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赤星香一郎短編集

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お仕事の合間にちょこっと休憩しませんか?
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#掌編小説

静かにしろ

 博多着の東海道新幹線「のぞみ」が東京駅から出発するのは朝九時のことだった。  その日、村山は大阪で大切な仕事があった。彼は本社渋谷区のIT会社に勤めるエンジニアである。  一ヶ月前、部長の上野が村山に言った。 「村山君、新製品の説明をするために、大阪に出張してもらえるかな?」  村山は新製品開発チームのプロジェクトリーダーだった。そのため大阪支社の人間に、完成間近の新製品を説明する必要があった。  平日の朝なら新幹線も混んでいない。わざわざ指定席にしなくても、少し早めに1号

顔文字

 小生は「顔文字」が嫌いである。  顔文字というのは、電子メールなどで、括弧などの記号を組み合わせて筆者の感情を表現するマークのことだ。例えば、笑い顔を表現する(^_^)や(^o^)などだ。フェイスマークとも聞いたことがある。  だいたい絵を表現したいのなら、画像データを送れば良いではないか。何故そのような姑息な手段を使うのか。  なにっ。データの送信量が多いからだって。この馬鹿者が。多いというのは1TBなのか? 100TBなのか? たかだか数MBではないか。そもそもデータ通

(^^)文字

 どこかで見かけたのですが、顔文字ヽ(^。^)ノを使うことに反対している人がいるらしいですね。(@_@;)  ボカァ、それを聞いたとき、( ゚Д゚)ハァ?と思ってしまいましたよ。  人の書く文章にまでケチをつける人(*_*)が現れたのですから、もう(+_+)ですよね。  いいじゃないですか、顔文字を使ったって。(^O^)  簡単に(^^)/や(^^;)や(T_T)で気持ちを表わせるわけですから。  だいたいそういうケチをつけている人って、頭の固い人が多いんですよね。┐('ー`

騎馬民族

 社員旅行の屋外焼肉パーティーでのことでした。  ボクらは日頃のハードな仕事の事を忘れ、焼肉を焼きながら、ビールを飲んで、みんなで談笑していました。  肉が焼けそうな頃合いになったとき、営業部先輩の木場さんが、開発部のボクのエリアに近づいてくると、食べごろになっていた肉をごっそり奪って、自分の皿に乗せたのです。そして木場さんは肉を口に入れ、不敵に笑みを浮かべながら言いました。 「ああ、うめえなあ」  ボクらがせっせと焼いていた肉を、ほとんど全部持っていかれたのですから、ボクら

このボカァ、ひどい目に遭いましたよ

「角田さん、またボクの飲み物を飲んだでしょ?」  角田さんはボクの同僚ですが、よく無断でボクの飲み物を飲むんです。今日はボクが買っておいた缶コーヒーと紅茶の2本とも飲まれていました。おそらくボクが席をはずした時に、こっそり飲んだのでしょう。 「えっ?」  隣の席の角田さんは、仕事中にもかかわらず、漫画本を読んでいました。ボクが声をかけると、ゆっくりと顔を上げ首をぼきりと鳴らしました。 「私がなにかしたかね?」  ガラガラと音を立てて車つきの椅子を引きずりながら、ボクの席へ移動

はないちもんめの謎

 「はないちもんめ」、なんと懐かしい言葉であろうか。  この言葉を聞いて、和やかな、ほのぼのとした印象を持つのは、筆者だけではあるまい。  諸君は幼少の頃、この「はないちもんめ」で遊んだことがあるだろうか。誰でも知っているこの遊戯、むしろ遊んだことのない人のほうが珍しいのではないだろうか。  「はないちもんめ」とは、数人で二つの集団になり、欲しい子を指名して、仲間を増やしていくという、原始的ではあるが、意外に奥の深い遊戯である。  筆者も子供の頃には、よくこの遊戯をして遊んだ