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「景品表示法 執行事例データベース」で見る、過去の違反事例との付き合い方と消費者庁の最新動向(ダイジェスト版)

先日、「『景品表示法 執行事例データベース』で見る、過去の違反事例との付き合い方と消費者庁の最新動向」と題して、約30分間のウェブセミナーに登壇しました。

使用したスライドの表紙

このウェブセミナーは、大きく分けて、①景品表示法の超基本②過去事例との付き合い方③消費者庁の最新動向(データベース実演)の3パート構成でしたが、本noteでは、ダイジェスト版として、このうち「②過去事例との付き合い方」でお話した内容をご紹介します。


1 景品表示法の運用状況

消費者庁が毎年公開しているデータから引用。

上記スライドは、2015年度から2023年度までの景品表示法の運用状況を示したものです(2014年度以前の運用状況のデータも保有していますが、今回はスライドに入る分だけ掲載しました)。

このうち、目に見える執行事例=消費者庁ウェブサイトで随時公開される措置命令及び課徴金納付命令だけを見ても、だいたい年間60件程度の執行事例が存在していることがわかります。
さらに、行政指導に目を向けると、(件数が妙に少ない2023年度を除き)少なくとも年間100件以上、多い年度では年間200件以上もの行政指導が行われています。

行政法の規制の中にはあまり活用されていないものも存在することを考えると、景品表示法は、非常に執行リスクの高い法律であることがわかります。
換言すれば、それだけ景品表示法は実務上注意を要する法律である、ともいえるでしょう。

2 過去の違反事例の調査方法

このように活発に執行が行われている景品表示法ですが、実は過去の違反事例のリサーチが容易ではありませんでした。

というのも、従来の調査方法としては、消費者庁ウェブサイトWARP違反事例DBなどがあったのですが、それぞれリサーチ手段としてはデメリットもありました。

例えば、消費者庁ウェブサイトについては、一次情報としての高い信頼性を誇る一方で、あくまでも通常のプレスリリースの一環として行われるものであることから、データベース機能を備えておらず、また定期的に過去の違反事例が削除されていくという難点がありました。

また、WARPは、消費者庁ウェブサイトのアーカイブであるため、同様に一次資料としての信頼性を確保しつつ、2000年度までの過去事例を確認できるという強みがあるものの、消費者庁ウェブサイトと同様にデータベース機能がない上に、個別のページがGoogle検索ではヒットしない(つまり、Googleを通じた検索もできない)というデメリットがありました。

さらに、違反事例DBは、圧倒的な収録件数を誇るものすごいデータベースなのですが(おそらく最も古いデータは1962年の処分!)、検索機能やUIがやや使いづらいという弱点があります(ただし、この辺りは個人の好みかもしれません)。

そこで、このような状況を解消し、新たな調査方法を提供するために「景品表示法 執行事例データベース」を公開したという次第です。

ニッチゆえ皆様にどこまで必要とされているのか不明ではありますが、時間をかけてコツコツ制作したものなので、是非多くの方に利用していただきたいと考えています。

3 過去の違反事例の生かし方

景品表示法は、条文数が非常に少ない上に、条文を読んだだけでは理解不可能な概念や考え方が多く存在する法律です。
そのため、(どのような法律でも同じといえば同じなのですが)景品表示法の実務対応や学習において、過去の違反事例の確認は避けては通れません。

それでは、どのようなスタンスで過去の違反事例と付き合っていけば良いでしょうか?

まず考えられるスタンスとしては、広告審査などの景品表示法対応が必要な事案が生じる都度、参考になりそうな過去の違反事例をリサーチするというものです(上記スライドの「都度調査」)。
この場合、労力を要するわりに、個別の広告内容や過去の違反事例の個別性の強さゆえにドンピシャな事案が見つからず、あまりリサーチの効果を感じられないことも多いという難点があります。

では「いっそのこと全部(or 可能な限り多くの)過去の違反事例を片っ端から確認しよう!」というスタンスも一応考えられないではありません(上記スライドの「全部確認」)。
しかし、前述のとおり景品表示法の執行は非常に活発であり、これまでに極めて多数の違反事例が存在しています。そのため、日々の業務と並行してその全てを確認するというのは非現実的です。

というわけで、個人的には、都度調査と全部確認の中間、例えば2~3年分程度の違反事例を集中して研究してみるのをオススメしています(上記スライドの「一定期間」)。
個人的な経験としても、2~3年分程度の違反事例をしっかりと検討すれば、あたかも表示の認定方法や、合理的根拠資料がないとされやすい(備えにくい)要注意な表示内容などについて、かなりの肌感覚を得ることができるのではないかと考えています。
具体的には、前述した調査方法を利用して過去の違反事例を集めて、ゼミ形式で勉強会を開くという方法が考えられそうです。可能であれば、景品表示法に詳しい方がその勉強会に参加できるとより学習効果が高まるでしょう。

もちろん、それでもある程度の労力はかかってしまいますが、一度集中的に取り組むことで、今後も長期的に通用する知見が得られるはずです。

4 おわりに

というわけで、本noteでは、先日のウェブセミナーのダイジェスト版をお届けしました。

今後もセミナーなどには継続的に取り組んでいく予定ですので、皆様のご参加お待ちしております。


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