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カクコツ 書く準備⑩| 事前に読むべき企業サイトのページは?

取材・ヒアリングやライティングの事前準備(下調べ)、どうしてますか? 当該企業のウェブサイトのチェックは欠かせませんよね。膨大な情報と限られた時間のなか、どのページをどう見るのか。そのポイントをズバッと紹介します。ライターさんだけでなく、さまざまなビジネスピープルの商談・ミーティングに役立つと思います。

仕事は下調べだけではありません

取材・ヒアリング先のウェブサイトを
事前にチェックするのは、いまや当然。
どの企業、店舗、個人でさえも
自らの情報をネット上で公開する時代です。
これを活用しない手はありません。

ライターが取材・ライティングをする
際だけでなく、
企業の担当者が社外の人と接する場合など、
あらゆるミーティングで必要な作業といえます。

でも…
必要な作業であることは間違いないのですが、
お会いする企業は1社だけではありません。
皆さんも、たくさんの仕事を抱えているはず
忙しい毎日のなかで、ヒアリングの下調べだけ
しているわけではないのです。
膨大な企業サイトのなかから、
必要かつ重要な情報を
すばやく見つけることが求められる
わけです。

こう書くと、特別な能力のように感じますが、
ちょっと違います。
能力というより、コツや知識に近いかも。
知れば誰でもかんたんにできます。
「ここを見ておけば、まあ大丈夫」という
必見コンテンツを覚えておけばいい
だけです。

これから、そのいくつかをご紹介します。

最初にチェックしたい「採用ページ」

まずは、その企業の「採用ページ」です。
もちろん、企業概要や
ニュースリリースも見ますよ。
でも、ざっと目を通す程度。
最初のターゲットは採用ページです。

採用ページは、その企業に入社したいと
思っている人に向けたコンテンツ。
学生や比較的若い社外のビジネスピープルを
想定してつくってあります。
つまり、該当企業にとっての“素人”さんです。

「自社の特徴をひとことでいうと」
「提供できる付加価値、強み」
「増員したい(注力したい)分野」
などが、やさしい言葉で簡潔に
まとめられているケースが多い
のです。
さらに深読みすれば、
課題や欠点を見出すこともでます。

まさに、わたしたちのために
あるようなコンテンツ!
とくに、さまざまな事業を展開している
大手企業などに対しては、
企業活動を大局的に把握することが大事。
それができないと、ピントが外れた
取材・ミーティングになってしまいます

事業環境や業績予想が
わかりやすい「決算説明会資料」

次に「決算説明会資料」です。
対象が上場企業に限られますが、
これは本当に大事で、
読むのが楽しみでもあります。
ウェブサイトの事前チェックは、
このコンテンツを読むためにあると
いって過言ではありません!

(わたしの場合)

だいたいは、企業サイトの
「株主・投資家情報」のなかの
「IR資料室」のカテゴリーにあります。
決算説明会資料もしくは
プレゼンテーション資料という名前です。
いずれもPDFファイルになっています。

これらの資料は、決算説明会のときに
トップや財務責任者が
記者などへ説明するためのもの。
数字がたくさん出てきますが、
それだけではありません。

当期の事業環境や今後の業績予想が、
具体的な事例とともに紹介されています。
カラフルな写真やグラフがふんだんに
使われており、モノクロの決算短信とは大ちがい。

「こんなことやってたのか」
「こんなことやる予定なのか」
が、ひと目でわかる内容になっています。

わからないことを明確にするのが目的

決算説明会資料に掲載されている内容が、
取材・ヒアリングのテーマと
ドンピシャの場合もあるし、
そうでないこともあります。

ドンピシャなら文句なし。
ちょっとズレていた場合は、
周辺情報として押さえておきます。
現場で話を聞いたときに、
新しい興味(質問)が
生まれることがありますから。

下調べ(事前準備)の目的は基本的に、
理解を増やすことではありません。
逆に、わからないことを明確にして、
それが仕事に必要なことであれば、
会ったときに相手から聞き出します。
つまり、こちらと相手の両者にとって
的を得た疑問・質問を見つけるのが、
大きな目的のひとつ
なのです。

「統合報告書」はどうなのか?

「統合報告書(レポート)」とは、
1年間の企業活動における
財務情報(売上高や利益など)と
非財務情報(営業活動や商品開発動向、
社会貢献活動など)をひとつにまとめたもの。
ESG(環境、社会、企業統治)や
SDGs(国連の持続可能な開発目標)への貢献が
企業経営の根幹になったいま、
従来の重要情報だった財務情報と一緒に
公開するようになりました。
企業のコスト抑制という意味もあります。

冊子として印刷されたデータが
PDFファイルでウェブサイト上から入手できます。
たいていは、CSR(企業の社会的責任)か
サスティナビリティ(持続可能性)のページに
あるようです。

情報量が多く、企業によって温度差も

それが、下調べに役立つのかどうか。
結論からいえば、
「時間に余裕があれば読んでおく」
というところでしょうか。
仕事でずいぶん制作したのですが面目なし。

その理由は大きく2つあります。

1つめは、そもそもページ数が多すぎます。
情報量も多く、なかなか目的の情報まで
行き着くことができません。
各社工夫を凝らして
きれいにつくっているのですが…
この点は、主要な読者である
株式アナリストからも指摘されています。

2つめは、企業によってクオリティに
大きな差がある
ということ。
単に財務情報とサスティナビリティレポートを
合わせただけという企業も
少なくありません。
だったら、それぞれ読めばいいわけで、
その方がずっと効率的です。

取材・ヒアリングの現場に
統合報告書があると、
先方から「読んでくれたんですね」と
喜ばれることは、あります。

ますます面目なし

決算説明会資料や統合報告書を読む注意点

決算説明会資料や統合報告書を
活用するにあたっての注意点をひとつ。
掲載内容に期限があって、
最新の情報ではない場合があるということです。

たとえば、統合報告書は基本的に、
前年度(多くは前年4月1日から
今年3月末まで)を対象にしています。
現在が10月だとすると、最新の統合報告書には
今年4月からの情報は掲載されていません。
最新の情報は、ニュースリリースや
メディアのデータベースサービスで
確認したります。

ビジネスピープルのミーティング準備にも

「トップメッセージ」は統合報告書と同様かも。
間口の広い無難な内容になりがちなので
「いちおう読んではおくけど、
役に立ったことはあまりない」
というのが正直な感想です。

大局的な理解は採用ページ、
具体的な活動と着目点は
決算説明会資料、
最新情報はニュースリリースで

これが、わたしの基本となっています。

この見方は、ライターの取材だけでなく、
取材なしで書く場合にも役立つでしょう。
また、ビジネスピープルの商談や対外的な
ミーティングの事前準備にも応用できそうです。

わたしたちには、やりたい仕事、
やらなければならないミッションが
たくさんあります。
事前準備や下調べは大事ですが、
できる限り短時間で正確におこないたい。
膨大なネット情報に
素直に付き合っていたら、
仕事は何も進みません。


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