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『CROSS ROAD~悪魔のヴァイオリニスト パガニーニ~』感想

はじめに

 先日『CROSSROAD~悪魔のヴァイオリニスト パガニーニ~』を観劇してきました。無職になってから初めての観劇、しかも平日の昼間だったので謎の優越感がありました。(お前は早く働け)しかし、平日昼間ってたくさん人がいらっしゃるんですね。正直、夜公演よりも埋まってる感じがしました。では、さっそく感想へ!!!

注意

本当に正直に書きます。ただし、個人に対する誹謗中傷はしないように細心の注意を払います。また、私は一回しか観劇していないため、多少事実と異なる点が存在するかと思いますが、大目に見ていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。

良かった点

日本オリジナルミュージカルであること

 これに尽きます。脚本も演出も曲もみんな日本人が制作している日本オリジナルのミュージカルってそうそうありません。昨年再演があった『生きる』も曲は海外の方が作曲していましたし。こういう作品がどんどん増えてくれればいいなと思います。

楽曲

 そんな中でも楽曲が頭一つ抜けていたと思います。特に「♪血の契約」がお気に入りです。ロック調の音楽は韓国ミュージカル感があって良かったです。また、それに負けないキャストの方々の歌唱力にも驚きました。特に心にしみたのは春野寿美礼さんの歌声です。酒場で歌ってるのもったいないなあと思うくらい透き通った綺麗な歌声で、これはパガニーニが覚えるのも納得だわ……と思いました。

パガニーニのダンス

 ヴァイオリンを弾くときのしなやかな腕の動きと、身体のキレがすごかったです!並の人間がやったら、あんなに格好良く決まりませんでしたよね。主役の役者さんは本当に凄いなと思いました。あと、シンプルにスタイルが良すぎます。ソファに寝そべった時、足が500Mあるのかと思いました(???)

気になった点

ヴァイオリンの音

 俳優さんはもちろんヴァイオリニストではないので、ヴァイオリンは弾けません。だから、いかに弾いているように見せるのかが重要になってくると思うのですが、いかんせんヴァイオリンの音が小さいため、弾いている感じがあまり出ていないような気がしました。(私が後列にいたから?)劇中で、アーシャのためにパガニーニが1曲弾いて見せる場面がありましたが、あれくらいの音量が劇中歌の最中にもほしかったです。ただ、生演奏なのでヴァイオリンの音だけ目立たせるというのは難しいのかな。「♪血の契約」の時も、ヴァイオリンの音が伴奏に埋もれてしまっていて、せっかくパガニーニが力を手に入れた最初の場面なのに、「悪魔的に魅力的なヴァイオリン」の魅力がいまいち伝わらなかったです。「♪血の契約」の中に「超かっこいいヴァイオリンソロ」みたいなのがあったら嬉しかったかも。あと、もう少し止まってヴァイオリンを弾くシーンがあっても良かったかもしれないです。どこかにありましたよね?(「♪異端審問」の時?)ダンスするシーンと止まって弾くシーンとのメリハリがあると良かったと思いました。(素人の意見です)


アーシャ、あまりジプシー(ロマ)感がない

 アーシャのことが嫌いとかそういうわけでは決してありません。ただ、ジプシー(ロマ)にしては天真爛漫すぎないか?と思ってしまいました。アーシャは「教会から嫌われている」というパガニーニとの共通点をもつためにジプシーとして描かれましたが、その設定をもう少し大事にしてほしかったです。いつも鍵開けしてするりと忍び込んでくるだけではなく、時にはパガニーニを身体的に(例えば教会の面々から逃げる際も目くらましして「こんなのへっちゃらよ」みたいな)助けるくらいのたくましさが欲しかった。欲を言えば、「流浪の旅で覚えた様々な楽器や音楽を知っている」という設定も生かしてほしかった。これが生かされたのはせいぜい最初屋敷に忍び込んだときに、ヴァイオリンの名前を言い当てたくらいですよね?(すみません。一回しか見てないので、もしかしたら見落としている箇所があるかもしれません)

エリザ、本当に「ファムファタール」なのか?

 パガニーニを愛し、その知名度や地位を上げることに貢献した女性、エリザはアムドゥスキアスから「ファムファタール」と称されていますが、果たして本当にそうでしょうか。まず、ファムファタールというのは一般的に「性的に魅力的で、男の人を知らず知らずのうちに振り回し破滅に導く魔性の女」のことです。しかし、彼女は性的に奔放ではないように見えます。(着ている服の露出が少ないし、多数の男性を関係を持っている描写もない。ただ、「誰も本当の私を見てはくれない」と嘆いているだけ)
 では、「知らず知らずのうちに破滅に導いたから」ファムファタールと呼ばれているのでしょうか。私はこれも違うと思います。なぜなら、エリザと出会わなくても、パガニーニはその命を削っただろうと考えられるからです。彼女はパガニーニが衰弱していく原因、つまり「1曲弾くたびに命がすり減っていく」という現象の直接的な原因ではありません。彼が命をすり減らすのはあくまでアムドゥスキアスとの契約が原因であり、彼女は全く関係がありません。それでも、もしパガニーニがエリザにぞっこんで、「彼女のためにヴァイオリンを弾きたい!」みたいな台詞があれば、エリザは「ファムファタール」として成立しえるのかもしれませんが、劇中ではそんなにラブラブしてませんでしたよね?(パガニーニが「エリザ」と呼び捨てにしたのを聞いたアルマンドが「あ、もうそういう大人な関係になったの?」的な発言をした&ハグをしたくらい?)まあ、エリザから「ヴァイオリンを弾いて」と言われて断らなかったことから、エリザにぞっこんだったと言えなくもないのかもしれませんが、そこらへんの描写がもう少し欲しかったです。もしかしたら、エリザとアムドゥスキアスの出会いではなく、エリザとパガニーニの出会いに時間を割くべきだったのかもしれません。もしそこにどうしてもアムドゥスキアスがその出会いを工作したということを表現するのであれば、上にアムドゥスキアスを配置し、三重唱しても面白かったかもしれません。
 個人的には登場人物紹介に「ファムファタールとして登場する」みたいな書かれ方をするのも違うと思うのですが、そこまで言い出すとキリがないのでやめます。

暗転が多い

 シンプルに集中力が切れるので、場転はスムーズであってほしい派です。(個人的な好みです)

全体評価:☆4

 細かい点で気になるところはあったものの、全体的に見れば楽曲をはじめとする作品のクオリティは高かったと思います。ロープを使った演出やパガニーニの「悪魔的なヴァイオリン」を表現したダンス、春野寿美礼さんや中川晃教さんをはじめとするキャストの皆さんの素晴らしい歌声、すべてが印象的で素敵なひと時を過ごすことが出来ました。ブラッシュアップして、またぜひ再演してほしいです!!!!お願いします!!!東宝の偉い人!!!!!ここまで読んでくださってありがとうございました。





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