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40歳・フロントエンドエンジニア、これまでとこれから

誰?

僕は主にフロントエンドを中心としたウェブエンジニアです。1983年生まれの40歳で、大学卒業後は制作会社勤務・フリーランス・会社役員など働き方は色々ですが基本的には飽きずにずっとこの仕事をしています。
30歳になった時はそこまで年齢を意識しなかったのですが、40歳となるといくら平均寿命が延びている現代でも"折り返し"みたいな事をうっすら考えるようになったり、業界や仕事の変化も相まってそこそこ適当に生きてきた自分でも今くらいのタイミングで色々思う所を一旦記録しておいても良いかなと思いこれを書く事にしました(ネガティブな意味合いはありません)。

これまで

美大に在学中、今で言うクリエイティブコーディングのような事を始めとしてプログラミングやセンサー・デバイスなどを用いた表現で制作を行っていた流れでウェブ制作会社に就職しました。
冒頭の年齢を見て分かる人は分かると思いますが当時(2007年ごろ)のウェブ・広告業界はFlash全盛期で、皆リッチなインタラクティブコンテンツや見たこともないようなUIを発明する事に躍起になっていました。
もちろん僕も例外ではありません。何も分かっていない、ちょびっとだけコードが書ける生意気なだけの若造に大小様々な仕事をさせてくださった会社にはとても感謝しています。

5年間勤めた後、何の確信も無かったのですが独立しフリーランスとして働き始めます。iPhone3Gが初めて日本で発売された2008年から数年経過し、この頃にはもうiPhone 5や5sの時代なのでFlashの立場も苦しくなり、ウェブ本来の姿であるhtmlを書く仕事の割合の方が増えていた時期だと思います。
運の良い事に有名でも何でもない僕にも仕事を振ってくださる方々が居たおかげで独立後も変わらず色々なプロジェクトに関わらせて頂き、その中で大学時代の友人で同じくフリーランスとして活動していたデザイナーから声をかけられ、デザイナーとエンジニアの2人チームで働き始めて数年、大学のまた別の同期が立ち上げていた会社と合流(後に合併)し、昨年まで役員の一人として参加していたDSCL Inc.(デスケル)という形になります。

デスケルは、デザインと言われるようなスキルや考え方を誰もが使えるようになり、想像力を高め人々や世界の可能性を広げるという意味合いのEMPOWERED BY DESIGNというビジョンのもと、ヒューマンスキルの高いメンバーがクライアントに寄り添い続ける伴走型のブランディングカンパニーです。
デスケルは基本的にデザイナーで構成された会社なので、エンジニアリングを専門とするメンバーは基本的に僕だけでした。ウェブの仕事がある以上実装作業も発生しますし、そうでなくともテクニカル面での質問・課題は常々出てくるので、僕なりにやり甲斐を感じつつデザイナーの意見も聞きやすい中で小さいながらも会社経営の経験も出来た恵まれた環境でした。
(実際の"経営"について何か達成したのかと聞かれたら何も言えませんが)

そんな中、40歳という節目が近づいてきた時に漠然と意識し始めた事は"エンジニアとして"の未熟さ・中途半端さです。

意識の変化

Flashエンジニアだったこともあり、Flash絶滅(?)後も比較的インタラクティブ性の高いウェブサイトやコンテンツのお仕事に関わらせて頂く事が多かったので、ある意味ではウェブ標準から多少外れていても許されてしまう形の実装が求められる事は珍しくありませんでした。
とは言えそういった仕事をご依頼頂けるのは光栄ですし、期待してお声がけ頂いた以上もちろんその作業をしていた時は命を賭けて全力で取り組んでいた事は間違いありません。

しかし、メディアやデバイスの多様化が進んだ事でそれまでインタラクティブなウェブコンテンツに求められていた需要は分散し、ウェブサイトの役割は"誰もが正しく情報にアクセス出来る"という本来の目的に立ち戻って来ました。良い事だと思います。
それに伴って、コーポレートサイトの仕事なども以前のような派手な演出を入れる物ではなく、セマンティックに正しくhtmlを扱い、よりユーザーが情報を得やすく長く使える、といった堅実な設計がより強く求められるようになりました。
仮にもこの仕事をそれなりに長く続けているのでそれでも普通に仕事は出来ていたわけですが、数年前にとあるウェブアクセシビリティ適合レベルAAを求められる案件に関わらせて頂いた際、いかに自分の知識が足りていないかを思い知らされると共に、仮にもエンジニアを名乗っている人間が、これでは駄目なんじゃないか…?と焦りを感じ始めたのを覚えています。

フロントエンドの世界はSaaS系事業の急増と共にVueやReact等の登場以降大フレームワーク戦争時代に突入し、受注型ウェブ制作では無い開発主体の仕事が急速に増えました。
それに伴って、ご存知の通り"フロントエンドエンジニア"という人間に求められる技術リテラシーも加速度的に高まり、自分もReact/Next.jsを使った仕事をしていますが今でも所謂"俺は雰囲気でやっている"に近い状態である事は否定できません。
まだまだこれから仕事をし続け技術と向き合っていかなければならない事も含めて、焦りながら「今の中途半端なままで良いのか…?」とボンヤリ思っていたのがこの数年です。

そんなこんなで、最初に独立した時と同じように何の確信も無かった(し、むしろ悩んでいた)中で2023年末にデスケルの役員を退任させて頂き、数ヶ月仕事はしつつもじっくり考える期間を取っていました。
自分を無理矢理追い込んで、見て見ぬふりをしていた"覚悟"みたいな事を今更ながらしなきゃいけないな、というような事を考えていた気がします。

どうするのか

これからの話です。なんだか勿体ぶったようないやらしい流れになってしまいますがご縁があって4月から株式会社トルク / Torque Inc.にジョインさせて頂き、テックリード・エンジニアとして働いています。

株式会社トルクの事を簡単に紹介すると、"デザインの力で情報格差をなくす"というミッションのもと、ウェブアクセシビリティとデザイン性の両立の実現にフルコミットしたデザインファーム・デザインテックカンパニーです(ウェブサイトの言葉をお借りします)。

ここまで書いてきた通り、自分の仕事が比較的自由なインタラクティブコンテンツの制作から堅実なウェブサイト制作に移り変わる中で色々な焦りや葛藤がありました。

大学の頃は、デザインと名の付く学科ではあったもののプログラミングを通してメディアアートやライブパフォーマンスといった事を専攻する研究室に所属し、アーティストである教授陣達から自己表現について学び実践する環境に居ましたし、今でもそういった活動を続けている友人も多いです。
たまたま自分はそこからウェブというメディアの面白さに魅力を感じウェブエンジニアになったわけですが、結果として「ウェブを表現の場としても捉える表現者としての自分と、ウェブをインフラとして捉えるエンジニアとしての自分」が悶々とする形になっていたわけです。

その葛藤がより一層強くなったきっかけとして、ウェブアクセシビリティを含めた仕事やそれにまつわる世の中の流れがあります。

ウェブアクセシビリティについて話し出すとこの記事は永遠に終わらなくなってしまうためまた別の機会に書こうと思いますが、インターネットやウェブはそもそもがアクセシブルであり、誰もが平等に使えるべきものです。

そんな特性を持ったメディアが様々な理由からアクセシブルでは無くなってしまっている事により、本来それを使えるはずだった人たちがウェブサイトを閲覧出来ない / 使いにくいといった状況が発生してしまう事が常態化していたわけですが、それを是正する動きが世界的に強くなり、例えばアクセシビリティが法律化されているアメリカではウェブサイトとアクセシビリティにまつわる沢山の訴訟も起きています。

そんな"是正されるべき状況"に、自分は加担してしまっているのではないか。
もともとアクセシブルであるはずのウェブをわざわざ使いにくくしておいて、誰かを排除している事実から目を背けて、表現という言葉に胡座をかいているのではないか。

これは、あくまで自分がそう思った、思うようになってしまった、という話であって、僕は今でもインタラクティブなウェブサイトが好きで、そういったコンテンツを作る同業者・クリエイターの方々を尊敬し、これまで自分が関わってきた仕事も大切な実績と経験である事に変わりないです。

じゃあこれからどうして行くのか?と考えた時、自分は自分なりの表現として、改めて地に足のついた知識・技術を身に着け、デザインとアクセシビリティを両立した良いコンテンツを作る。ということに向き合ってみようと考えた時、この会社ならそれが出来るんじゃないかと思った事が、トルクに入社したきっかけです。

当然ながらアートや表現という物の自由さを肯定する自分ももちろんまだ内在しており、ウェブアクセシビリティという物を考えるにあたって二律背反になる事は多いのですが、デザインとアクセシビリティは両立出来るはずですし、自分がチャレンジする取り組みとしてまだまだやり甲斐を見いだせる領域だと思っています。
40代という、ビジネス的に言えばそれなりの位置である世代に突入してしまいましたが、胸を張ってフロントエンドエンジニアを名乗れるよう、一から出直しぐらいの気持ちで精進して行こうと思います。

ということで

会社の宣伝をします!株式会社トルクは

先日リニューアルしたWeb Designingのウェブ企画において連載を始めさせて頂いたり、

弊社で制作させていただいた堀場製作所様の「おもしろおかしくの力で何ができるのだろう。」が、第45回「日本BtoB広告賞」ウェブサイト<企業PR>の部で金賞を受賞するなど、

アクセシビリティへの理解を深めつつ、より良いクリエイティブなコンテンツを生み出せるよう社員一同楽しく全力で活動しています。
ウェブサイト制作のみでなく、導入支援、コンサルティングなども行っていますのでお気軽にご相談くださいませ!

それでは、今後ともよろしくお願いいたします。

#日記 #フロントエンドエンジニア #Webエンジニア #Webデザイン #Web制作

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