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激闘の記憶3・橋本悟(はしもと・さとる/橋本道場)衝撃のKO負けから再起。 「このオファーを断ったら『逃げた』と悔いが残る。 リベンジも兼ねた大舞台で打ち合って倒して 『俺はまだ終わってねえぞ!』」(2020年1月公開・テレ・マーカーPresents KNOCK OUT 無法島64kgGPインタビュー&試合動画)

*2月11日、大田区総合体育館で開催された「テレ・マーカーpresents KNOCK OUT CHAMPIONSHIP.1 無法島64㎏GRAND PRIX」の試合前インタビューと、試合動画を公開します。激闘の興奮を再び!!


橋本悟(はしもと・さとる/橋本道場)


衝撃のKO負けから、無法島GPで再起。
「このオファーを断ったら『逃げた』と悔いが残る。
リベンジも兼ねた大舞台で、打ち合って倒して
『俺はまだ終わってねえぞ!』というところを見せる」

文・撮影 茂田浩司

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プロフィール
「激闘大魔神」
橋本悟(はしもと・さとる)


1986年3月18日、東京都西多摩郡出身。34歳。
学生時代は野球やバスケットボール、伝統派空手を経験。
大学卒業後、23歳で橋本道場入門。24歳でプロデビュー。
戦績:39戦20勝(10KO)16敗3分。身長172cm(*戦績は2020年1月時点のもの)

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 橋本悟がもっとも嫌うのは「逃げること」だ。

 昨年10月4日、東京・後楽園ホールで開催された「REBELS×KNOCK OUT」。そのメインイベントを飾ったのは「激闘大魔神」橋本悟対「クレイジーダイヤモンド」鈴木千裕だった。
 これがキック39戦目で、北川“ハチマキ”和裕と潘隆成(ぱん・りゅんそん)を相手に2連続KO勝利中の橋本と、まだキック2戦目の鈴木。下馬評では「橋本の勝利」はまず動かないと見られていた。


 ところが、試合開始ゴングが鳴ると鈴木が猛然とプレッシャーを掛け、右ハイキックから怒涛のパンチラッシュ。不意を突かれた格好の橋本は防戦一方となり、試合開始からわずか45秒でマットに沈んだ。


「油断だったんだと思います」

 試合からしばらく経ち、橋本が試合会場に行くと知り合いのキックボクサーたちからは口々に「お前、どうしたんだよ?」と敗因を聞かれた。
 そして、2人の先輩にはこう指摘された。
「黒田(アキヒロ)さんに『舐めてたでしょ?』って言われて、大月(晴明)さんは『あれは油断だから』って。ベテランの二人に言われたのは突き刺さりましたよ。『あれでは分からない』と言われることもあるんですけど、やっぱり油断なんです」

 橋本にとって「下馬評の高さ」と「調子の良さ」が裏目に出てしまった格好だったという。
「あの試合は、みんなに『橋本が勝つだろう』と言われてて、でも僕は『絶対に油断しないぞ』と思ってたんです。だけど、今思うと『絶対に油断しないぞ』が油断だなって(苦笑)。『俺の方が強いから』って思ってるんですよ。挑戦者なら『油断しないぞ』なんて思わないんで」

 しかも、橋本は2連続KO勝利で勢いに乗っていた。そのうち1つは、鈴木千裕の先輩で実力者の潘隆成。その潘に、橋本は会心の一撃を決めてKO勝利していた。
「潘君との試合で上手くいって、元々、大して上手くもないくせに(苦笑)『上手くやってやろう』と思ってしまった。あとで『俺はそういう選手じゃねえだろ』って思ったし。確かに千裕君の勢いも凄かったです。最初からあれだけ前に出られるのもなかなかないですけど、でも逆に、経験が浅いから出られるんだと思いますよ。僕らぐらい試合してると、最初からあそこまで出られないし、彼も10戦やったら出られなくなるでしょう。『怖いもの知らず』だから出られて、僕は油断してた。だから、僕にとっては逆に負けてよかったんですよ」

 痛恨の敗北の原因を見つめ直し、練習を再開した矢先に、橋本の元に「無法島GP」のオファーが来た。
 「倒し屋」を集めたサバイバルトーナメントに、常に「倒すか倒されるか」を実践してきた「激闘大魔神」は外せない、という山口元気プロデューサーの判断だ。
 橋本は、一瞬、迷ったという。
「最初は『えっ』と思いましたよ。あんな倒され方をして、それでトーナメントに出てきたら『なんで負けたお前が出てくるんだよ』と思われるだろうし。
 だけど、どういう相手と復帰戦をやろうかな、格下を選ぶのか、逆にものすごく強い相手を選ぶのかって迷ってた時に『無法島GP』のオファーを貰ったんです」

 橋本は「ちょうどいい」と考えた。
「負けた千裕君も出てくるし、リベンジを兼ねて、復帰の舞台にふさわしいな、と思って」

 痛恨の1RKO負けで「引退」がよぎることはなかった。むしろ「やってやろう」という闘志がわきあがった。
「あのまま辞めて引退したら情けないじゃないですか。僕は5連敗した経験があって、その時も苦しかったですよ。だけど『これで辞めたら、ただの負け犬だな』と思って。
 最近は結構、引退のことも考えるんです。もし今回の無法島GPに出ず、誰か違う選手とやって復帰しても、引退する時に『俺、無法島GPに出ていたらどうなってたんだろうな?』と絶対に思うと思うんですよ。だったら出場した方がいいです。たとえ1回戦で負けたとしても『俺は逃げてねえよ』と思える。もちろん、出ると決めた以上、負けるつもりなんかないですよ。今、すごくいい練習が出来てるんで『勝てる』と思ってます」

 あの敗北は、注目される舞台だった上に、テレビ中継では「倒されるシーン」が繰り返し流される。橋本にとってこれ以上ない痛い負けとなったが、それでも、橋本は前を向き、挑戦を続ける。
 それこそ、プロで10年間戦い続けてきた男のプライドと強固な意志だ。

「あきらめが悪いだけなんですけどね(笑)」

 そうして、橋本は自身の「原点」を明かした。

「24歳でプロデビューして、27歳の時に初めてタイトルを獲ったんです。相手はイノベーションのチャンピオンの梶田義人選手で、ウチの道場の田中(秀和)さんも1RでKOされてて。みんなに『8割、9割、橋本が負ける』と思われてて。そうしたら、開始1分半でダウンを取られたんです。ボディを打ちに行ったところにカウンターを合わされて、フィギュアスケートみたいにクルっと回転して倒れたんですよ(苦笑)。それを道場のみんなによくいじられるんですけど(苦笑)」

 ダメージは深かった。だが、橋本の心は折れなかった。
「めちゃめちゃ効いたんです。漫画みたいですけど、カウンターを食らった瞬間、目の前にパッと火花が散ったんですよ(苦笑)。だけど、強いのは分かってたんで『やっぱりそうなるのか』と焦りはしなかったし、立ち上がったら足元がフラつく感じもない。それで『取り返してやろう!』と思って、1R後半から5Rまで、ずっと前に出続けて、ダウンは取り返せなかったけど、3-0の判定で勝って、初めてベルトを巻きました。
 あの時に『俺は上手い試合じゃなくて、倒すか倒されるかだ』って」

 橋本は、道場の中でも「特異な存在」だという。
「ウチの道場の選手は、みんなジュニアからやってて、キック通の人が見ても『上手いな!』とうなるような上手さがあるし、負けが少なくて勝率もいいです。僕だけなんですよ。上手くないし、こんなに負けも多くて(苦笑)。
 だけど、僕は『倒すか、倒されるか』しかできないんで。打ち合って、面白いところを見せて、勝つ。前から『力が落ちてると感じたら辞める』と言ってますけど、練習では(安本)晴翔ともガンガン打ち合えてる。まだ『落ちてる』と感じたことは一度もないです」

 無法島GP1回戦では、バズーカ巧樹(菅原道場)と対戦する。
「噛み合うと思うんですよ。バズーカ選手も『超絶テクニシャン』というタイプではないし(笑)、打ち合って、僕が倒しますよ。
 勝ち進めば1日3試合ですけど、負けたら終わりなんで。『先のこと』なんて考えてたらやられちゃうと思うんで。常に『この試合で終わりだ』と思いながらやります。
 千裕君に負けて『橋本悟は終わったな』と思ってる人もいると思うんで、この無法島GPで一番見せたいのは『俺はまだ終わってねえぞ!』っていうところですよ。
 第一試合なんで、イベントの火付け役なのは分かってます。打ち合って、面白い試合を見せるんで、ぜひ、2月11日は、大田区総合体育館に来てください」
(了)

<2・11無法島GPの橋本悟> 

宣言通り、前に出て、打ち合いに持ち込もうとする橋本。だが、対戦相手のバズーカは長いリーチと得意な蹴りで巧みに距離を取り、左右にスイッチして蹴りを使い分けて橋本を懐まで入れさせない。3Rには、ダメージの見える橋本に対してバズーカがパンチでダウンを奪うと、挽回を狙って猛然と前に出る橋本を突き放して終了。判定はバズーカだったが、熱い戦いで「終わってねえぞ!」という気持ちを見せた橋本に惜しみない拍手が送られた。

橋本悟はYouTube「さとちゃんねる」を持っていた!! 本人によるKNOCKOUT、バズーカ巧樹戦の振り返りをどうぞ! ↓

#なぜ 、橋本道場は強い選手を次々と輩出するのか。宮元啓介と橋本悟の対談をどうぞ。2018年の掲載当時はあまりアクセス数は伸びなかったが、二人がREBELS・KNOCKOUTのトップ戦線で活躍したことでアクセス数は急上昇↗↗ 2018年よりも2019年の方がアクセス数が多かった。


次回大会の情報は

REBELS公式ホームページ

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