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元祖テスラの構想と抗争
「テスラ」と聞くと、未だとイーロン・マスクのEV会社を連想する方が多いと思います。(厳密には他の方が創業して彼が途中参画した)
科学が好きな方は、その名前の由来でもある「ニコラ・テスラ」でしょう。
この方は奇妙な発明品もあることから「マッドサイエンティスト」扱いされることもあります。
が、特許も多く保持し、何よりも我々が日常的に使っている「交流電源」を発明した、人類にとって貢献度の高い方です。
例えば、米国LIFE誌は1999年の特集で「1000年間で最も重要な100名」に、「エジソンと並んで」選出しています。
そんなニコラ・テスラの波乱万丈な人生と、彼の構想がやっと今実現されている1つの例をご紹介します。伝記は下記Wikiを参考にしています。
元々はテスラは、20世紀末に東欧の会社で技師として勤めた後、米国エジソンの元で働きますが、考えがあわず数か月で辞して独立しました。
(因縁つきなので上記でカッコつきで付記した次第)
エジソンは当時から世界的な発明家として知られ、電球を初めて1300個もの発明品を残しています。
当時彼は、「直流方式」で電気を送信しようとしており、一方テスラは自身が考案した「交流方式」にこだわっていたのが抗争の理由です。
ざっくりいうと、高圧で送電出来る変圧器を発明しました。
独立後、彼の交流方式に関する論文とデモンストレーションが、大手ウェスティングハウス社の目に留まり資金援助を受けました。
この時のデモ写真は今でもよく引用されるので紹介します。
「ああ見たことある!」という方もいるのではないでしょうか?
![](https://assets.st-note.com/img/1649020967606-vtSRQLyRr8.jpg?width=1200)
これはイメージ戦略としても効果が高く、マーケティングの教科書にもなってもおかしくないですね。
「交流電源は安全だよ」というイメージがひしひしと伝わります。
そして実際に、のちに直流vs交流抗争が起こり、テスラ側がエジソン側に勝利して今に至ります。
テスラはさらに発想を広げ、自身が考案した変圧機を応用したら、地球上に電源を効率的に供給できる、と考えました。このあたりから天才性が際立ってきます。
原理をシンプルに言うと、テスラが考案した変圧器(俗称テスラコイル)は、ファラデーが発見した電磁誘導の応用です。電気と磁気はお互いの変化が相互作用を及ぼすということです。
そしてこのアイデアの根っこは「地球は巨大磁石」、つまりそれを振動させることで電気を発生させる、ということです。
彼はこの計画を「世界システム」と名付けました。人類全体に電気を供給するという目的を考えると、決して大きすぎない言葉です。
今考えてもデカすぎる構想ですが、幸い時の大富豪J.P.モルガンが資金提供を申し入れて、20世紀が始まった年にテスラコイルを内包した57mの電波塔「ウォーデンクリフ・タワー」の建設が始まりました。
![](https://assets.st-note.com/img/1649021881694-i98P2PuNkg.jpg?width=1200)
技術的な目的は、ワイヤレスで遠距離に通信・給電を送ることです。
ところが、2つの不幸が重なりました。
まず、無線通信は、たまたま他の方が別の方式で達成してしまいました。
また、静観していたアメリカが1917年にとうとう第一次世界大戦に参入し、この巨大な電波塔が敵国の標的にされるという理由で、打ち壊されることになってしまいました。
テスラは残りの余生は不遇で金銭的な面でも苦労したといわれています。
ただし、繰り返しですが彼の業績は高く、残された彼の技術資料はユネスコの記憶遺産にも認定されています。
テスラ以降100年ほどこの構想の要素技術にあたる「ワイヤレス給電」は大きくは進展しませんでした。
そして21世紀になって、テスラの従来方式以外に、マイクロ波・レーザ・新しい電磁誘導(共鳴型)などが考案され、例えば近接型ならスマホ充電も出来るようになりました。
「世界システム」に一番近いのは、宇宙空間で太陽光をマイクロ波に変換して地上にエネルギーを送付する計画です。
これは日本でも研究されて今年から実証実験が始まる予定です。
ただ、これもまだ完成は数十年先といわれており、いかにテスラの構想が時代を先取りしていたかが分かります。
今、テスラがこの世に復活したら果たしてどんな構想を練るでしょうか?
※タイトル画像は、パブリックドメインから引用しています。
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Tesla_Sarony.jpg
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