息で生体認証出来る原理を実証
デジタル社会が進むと頭を悩ます1つは「パスワード管理」ではないでしょうか?
「生体認証」は、以前から導入が進んでおり、スマートデバイスでは、顔認証は珍しくなくなりました。(個人的にはiOSのマスク対応機能追加は嬉しかったです☺)
国内では金融サービスでも生体認証を導入する企業が増え、シンガポールでは、国民番号でも世界で初めて生体認証に踏み切っています。(こちらによればとうとう出国審査でも生体認証でタッチレスを導入予定)
生体認証といえば、「筆跡」「声紋」「指紋」「顔(眼球含む)」「DNA」などが定番ですが、新しい仕組みを開発している研究グループが居ます。
それは、「息」による認証です。
要は、
個人が吐く息のパターンを見極めて97%以上の認識率を実現した、
という話です。
個人的には、息は食べたものに依存すると思い込んでいたので意外でした。(但し、よく見ると空腹時での実験なので、あくまで今回は原理としての実績です)
生体ガスを構成する分子群の化学情報に基づいて認識をするそうです。大体吐く息はWikiによると、
窒素約80%、酸素約16%、二酸化炭素約4%で大半を占めますが、その他の微量成分として、水素、一酸化炭素、窒素酸化物、硫化水素、揮発性有機化合物(VOCs)が含まれます。
この成分比率を、分析機器にかけることで個人特定に寄与できるということを今回示したわけです。
個人的にはそこまで微量な差を見分けられる分析機器の方に関心が寄りました。
この機器の原理は、一般的にはガスクロマトグラフと呼ばれるもので、気体特有の動きを電気量に変換して特定します。
この電気量の収集(センサー)で重要な役割を担っているのが「導電性ナノチューブ粒子」です。
ざっくりいうと、ターゲットとなる気体種類によってセンサー材料の膨張度合が変わっていきます。そして、その距離が変わることで変化するナノチューブ粒子の電気抵抗量を計測する、というとても繊細なことを内部で実現しています。
従来から考え方は提唱されていましたが、今回初めてその実測に成功し、その精度はppm(parts per million)、つまり100万分の1スケールです。
もう1つ重要な役割を担うのはパターンを認識する技術で、ここには最新のAI技法(ニューラルネットワーク)が使われています。
今後はより実践的な研究が進み、実用性が高まっていくと思います。
他の認証より使い勝手がいいと感じるのは、偽造のしにくさと、万が一採取されても長期間なりすましされにくい点かなと思います。
例えば声紋・指紋になると、精密なフェイクを1つでもデジタルで作ってしまうと保存・複製がされやすくなる危険があります。
この仕組みだと、そもそも探知する機器がまだハードルが高いのと、呼気はまだデジタル化(複製・保存)しにくいわけです。
また、今回の話題とはずれますが、呼気による感染検査が最近アメリカ当局によって承認されたという発表もあります。
今後センサーの精度が高まれば、もしかしたら今後呼気によるセンシングシーンが多用化するかもしれません。
我々が常に行っている「呼吸」という当たり前の活動について、いまさらながらその価値を見直してみたくなりました。
これからもこの話題は進展が期待されるので、関連情報を見つけたら息をのんで臨もうと思います。
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