見出し画像

ワニワニパニックの思い出

前の記事でRUINERのおかげでゲーム本来の楽しさを思い出し、その源が自分にとってワニワニパニックにあったとわかった。せっかくなので風呂とか洗濯物を畳む間に追憶したワニのことを書き留めておきたい。

ワニワニパニックは1989年にナムコから生まれたそうで、当時幼児だった自分にとって最新のゲームだったと調べてわかった。当時はまだ少子化問題もなく郊外に小規模な遊園地があったり、デパートの屋上は勿論、ちょっとしたスーパーにもだいたいゲームコーナーがあって、ミニ線路を走る汽車まであるところもあった。そんな中でなにか1回遊んでいいよと親に言われたらだいたいワニワニパニックを選んでいた。

当時4歳前後なので筐体は大きかった。はじめのうちはワニも一匹づつゆっくり出てくるからいい。後半は「もう、おこったぞ!」の声とともに出が激しくなって最終的には一斉にでてくるので「ガブッ!」と咬まれる。本当はハンマー1つで戦うべきだけど左手でもワニを殴ってしまう、それでも評価は「まあまあ」くらいしか取れなかった。しかし普段ものを殴ったら怒られるので合法的にちからを振るっていいワニワニパニックはめちゃくちゃ爽快だった。

そして誕生日にワニワニパニックのおもちゃをねだった。自宅でワニワニパニックができる!殴りたい放題!ふくらむ夢!しかし家庭版ワニワニパニックはあまりにも、幼児が絶望するくらいにはあまりにも本物とかけ離れていた。

プラスチックの小さい本体、小さいピコピコハンマー、そしてすさまじいガチャガチャ音とともに最初からすごいスピードでワニが出てくる。徐々に難易度が上がる本物と違って最初から突き放してくるワニ。本物と同じく後半はさらにスピードアップするのだが「もう、おこったぞ!」のかわいい声ではなく「デッデッデッ ビボッビボッ」みたいな無機質な音が流れる。さらにヒートアップするワニの出入り、かわいい「ガブッ」の声もなく一層激しくなるガチャガチャ音。当然左手をもってしても叩ききれないし、いつの間にかハンマーのピコピコ部分ではなく柄と同じ固いプラスチック素材のターザンの恰好をしたおっさんのキャラクター部分のほうで叩いていて、もはや遊んでるんだか破壊してるんだかわからなくなってしまった。

愕然とした。布ハンマーと、愛らしい声と、段階的に難易度を上げる調整、からだ全体で楽しむ感覚…。ワニワニパニックに大切なそれらが一切無いこんなものただのうるさい機械じゃないか。しかしもらった手前、すぐにやらなくなると申し訳ないという気持ちから少しだけ遊んだ覚えがある。幼児にしてはこざかしい奴だった。

とにかく要素はいろいろあったが、体質的に音に敏感に生まれてしまったのでとくにガチャガチャ音に耐え切れず、じきにおもちゃのワニワニパニックはやらなくなってしまった。そのあと親の都合で引っ越してゲームコーナーから遠ざかり、自分も幼児という年齢ではなくなってしまった。

現在も稼働しているシリーズのワニワニパニック3は2019年に在庫部品のみの修理にしか応じられないと担当企業から発表されたので、ワニをたたけなくなるのも時間の問題だそうだ。ワニ達から殴るのはゲームだから許されるのだと教えてもらい、同時に左手でズルをしたうしろめたさも教えてもらった。ワニ、殴らせてくれてありがとね、おつかれさま。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?