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ハートブレイクにさよなら

2日間朝から晩までだ。夏休みだというのに最初の2日間を仕事のための講習を受けてつぶした。だけどモチベは低くはなかった。なぜかというと2日目に修了証をもらうとそのまま駆けつけるところが、僕にはあったから。

ありささんと江の島で待ち合わせたのだ。この日、片瀬西浜で花火がある。「マイアミビーチショー”夏”花火」といって19時40分からの5分間。そのたった5分間のために僕は急いだ。電車の中を駆けたい気持ち。
なぜマイアミビーチショーかというと藤沢市が1959年にマイアミビーチ市と姉妹都市提携を結んだことに由来する。あ、そんなことはどうでもいい。急がないと!

江ノ電の江ノ島駅からすばな通りを歩き始めたときはまだ明るかったのに、134に出るころには空が鴇色(ときいろ)に染まっていた。

間に合ったみたい? 花火。
ねえ、やっと夏休みが来たよ。

「5分間の夏休み!」
と言って、ありささんが笑った。

花火を見届けたらあとは鎌倉に出るか藤沢に抜けるか。遅くまでやっているお店は藤沢が多いよねということになって、江ノ島駅に戻ることにした。小田急の片瀬江ノ島駅は浜に近いから混雑するだろうと予想を立てて今日は待ち合わせも江ノ電の江ノ島駅にしたのだ。藤沢にも江ノ電で、と思った。

だけど途中で考えが変わった。ちょうどバスが来たのだ。僕らは駆け出してバスに飛び乗る。息を切らして。

藤沢に着いてしばらくお店を探して歩き、そしてもんじゃとお好み焼きにありついた。ラムネサワーで乾杯すると、いい歳をしてもんじゃの作り方を知らない僕にありささんがお手本を見せてくれる。いやそのお手本をそのまま調子よく食べてしまうのだから実質ありささんに作らせてしまったわけで。お好み焼きまでも。

生まれて初めての彼女は中学3年のとき花火大会の帰り道に口説き落としたのだけれど結局受験もあって半年もたずに別れちゃったなんて話を、花火大会の帰り道にありささん相手に話す。「半年続いたならいいじゃないですか」とありがたいお言葉をいただき癒やされる。いつからこんなしょうもないオッサンになったのかと思うけれど、とりあえず楽しいからいいんだよ。いまを楽しまなければいつ楽しむの? 何かの宣伝文句みたいだけど。
いまでしょ。
古すぎたか。

夢物語のような夏休みを、ありささんありがとう。

Thanks to you, I'll never forget this summer.



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