![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/79130053/rectangle_large_type_2_d0dc2032b6bdd285315ae40d23c7d7b3.jpeg?width=1200)
持続可能とは何億年も続いてきたこと
外はすでに薄暗く、トントントンとまな板を弾く音と女性たちの笑い声が道路に響きわたる。なんだろう、ハーブに魚かな?いい匂いを追いかけていくとポツンと電球が一つ灯った台所があった。
道路に開けていて中の様子が丸見えだ。女性が6人ほど楽しそうに料理をしている。お店ではないので共同のキッチンなのか、それにしても薄暗いなか器用に作業をしてるなぁと思って眺めていた。
ここはタイ北部チェンマイ山岳にある標高1,300mにある集落。200年ほど前に珈琲と茶畑の開拓をした人々が代々住んでいる。伝統的な高床式木造が山の斜面沿いに立ち並び、豊かな湿度に包まれた植物が敷地を覆いこむ。
沖縄だと台風から守るため家同士がぎゅっと集まる風景を思い浮かべるが、ここでは山の傾斜に合わせて家がスキップするように河の上や岩の上に建っていて、村全体が迷路のような不思議さを醸していた。
そもそもこの村に来たのはついでで、当初の目的はチェンマイに暮らすタイ人建築家に会いにきたのだ。以前彼の設計した小さな宿に泊まったことがあり、土着的な感性に感銘を受け、話を伺いたいと事務所に電話をした。するとあっさりとNO (笑)。
まぁ行けば会えるはずだと、チェンマイへ飛ぶ。
事務所兼リゾートホテルに到着しエントランスを抜けると、おおおー。低く伸びた軒先がぐるっと中庭を囲む。列柱がリズムよく空間を刻み、奥へ奥へと視線が抜けていくと、半屋外のレセプションに着く。
いいなぁ。「サワディーカー(タイ語の挨拶)
僕はカンボジアからやってきました。Mr.オンアーに会えますか。」
「確認します。プライベート図書館でお待ちください。」
素晴らしい蔵書がずらっ。目の前にはオフィスのドア。チムドンドン
さて何から話そう。すると、、、
「ソーリーミスター、彼はものすごいシャイな方。対面は難しいです。」
えええー!!残念ながら会えず(泣) 。
けれど、彼の建築を体験したことがきっかけで山岳の集落に向かうことになったのだ。
話を集落へもどそう。宿を探していると、若い青年が嬉しそうに迎えいれてくれ、家に泊めてくれることとなった。ひと通り村を案内してもらい山の方へ登ると立派な滝がある。
話を聞くと、この村の電力はすべて山からの水力発電でまかなっているそうだ。宿へもどり夕飯の支度をする。
土間にカマド、薪をくべる。屋内で火をたくので屋根裏がススで真っ黒だ。部屋には小さな電球が一つ、山からのエネルギーは皆で大切に使う。
自然エネルギーとはなんだろう?
僕たちの言う持続可能な社会とは一つの価値観でしかないのかもしれない。
この村でのそれは一人一人、持続可能な身体を伴い、持続可能な知恵と知識を伴い、持続可能な精神と感謝の心を伴うものだった。
蛙の声が響くころ、あたりはすっかり暗くなり、夜が夜らしい時間が流れている。
豊かだな~、この先もかわらずあってほしい。僕は電気を使うのを躊躇しつつ早めの寝床についた。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?