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ブリューパブへようこそ!クラフトビールのコト消費戦略③【2021年2月1日】

2月になりました。そういえば父の命日。二十回忌?
緊急事態宣言も延長になりそうですが、おかげ様でクラウドファンディングは順調にご支援頂いております。
ありがとうございます!

さて、いつの間にか3部構成になってしまったセミナーのプレゼンシリーズも今回で最後です。
前回はふんわりした事例を紹介したんですが、ここからは具体的な数字のお話に。

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ブリューパブは飲食業ですってさんざん説明した後なので分かってもらえるかと思いますが、売上で言うと飲食部門が70%くらいになると思います。
ビール単体では30%くらいかな。
ビールだけだとちっとも儲からない規模です。

弊社に相談にくる方の中には、ビールを作ることが目標になってしまっている方が今でも多いです。
発泡酒免許は年間6000Lの製造販売が出来ないと許可が下りませんが、そもそも6000L売るだけでは自分ひとりの収入もままならない。
雇用を生み、成長戦略を目指すために何をするか。
どのようにして作るのか、よりもどうやって売るのかが重要です。そういう意味でも、製造業と飲食業の融合、極端な製販一体が必要と。

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さらにもうちょい踏み込んで。
都市型のブリューパブにおいては、地代も高いので設備スペースが大きすぎるとコストがかかりすぎます。なので、効率よく売れる分を、効率よく作れるだけの設備投資に収めるようにしましょう。
具体的には年間15,000Lの製造販売が可能なブリューパブ、毎週1回仕込くらいの負担で年間50回、1ロット300Lを仕込める直火設備が一つの基準。
一日50Lのビールを販売するのは小さな飲食店ではなかなかハードルが高い。客席も30席以上は確保したいところ。
店舗と醸造設備、免許が下りるまでの運転資金まで考えると最低3000万円は初期投資で用意すべきでしょう。
飲食店の個人の開業としては融資をとれるギリギリラインと思います。
月商400~500万円の飲食店はそれなりに忙しいので、人も雇わないと行けませんし、飲食未経験の方は様々なマネジメントの課題も出てくる。
醸造設備は1ロットのサイズを大きくすれば、もちろん生産効率は良くなる。
ただし、初期投資がかなり大きくなります。
とはいえ、小さすぎれば仕込回数が多くなって、今度は生産効率が悪い上、記帳業務などの煩雑な事務作業がめちゃくちゃ手間がかかるようになります。
ブリューパブは現地で作って現地で消費するからこそコストを削減できます。
フードマイレージの観点から言っても、要冷蔵の液体輸送の完成したビールと比べて4分の1の重量で運ばれる原料の方が、物流コストも環境コストも少ないはず。
ブリューパブで作ったビールを遠方に配送して消費してもらってはコストが合わなくなります。
あとは、飲食店の課題である人材不足を、醸造所の求人不足が補ってくれるというメリットが意外と大きい。
判断するべきポイントはいくつもありますが、バランス感覚が重要ということです。

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ブリューパブは消費者、エンドユーザーと直接コミュニケーションが取れるのが強み。
コト消費やトキ消費のようなファンやコミュニティとのつながりが大切な戦略は、この図のように回りまわってモノ消費としてのプロダクトのクオリティアップにも必ずつながっていくはず。
クラフトビールは一部の熱狂的なファンをターゲットとした嗜好性の強い商品がどうしても注目されがちです。
その結果、一般の消費者の好みとは乖離してしまって、一過性のブームになるということもよく見られます。これは実にもったいないこと。
ブリューパブでもっとクラフトビールのことを知って頂いて、お客様からももっとフィードバックを得られるサイクルを回すのが重要。

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ここで宣伝。
ビール製造のデータと、お客様からのフィードバックのデータを活用するために設立された一般社団法人ALFHA。
現段階では、小規模醸造所向けの製造管理、記帳業務の支援、酒税算出と申告をサポートするシステムにとどまってるけど、今後これにユーザー評価を紐づけすることで、より高品質でクリエイティブなクラフトビール製造を可能にしたい。
特にブリューパブのようにユーザー評価を集めやすい環境で役に立つはず。

スライド33最後にまとめ。

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まとめにはやっぱりコロナの話を避けて通れず。
飲食業も、それ単体では安定して利益を上げるのが難しい1年でした。
逆に製造業もやっててよかったねと。というお話。

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最後は2020年の夏ごろに読んだ、フードテック革命からの引用をご紹介。

コロナの間、私も従業員もお客様も不自由な思いをしました。
ご飯を食べたりビールを飲んだりすること自体や、その時間の使い方そのものを今まで以上に大事にしたいという価値観、皆さんも感じられませんでした?
ブリューパブを経営する中でも、ビールを作れることや、お客様が来て下さること、美味しかった、楽しかったといって、また来て下さることの有難さを改めて考える1年だったなと。

Well-being=より良く生きる、ためにクラフトビールができることは、ただ「おいしい」ことや「便利で効率的」なことだけではなく、もっと新しい価値に気付いてもらうことではないか。
この本で紹介されている新しい価値は、「発見する喜び」「快適性」「コミュニティの育み」「親しみ」「実験」「協力」「信頼」「安心」「新しさ」「参加」「個性」「気遣い」を挙げてる。主に精神的な、無形な価値観。
そしてそれを実現していくために、クラフトビールやブリューパブにもフードテック、ITやDXは必ず必要になってくる。
これまでのような大量生産大量消費を前提としたクラフトビールではなく、私たちにとって本当に必要な価値に合わせたクラフトビールを、ブリューパブを通じて広げていきたい。

というような締めくくりでセミナーをまとめました。

この最後のまとめは言いたかっただけって感じで、クラフトビールセミナーとして正しいまとめ方ではなかったかもしれません。笑
ただ、クラフトビールを造る仕事とか、販売する仕事って基本的にガテンでしんどくて大変で儲からない。さらにアナログローテクがいつまでもまかり通ってしまってて、それがむしろ美徳みたいなところもあります。

まぁ不便を買う、みたいな価値もあるんでしょうけどね。ホテルのフロントでスマホ取り上げられるみたいなね。
ただ、もっと本質的にクラフトビールや飲食の産業としての付加価値や生産性を高める必要性は絶対にあるなと。じゃないとこれ以上は広がらん。
単純に規模を大きくしてマス化すべきというのと全く逆のベクトルで生産性を上げるというのがクラフトビールにも飲食にも必要な時代になってきました。
まだ出遅れたと言うには早すぎるけど、変われないなら先はないとヒシヒシと感じてます。日本国内だけで見ても感じるけど、世界で見ても日本は全然遅いので普通に危機感。美味しいとか安心安全、便利、とかいうのでさえもね。

と今日はこれくらいに。

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