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第14回「お引越し」

 本を詰める。段ボールに。詰める、詰める。本を詰める。汗を拭う。根詰める。詰めが甘い。甘い爪。ペロリ。『あまくない砂糖の話』。あまくない佐藤の話。『ザ・ファブル』。殺し屋はあまくない。『リアル鬼ごっこ』。殺される佐藤もあまくない。糖質オフ。カロリーオフ。断食ダイエット。レコーディングダイエット。げっそり。古いCMソング。24時間、戦エマスカ。戦エマセン。休ミタイ。ムシロ積極的ニ糖分ヲ補給スベキ。『食べて、祈って、恋をして』。強欲の塊。強欲な壺。煩悩は心の友。食って、吐いて、後悔して。脂っこいと胃がもたれる。俺の胃袋は宇宙だ。かのイマジナリー草なぎ剛はいずこへ。止まる。段ボールを組み立てる手が。気を抜けば、本末転倒な散らかり具合。本が散乱。レイリー散乱、ミー散乱。夏の青空を見るたびによぎる科学用語。「私の好きな言葉です」。いけない、煩悩がすさまじい。ニューロンは黙って命令を下しなさい。刺激。暑い。節電。物価高騰。壊れた民主主義。朦朧とする夏。キンチョーの夏。『異人たちの夏』『菊次郎の夏』。日差しが強い。『太陽の季節』『太陽がいっぱい』。日射。熱射。放射熱線。がおー。『怒り』『ゴジラ』『夏への扉』をこじ開ける。ひらけ、ポンキッキ。ピリカピリララのびやかに。騒音。爆音。奥で精力全開の『八日目の蝉』が狂喜乱舞。ゴジラもしっぽを巻いて遁走。蝉の寿命は思いのほか長い。土の中の子供。七年、十三年、十七年。素数ゼミ。天然由来の『奇蹟がくれた数式』『真夏の方程式』『博士の愛した数式』。せーので『13日の金曜日』に大量発生。タイミングは『ミッドサマー』がオススメ。オスメスの交雑こそが『サマーウォーズ』。これ、うまくない佐藤の話。佐藤は悪くない。サトウのごはん。まぐろごはん。『GODZILLA』に頼め、扉を閉じよ。『交渉人』よろしく『ゴジラの逆襲』『閉ざされた扉』。うまくいった。うまくいった。なにが。本は片付かない。本の密林。『ジャングル・ブック』。ボリューム満点、激安ジャングル。所狭しと『グリーンブック』『ブラックブック』『マイ・ブックショップ』でも開店しようかしら。おっと、ほこりをかぶった『クローズド・ノート』。ガムとストレスは、くずかごへ。パイパイポンポイプワプワプー。落ち着かない。『レストレス』な状態。疲労困憊。椅子に座って『ブレインストーム』。混濁した意識で巡らせる想像。ゆっくりと『イメージの本』を形作る。架空のページを拡げる。『お引越し』したら『隣人たち』への挨拶。コミュニケーションが上手けりゃ『引っ越し大名!』、トラブル生みだしゃ『ネイバーズ』。家がまずけりゃ『インシディアス』、運がよけりゃ『となりのトトロ』。しかし生まれてこの方、運はよくない。困った、困った。『恐怖分子』で頭がいっぱい。子ども科学電話相談。出動要請『ゴーストバスターズ』。特命戦隊ゴーバスターズ。ベルを鳴らすな『恐怖ノ黒電話』。ああ困った、困った。『めまい』がして、視界に『火花』散る。邪念は『ゲット・アウト』。でもこれ、存在しない悩み。『若きウェルテル』の悩み。『存在の耐えられない軽さ』。ポップス歌手の耐えられない軽さ。話を本題に戻そう。いや、戻りようがない。そもそも本題がない。文字どおり、本の題がない。二重括弧がない。ためしに文字禍。文字渦。『緋文字』か。ほら、ひどい。ホーソーン効果。『ピグマリオン』効果。ローゼンタール効果。『カリギュラ』効果。この書き手、映画化した本の題ばかり贔屓している。こいつは『悪人』に違いない。『日本で一番悪い奴ら』だ。いや、「ら」は余計か。ずばり『悪いやつ』『凶悪』『悪魔の毒々モンスター』。この顔にピンと来たら110番。こんな『悪魔を見た』『エクソシスト』へ連絡。カステラ一番、電話は二番。荷造り進まず大惨事。『川の底からこんにちは』。まるで泥水を泳ぐ感覚。『亀は意外と速く泳ぐ』らしい。そんなこと知らない。『誰も知らない』『誰もわかってくれない』。身体に本の触手がまとわりつく。『書を捨てよ町へ出よう』。無理だ。諦めよ、町なんてどこにもない。『ぼくだけがいない街』。あなたは『ミスター・ノーバディ』『血と骨』が溶け合い、穢れた文字を煮詰めたような粘液に包まれる。駄文、劣文、いい戯文。改行なき悪文。『本のゆがみ』『黒い家』を揺蕩えば、いずれ『仄暗い水の底から』『哀しき獣』が押し寄せて『来る』『その男、凶暴につき』『語るべきか、あるいは語らざるべきか』『やがて来たる者へ』『隣人は静かに笑う』『かも』

   映画凡人が綴りし駄文~「お引越し」~

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