「オープンダイアローグ」に、その問いについて考えるヒントがある気がしてるんだけど、この探求の森はだいぶ深そう。だからこそ楽しみでもある。
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