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2040年のコロナ世代たちへ

コロナ世代

 今年度の大卒求人倍率が昨年度の1.83から1.53(6月時点)に下がった。これは2008年のリーマンショック後を超える急激な下げ幅だ。1年上の先輩が売り手市場の中で就職を決めたことを考えると当事者はやりきれない思いだろう。この国では学校を卒業するタイミングで人生がほぼ決まってしまう。日本企業の頑迷な新卒信仰は一度卒業してしまった学生を評価対象とせず、たとえ第二新卒枠で応募があっても新卒より劣るものと見做すからだ。さらにコロナ禍が長引けばその第二新卒枠も無くなり一般の社会人と混ざって中途採用市場で勝負しなければならなくなる。新卒で不本意な就職をした人が、その不本意な職歴をアピールして戦わなければならないということだ。結局それは結婚、育児、介護など、その後のライフイベント全般にも影響を与え、生涯にわたって不本意な人生を歩むことになる。ではそのコロナ世代が直面するであろう未来をこれから見ていこう。

失われた50年

《日本の経済成長の推移》

 日本のGDPは2000年頃まで成長を続け、その後は一進一退を繰り返した。90年台半ばに立て続けにおこなわれた財政出動により91年のバブル崩壊後も一定の経済成長は維持したものの、98年の大型財政出動を最後に政府が緊縮財政に転じたためだ。この長い停滞期のことを「失われた〇〇年」と表現する。当初はバブル崩壊から銀行の不良債権処理がほぼ完了した2000年初頭頃までを指して失われた10年と言っていたが、その後も経済成長は低迷したため日本の失われた期間は今日に至るまで延長を繰り返している。

コロナショック

《2020年4-6月期GDP:27.8%減》

 さらに今回のコロナ禍により日本の4 - 6月期のGDPはマイナス27.8%という歴史的な下げ幅を記録した。ここ数年は堅調に推移していた経済成長もこれでまた頭打ちとなるだろう。政府は落ち込んだ経済と支持率を立て直そうと躍起だが、現時点で有効な打開策は示せていない。このままいけば日本が失う年数は30年から40年に、そして50年にと延長されていくことになるだろう。そんな悲観的な予測は信じたくないだろうが、実際この先、日本経済が回復することを示す材料は乏しい。

国内市場の縮小

《新型コロナ関連倒産(休廃業は含まず)》

 そう言える根拠の1つが今回のコロナ禍による企業倒産件数の増加だ。売上が減少するだけならまだしも倒産となればそこで働いていた労働者が失業し、同時に雇用も失われることになる。これが10年前のリーマンショックとは決定的に違うところだ。企業を倒産に追いやるのは簡単だが、再建させるには長い年月がかかる。その負の影響は今後の景気回復にも大きな足枷となるだろう。

雇用の減少

《パートタイムの有効求人倍率》

 また仮に倒産まで至らなくても企業は過剰になった人員を何らかの方法によって整理しなければならない。政府の雇用調整助成金はいつまで継続されるか不透明な上に、コロナ禍がいつ収束するのか見通しが立たないからだ。とはいえ正社員をそう簡単に解雇することはできない。そこで選別の対象となるのが非正規雇用の労働者だ。昨今のパートタイマーの有効求人倍率の低下が如実にその実情を表している。

非正規雇用が5割超

《正規雇用と非正規雇用の比率》

 その非正規雇用の割合も年々増加しており、現在は全労働者の4割程度が非正規雇用という状況になっている。日本の企業はバブル崩壊後の景気低迷の期間に雇用調整が難しい正社員を非正規雇用に置き換えることで大幅な景気の変動にも耐え得るよう体質改善を図ってきたからだ。今回のコロナ禍でその傾向はさらに強まることになるだろう。将来的に全労働者の半数以上が非正規雇用になるのは、もはや時間の問題かもしれない。

AI化

《全世界のAI関連企業の売上高の推移予想》

 企業の採用についてもう1つ大きな影響を与えそうなのがAIの普及だ。今後は事務的な作業やクルマの自動運転など様々な仕事がAI化され、そこで働いていた人たちが失業する時代がやって来る。90年台後半から2000年初頭にかけてのIT化の時代には、むしろ新たな仕事が増える場面も少なからずあったが、AI化は確実に雇用を減少させ、多くの仕事がAIに置き換わると予想されている。

超高齢社会

《2040年の人口動態予測》

 また雇用の減少以上に深刻なのが人口の高齢化だ。日本は2007年に65歳以上の高齢者が21%を超え超高齢社会を迎えたが、その後もその割合は増え続け、2019年9月時点の高齢化率は28.4%となった。本来であれば15年ほど前に第三次ベビーブームが到来して人口減少に歯止めがかかるはずだったが、その世代が社会に出る頃に不況が訪れ、多くの人が結婚や出産を諦めたために日本の人口動態は高齢者が多く子供が少ない逆ピラミッドの形が固定化されてしまった。

年金支給開始年齢は70歳に

《年金加入者と受給者の割合》

 超高齢社会は我々が暮らす社会に様々な歪みをもたらす。特に日本の年金は下の世代が上の世代を支える賦課方式を採用しているために、若い世代に対する負担が重くなりがちで、支給開始年齢も現在より引き上げられることが確実視されている。公的年金制度が確立した1961年には約9人で1人の高齢者を支えていた制度が、2040年までには受給者が加入者を上回り、1人が1人以上の高齢者を支える時代がやってくるかもしれないのだ。

医療費の高騰

《年代別の医療費》

 そして超高齢社会は医療費でも財政を圧迫する。なぜなら医療費の支出の大半は高齢者であり、その割合が増えるということは、そのまま医療費の増大につながるからだ。たとえ年金の問題を制度変更によって解決できたとしても、高齢者の医療費の増大を制度変更によって解決することはできないだろう。人間が歳をとり病気がちになることは誰にも止められないからだ。

10人に1人は介護職

《全労働力人口に占める介護労働者の割合》

 さらに超高齢社会は介護など人的な資源も必要とするため、労働力という点においても社会の負担を増大させる。2040年には労働力人口の1割弱が介護職に従事することになるという予測もある。外国人労働者の受け入れや介護ロボットの導入などで多少は緩和される可能性があるものの、日本が超高齢社会であり続ける限りは一定の割合の人たちが介護従事者として働くことを想定しておかなければならない。

生涯未婚率

《男女別生涯未婚率の推移》

 もし高齢化に歯止めをかけようとするなら、現在1.4付近で推移する出生率を少なくとも2以上に引き上げなければならない。だが政府の統計では男性の3割弱・女性の2割弱が生涯にわたり結婚しないという結果が出ている。より正確には50歳までに1度も結婚をしていない男女の割合を示す統計だが、まずは社会が子供を産み育てやすい環境を作り、結婚を望む男女が安心して結婚し子育てができるようにしなければならない。

止まらない人口減少

《日本の人口予測と高齢者の割合》

 もしこのままのペースで少子化が進行すれば、日本の人口は年間70〜80万人ほど減っていき、高齢者の割合は現在より増加することが予想されている。これを市場として見た場合には、内需は年々数十万人分単位で減少し、外需が大幅に伸びない限りGDPも連動して減少していくことになる。

GDPトップ3からの陥落

《上位3ヶ国のGDPの推移》

 日本は1968年に世界第2位の経済大国となり長年その地位を維持してきたが、2010年に中国に追い越されて以来、その差は拡大する一方となっている。さらに2030年までにはインドに追い越されることが確実視されており、経済大国としての日本の地位は揺らぎつつある。人口が減少すればGDPも減少するのはやむを得ないから身の丈に合った暮らしをしていけばそれで良い…という意見もあるが、話はそう簡単ではない。

インフラの老朽化

《公共事業費の推移》

 まず人口が減少しても最低限のインフラは維持していかなければならない。しかしそれを支えるだけの人や財源が足りなければ、いくつかのインフラについては維持を断念せざるを得ないだろう。結果、日本の国土のあちこちに手を入れられなくなった構造物が溢れることになる。

国防費

《各国の国防費の推移》

 また、たとえインフラを減らすことができたとしても日本の国土自体を減らすことはできない。もし近隣諸国が日本への侵攻を開始したら、それに対抗するだけの防衛力は保持しておかなければならないのだ。そのためには人口を維持し、経済力においても他国に引けを取らないようにしておかなければならない。

戦争の勃発

《戦争が起きたら国のために戦う人の割合》

 それでも有事が起きた場合にはどうするか?当然、最初は自衛隊が対応することになるだろう。しかし対応しきれない場合にはアメリカに応援を求めることになるかもしれない。そうなれば日本が他国の戦争に巻き込まれることは避けられない情勢となる。場合によっては兵力を民間から調達することもあるかもしれない。その時にはもう第二次世界大戦の再現は目の前だ。

未来は変えられる

いかがだろうか、近い将来コロナ世代と呼ばれることになるであろう若者たちの未来が予想以上に暗いことがお分かりいただけたかと思う。だがそうならないための道も僅かながら残されている。このような社会しか残せない我々が言うのはおこがましいが、最も重要なことは1人1人が社会の問題について関心を持ち、自分本意な考えに囚われずに行動することだ。そうすればコロナ世代にはきっと明るい未来が待っているだろう。

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