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【にじさんじ】ANYCOLOR上場から感じた違和感/ホロライブとの対比

ANYCOLOR社が上場承認を受けましたね。普段僕はにじさんじの配信を見ていないのでほぼ全て憶測と印象からの記事になりますが、普段見ていない方が客観的に見れる部分もあるかと思います。

途中引用で〇Pといったページ表記がありますが、ここはPDF上でのページ数で記載しています。

■意外なタイミング

もしかすると普段からにじさんじを追っている人からすると既にわかっていたタイミングなのかもしれませんが、僕の印象ではもう少し後だと思っていました。というのもまだそこまでの売上と利益が出ていると思っていなかった為です。

こちらの記事でカバー社の今の売上と利益の推測を書いていて、約30億の売上と予測していましたがこれももっと上振れている可能性は高いです。グッズからの収益が思った以上に大きい様です。

話を戻して、タイミングですが思ったよりも早いと感じたものの、上場できる条件下にあるのであれば確かにこのタイミングだろうなとも感じました。というのは現在のVTUBER業界の盛り上がりというのが半年後、1年後どうなっているか様々なケースが考えられるからです。何かの理由でにじさんじが今ほどの市場での影響度を保てていないケースもありますし、市場自体が思ったより盛り上がらなかったというケースもあります。けれど現在は少なくとも盛り上がっている最中のタイミングで、にじさんじもVTUBERの市場の中ではホロライブと並んで間違いなくトップブランドで高い評価地点にあります。

ANYCOLORは設立2017年なのでかなり早い上場です。上場には約3年ほどの準備期間がいる事から設立当初から上場を見据えた上での起業だったと思われます。

この部分でそもそもの会社としての方針がホロライブのカバー株式会社とは大きく異なる印象を受けます。


■有価証券報告書

https://www.jpx.co.jp/listing/stocks/new/nlsgeu000006da6d-att/06ANYCOLOR-1s.pdf

「ANYCOLOR 新規上場申請のための有価証券報告書」

上場の際に公開された書類です。
一通り目を通しましたが151ページあるのでピックアップして書いていきます。

2021/4 売上高76億円、経常利益14億円
2022/1(Q3時点) 売上高101億円、経常利益31億円

表にはありませんが直近の3クォーター目で101億の31億なので単純計算で140億の45億着地目安くらいです。

利益率が30%という高い数値と、残しているキャッシュの多さが特徴です。このキャッシュの多さの理由としては23Pで成長途中にある為内部留保を拡充させる必要があるという名目で説明がなされています。

近しい業態で上場しているUUUMと比較するとよくわかります。

UUUM 3Q 2022
売上高:169億3200万円
営業利益:5億9400万円(前年同期比+27.7%)
経常利益:5億9700万円(同+25.9%)

利益率で3.5%なのでざっくりで10倍ほど違います。
どういった部分にコストがかかっているや、ビジネスモデル、組織体制にもよりますが同じYOUTUBEを主ステージとした事業でこれだけの差が出ているのは凄い点です。

この営業利益率については13Pでも別途触れられています。

要約するとランニングコストとして固定でかかるコストは少なく、今よりも利益率は高くなる可能性も示唆されています。投資コストが増えれば悪化しますがカバー社の様にメタバース事業の様な大型プロジェクトに関する記述は見受けられませんでした。

個人的にはこの利益率であればもう少し所属ライバーに対する還元や条件緩和などがあっても良いのかなと感じました。

14P

2021年4月期売上高のうち、約30%はTOP10のVTuberにより獲得された収益であり、約50%はTOP25のVTuberにより獲得された収益となっております。こうした収益の分散状況から、当社は、仮に特定のVTuberが引退をすることになったとしても収益基盤への影響が限定的であり、当社事業の継続性・安定性は高いと考えております。

売上の50%は上位25人のVTUBERで構成されていて、そのうち10人で30%の売上が為されているという記述です。
またその後に続く記述で、VTUBER志望者の多さから経営安定性が高いと考えていますという内容になっています。

こういった記述があるという事は、この部分をANYCOLORはリスクとしても認識しているから出てくる部分だと思われます。

この記述から僕が感じるポイントは以下の2点です。

・売上が上がるVTUBERは育つまでに期間を必要とする
・売上が取れるまでの時間を含む育成コストと、育成後の引退及び活動低下リスクは大きな懸念事項
・VTUBER自体が増えて新人育成が以前ほど効率的には行えない

例えば現在のにじさんじのトップにいる葛葉さんですが、現在の様な人気になるまでには2年ほどの時間がかかっています。また、月ノ美兎さんや不破湊さんの様な人気ライバーも人が媒介となって活動している以上何かしらの不測の事態の可能性などは拭えないと言えます。これは事業リスクに直結します。

にじさんじは現状多くのライバーが自由に、ある意味個人に活動スタイルを任せる印象が強いですが、上記では後半部分で今後は運営側でプロデュースする方向性を強化すると記載されています。また、女性VTUBERよりも男性VTUBERを優先していく事も記述があります。これは現状の数字を見ればよくわかる部分ですが、所属する女性VTUBERはこうハッキリ書かれると不安に思う部分はあるでしょう。


領域ごと売上

わかりやすく書くとこんな感じでしょうか
YOUTUBE等経由(スパチャ、広告、メンバーシップ)の売上:22億
グッズやボイス等関連売上:47億
チケット等イベント売上:7億
案件など:18億
その他:5億

グッズ、コンテンツの売上の割合が大きい事にまず目が行きますが、この事から前述した人気のある男性VTUBERに力を入れる事が収益性としては最も効率が良いだろうという事が想像できます。

・特に重要なリスク事項

要約するとYOUTUBEを主戦場にしている為、YOUTUBEの状況如何によって売上が自社でコントロールできずに悪化する可能性は常にある、という内容です。それに対しては、ただしその可能性は現状高くない認識なので、具体的な手を打っているという様な記述は確認できません。後半部分でグッズ等の売上比率が高い為、YOUTUBEに依存しなくても大丈夫という記載があります。これは運営がどの程度本気でそう書いているかは不明です。
外部に向けた説明の為という観点での記述であれば手を打ってあるとも考えられますが、手を打っているのであればそれを書くと思うのでまだ何か具体的な実行に移している施策はないのかなと感じました。

要約すると人気のあるVTUBER経由での売上がある事は大きなリスクとして認識している、特に根拠はないがそれが起きる可能性は少ない認識でいる。また、契約上所属ライバーが独立活動する事は出来ない契約内容になっている為引退するリスクは少ないと考えている、というのが後半部です。この後半部分については後程別視点でも書きます。
ここは前述した下記の部分と矛盾している部分でもあります。

2021年4月期売上高のうち、約30%はTOP10のVTuberにより獲得された収益であり、約50%はTOP25のVTuberにより獲得された収益となっております。こうした収益の分散状況から、当社は、仮に特定のVTuberが引退をすることになったとしても収益基盤への影響が限定的であり、当社事業の継続性・安定性は高いと考えております。

上記では人気ライバーによる収益は分散しているので大丈夫です、と書いていますが特に重要なリスク部分では人気ライバーの引退などで事業が大きな影響を受ける可能性があると書かれています。

矛盾点の揚げ足を取るのが目的ではなく、単純に人気ライバーの引退、活動停止によるダメージは大きいというのがANYCOLR社の認識なのだと思われます。

要約すると、配信中の事故からの炎上や権利問題などでライバーの活動が意図せず停止に追い込まれる可能性、訴訟に発展する可能性、そういったものは高いリスクとしてあるが、起きる可能性は少ないと認識している、という感じです。

この辺も揚げ足を取る様ですが、先日のローレンさんの問題などが起きたばかりでその影響の余波も受けている中では、起きる可能性が少ないとは言えないところではあります。

以降23P目まで幾つかのリスク事項について説明があります。

ライバーとの契約体系ですね。見る限りホロライブと同じで、売上はまずANYCOLR社に入り、そこからライバーに渡すべき部分を振り込むという流れですね。
この辺は別記事でも触れているものがあるのでリンクしておきます。

上記記事でも触れているストックオプション部分

全部載せると画面支配率が高くなるので最後の9回目のみをキャプチャしています。当たり前ですが、見る限りライバーが付与対象にはなっていません。これはANYCOLORとライバーは雇用関係ではなく、外部業務委託関係の為です。9回目で付与対象となっている「当社使用人」というのは従業員を指します。上記記事でも書いていますが、ストックオプション付与の為の雇用契約を結んでいない限りライバーで付与対象になっている事はないと思われます。
この辺りは葛葉さんや月ノ美兎さんといった創生時期からの貢献者はどうなっているのかというのは気になる部分ですが。


長くなりましたが有価証券報告書からのピックアップは以上になります。


■思ったよりリスクが多い割に監督しきれていない

先日のローレンさんの件もそうですね、話し合いの結果どういう着地になったかは不明ですが不問にする為の”条件を呑んだ”という様な事は描かれていました。相手先企業によっては非常に大きなリスクに発展していた可能性があります。

その直後の上場承認の翌日にもホロライブの猫又おかゆさんと権利問題でハッとする出来事が起きました。

これも今のところ表立ってはいませんが、非常にリスク度合いの高い問題です。

少し裏を読むとこれだけ危険な部分であるのにこれだけ頻発するのは、最終的な責任部分と損害賠償はライバーに行く契約になっているのだろうと推測する事も出来ます。

万が一の時には業務委託契約の違反事項として、契約打ち切り・解除と損失の支払いが出来る様になっていると思われます。これは通常の法人でも業務委託契約の場合大体似たようなものだからです。

特にライバーは法務関連のノウハウが無い状態で、且つ選ばれる側として最初契約をする為ANYCOLOR側に優位になる契約書になっているでしょう。これはこの先も秘密保持契約などで表に出る可能性は少ないですが、慈善事業でもないので基本的にはそうするはずです。


■メリッサ・キンレンカ

引退者が目立ちますね。特に直近で引退発表したメリッサさんの件は運営とVTUBERの権利部分での社会的な問題として大きいなとも感じます。配信を追っていた訳ではないのでウェブ上で集めた情報を基に整理すると下記の様な感じかと思われます。

通常、曲の権利というのは作った人に帰属しますが、メリッサ・キンレンカというVTUBERが作ったものの権利は全てANYCOLORに帰属するという契約体系になっていると思われます。

これはアーティストであれば自身の財産を活動で築けないという事になります。

こちらのまとめ記事で詳しく書いてあるので詳細はこちらで確認頂ければと思います。


ここまでをまとめると、ANYCOLOR社としては自社の収益を守る為にライバー優位になる契約や体制は基本的には行っていない印象が強いです。これは前述した有価証券報告書のこの記載からもわかります。

上記記述と、メリッサ・キンレンカさんの引退経緯は非常に綺麗にリンクしています。言い換えれば活動ライバーは独立という選択肢を持つ事は困難で、全て捨てるか続けるかの2択しかないという意味になります。

ホロライブ等もこの方針は取っているのでこのあたりは今後のVTUBRと運営の関係性の問題としてまた顕在化してくる事はありそうです。

ただ、そうは言ってもこうハッキリと明言されると、普段運営ではなくVTUBERを応援している僕の様なファン側としてはモヤモヤとした何かが生まれてしまいます。

昨日にじさんじの郡道美玲さんがサブ垢でツイートしていたものです。タイミング的にもメリッサさん絡みからの運営に対する思いの部分かと思います。

内容的に、契約が切れたら如何なる場合に於いても活動時の名前やそれを自身がやっていた事も明かしたり使用してはならない、という契約内容になっているのだろうというのが読み取れます。

こういう点でもライバーは独立という選択肢を持つ事は困難で、全て捨てるか続けるかの2択しかない事と、それをANYCOLORが方針として掲げているという事になります。


■僕が感じた違和感

僕が感じた違和感というのは、ANYCOLR社が良い意味でも悪い意味でもよくある普通の企業だった事です。今回の上場報告書からはVTUBER業界に関する夢や、業界の社会的価値向上、所属するVTUBER(ライバー)の地位向上や想いの様なものは感じられませんでした。

これまで多くの企業の上場時報告書や決算書を見てきましたが、決算書などにはどうしてもその会社の色や匂いといったものが隠し切れずに出てしまう事が多いです。

会社として収益を維持して守る為のリスク対策はあって然るべきです。けれど今回見えてきたものは、VTUBERを商品として淡泊に扱うというイメージでした。

違和感というよりは、何だか思っていたイメージと違うな・・・
という感じでしょうか。

関係性として、VTUBERと運営は芸能事務所と所属タレントの関係性が近いと思います。芸能事務所の場合、所属タレントが売上を上げる為のサポートやマネジメント、営業といった部分は僕が見る限りVTUBERの運営よりも手厚いと感じます。
前述したUUUMの利益率もそうですし、過去の吉本興業の利益率からもサポートコストに資金を割いています。

吉本興業 利益配分

上場廃止しているので2008年のものになりますが。
売上で501億円、経常利益で57億です。
利益率では11%です。
他に上場している芸能事務所としてホリプロも確認してみました。

利益率比較
ANYCOLOR:31%
UUUM:3.5%
吉本興業:11%
ホリプロ:11%

創業からの期間が短いので今後どうなるかという部分は大きいですが、ANYCOLORの営業利益率はやはり飛び抜けて高いです。本来は利益率は高いに越したことはないのですが、ビジネスモデルによって適正範囲の利益率を超えると問題もあります。

得ている利益の一部をもっと別の方向にまわす事で、もっと良質な経営が維持できるはずが利益率を高く設定しすぎた事で例えば商品クオリティが下がったりする事で顧客離れが起きたり、といった感じです。

これは会社の方針や、代表がどの様に考えているかで企業によって大きく変わる部分です。


■田角陸

ANYCOLORの代表の田角さんのインタビュー記事です。

幾つかの部分を引用します。

バーチャルYouTuberの事業をはじめる以前に、4つの事業を立ち上げたのですが、失敗しました。出資を受けることができず、2人いた仲間も辞めて、自分だけが残って。

じつは、バーチャルYouTuberで勝負をしたのも、短期集中に向いている事業だと思ったから。

この先、バーチャルYouTuberもいつまで伸び続けるかわからないですよね。ただ、それでいいと思ってるんです。次に「来る」と思った領域があったら、そこにどんどん張っていく。なんせ僕は短期集中タイプなので(笑)

特に最後の部分でしょうか。元々VTUBER事業は儲かる可能性があると思ったのが始めた理由で、この先もっと良い分野があればVTUBERに固執せずにそちらに乗り換えていく、という内容です。

2018年の記事なので今はどのように変化しているかわかりませんが、有価証券報告書を見る限りではそんなに変わってない様に感じました。

これは個人的な偏見になるかもしれないのですが、今20代~30代前半の若い起業家の方は非常にドライな考えの人が多い印象があります。これはあくまで僕が関わってきた起業家の方にそういう方が多かったというだけですが。ただ、今40代50代の社長と比べると、起業してその法人をバイアウトして一儲けしたいという人の割合は多いと思いました。

事業そのものに熱量があるというよりは、会社経営をシミュレーションゲームを行う感覚でやっているという感じです。もちろんそうじゃない方も多く居ました。僕が田角さんに感じたのは前者の方の印象です。
これはホロライブのカバー社の谷郷さんには感じない部分です。YAGOOに関してはVTUBER事業そのものや、メタバースといった事業に対する熱量、所属するVTUBERへの思い入れ等、事業全体に対する思いが感じられます。
会社としての体裁を保つ為に見ていて「ん?」と思うような部分は結構ありますが田角さんとは思いの部分では対照的とも言える印象があります。

ANYCOLORの社員として見るか、VTUBERとして見るか、ファンとして見るか、という部分でこれはどれが良いのかという判断は変わります。そしてこれはどこに寄せるのかというバランスの問題でもあります。正解がある訳ではなく、決めの問題です。
また、これは田角さんが良い人悪い人という問題ではなく、どういう経営方針を持っているのかという話でもあります。こういう経営方針だから悪い人だ、とはなりません。


■終わりに

色々書いてきましたが基本的には僕が抱いた印象なので、どこまでいっても憶測になります。僕がVTUBERのファンなのでVTUBERを擁護したいという視点の方が強いのもあります。
このVTUBERの事業というのは現在成長過程の市場です。急成長過程にある内は多少の綻びも無視しながら拡大する事も可能です。どちらかと言えば勢いを殺さない方が重要なシーンの方が多いです。その後のステージになると運営、VTUBERが二人三脚の体制を取れるかどうかで存続が決まってくるのではないかなと思います。そうでないとお金を落とす顧客側が納得できるコンテンツを継続させる事が難しいと感じます。



追記 2022年5月4日

■商標登録に見る管理体制

これはちょっと驚いたのですが、ANYCOLORの様なファンビジネスを展開している企業の場合商標登録は非常に重要です。けれど殆どの所属ライバーの名前が商標登録されていませんでした。

次の記事の調べ物でホロライブ、カバー株式会社の取得している特許は何があるのかなと調べていました。

このサイトで特許や商標などの検索ができます。
そこで特許検索のついでにカバー社の取得している商標を見て、「そう言えばにじさんじのANYCOLR社はどうだろう」と思って検索しました。検索結果は下記です。

ANYCOLR社(所属VTUBER:約150名)
商標29件

カバー社(所属VTUBER:76名)
商標91件

例えば一部抜粋するとカバー社はこんな感じです。

所属VTUBERの名前や、holoxの様なグループ名も綺麗に全て登録されています。



ANYCOLOR社はこんな感じです。
少ないので全て載せます。

ちょっとびっくりですよね。
僕ももしかして他の関連会社などで登録しているのかと思って、直接VTUBERの名前で何人か検索しましたがありませんでした。

例えばにじさんじのTOPの葛葉さんで調べても

この2件のみで葛葉さんの登録はありません。他のライバーも同様で、月ノ美兎さんを含む5名だけが何故か登録されていて、剣持さんに関してはなぜか名称が「必勝」という謎の登録をされていました。

商標登録がどうして重要かというのはこのあたりのリンクを参照して頂ければと思います。

ざっくりポイントをかいつまむと以下の様になります。

①同じ商標や似ている商標が、他人に勝手に使われてしまった場合、商標登録をしていないと、やめさせることが非常に難しくなる

②商標を他人に商標登録されるリスクがある

③商標権を侵害するリスクがある


例えばですが、にじさんじのリゼ・ヘルエスタさんの商標を関係のない他者が取得してしまった場合、にじさんじのリゼ・ヘルエスタさんに「リゼ・ヘルエスタの名称はうちの商標だから使わないで」と正当に主張できてしまいます。

この場合リゼ・ヘルエスタさんの名前を使って活動を続ける際に、取得者に対して商標使用料を支払っていく等のデメリットが生じたり、最悪名前を使わせないようにする事も可能です。つまり合法的にリゼ・ヘルエスタさんの活動を停止させる事も可能です。

悪意ある人が気付けば「葛葉」や人気のあるライバーさんの商標を取得して、それで難癖をつけて最終的に協議の場で何か要求する事も可能です。


本記事でも中盤で下記の様に書きましたが

■思ったよりリスクが多い割に監督しきれていない
先日のローレンさんの件もそうですね、話し合いの結果どういう着地になったかは不明ですが不問にする為の”条件を呑んだ”という様な事は描かれていました。相手先企業によっては非常に大きなリスクに発展していた可能性があります。
その直後の上場承認の翌日にもホロライブの猫又おかゆさんと権利問題でハッとする出来事が起きました。

思った以上に管理体制はずさんを極めている可能性があるかもしれないです。キャラクタービジネスで商法登録をしないでここまで来るのは、意図的でもない限り、個人的には正気とは思えません。


この、商標登録ですがVTUBERの場合こんな側面でも企業としてはリスク対策となります。

ホロライブの潤羽るしあさんは諸々あって活動停止となりました。
けれどカバー社で商標を保有維持する事で、みけねこさんは潤羽るしあの名前を使って活動する事が商標的にも出来ません。

けれどもし商標登録がなければ契約上の問題でみけねこさんは使えなかったとしても、他の第三者が商標権を取得してそれをみけねこさんに使わせるという事は可能かと思います。

本記事でも触れた、メリッサ・キンレンカさんも変な話卒業後に第三者に商標を取得させてメリッサ・キンレンカとして活動するという事が、もしかしたら契約書の内容如何によっては正当に出来てしまう可能性がありそうです。

こういった登録などを管轄する部門というのが、キャラクタービジネスを行う企業では誰かしら担当者がついて然るべきなのですが、ANYCOLR社はこの状況を見る限り不在なのかもしれません。
所属ライバーはその存在自体がANYCOLR社の財産かと思いますが、その財産の権利を放棄していて、欲しい人はどうぞ早い者勝ちですよ的な状況だと思います。

こういった切り抜きもあがっているので多くの人が知っている状況なのかと思いますが、どうなのでしょうか。僕が上記で記載しているリスクについても剣持さん本人が語っています。


少し参考になりそうなサイトがありましたので引用します。

人名等についての商標登録の要件となる商標法の第4条第1項第8号では、以下のように定められています。
——-
他人の肖像又は他人の氏名若しくは名称若しくは著名な雅号、芸名若しくは筆名若しくはこれらの著名な略称を含む商標(その他人の承諾を得ているものを除く。)
——-
つまり、『本人の承諾を得た上であれば』、他人の名前で商標登録を受けることができるのです。
そのため、著名人が集まる芸能プロダクションなどでは、所属するタレントやアイドルの芸名を、本人の承諾を得た上で商標登録出願することは、一般的に行われている事例です。
芸能人が所属する事務所やプロダクションを移籍する、またはフリーになった場合に、以前使用していた芸名で芸能活動ができなくなるようなケースでは、こうした芸名の商標登録に関する権利関係のトラブルが発生していることも考えられます。

海特許事務所

VTUBERの名前を商標登録するというのは、この観点と同じでしょう。
また、商標法の第4条第1項第8号の”本人の承諾を得られていれば”という点も興味深い点です。

また、商標登録にはある程度のコストが発生します。取得だけでなく一定期間分の登録維持費的なものがかかります。

どこに依頼するのか、自社でやるのかによっても金額感は大きく変わりますがざっと概算で1件当たり15万ほどで幾つかある登録区分のどれとどれに申請するのかでプラスαでかかるというイメージです。

区分は45種類あり、どの区分で登録されたかによっても効果が異なってきます。カバー社の場合は基本的に3種類の区分(9番、35番、41番)で統一されて登録または申請されています。
この3区分で1件当たり登録申請+5年維持の料金を払って15万円で算出したとして、それをANYCOLOR社で当てはめてみるとこのくらいのコストがかかりそうです。
約150名分登録:約2200万円
登録者数上位70名の場合:約1050万円
登録者数上位30名の場合:約450万円
区分を多く網羅しようとすれば乗算的に費用が増えるのでカバー社に関しても関係性が高くなりそうな9,35,41の3つに絞っているのかもしれません。

また、細かく確認していくと2021年12月以降の新規申請分からは更に9つの区分を追加で登録する様になっています。3,9,14,16,18,21,24,25,26,35,41,43の12区分です。追加された区分詳細を見てみるとグッズ関連の販売に纏わるものが多いので、これはカバー社の方でもグッズ収益に関する重要性が上がりそれに伴って追加申請される様になったのかもしれません。どの区分で登録するかは企業ごとの戦略や方針によって大きく変わりそうな印象です。

にじさんじに関しても登録者数のギャップがライバー毎にあるので重要性の高い人のみ登録するという折衷案でも良いかもしれないですね。また、まだ規模感の大きくない事務所であればこの費用は痛い出費になるので、例えば当該のVTUBERは一定の影響力を持ち始めたら等かもしれません。


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