見出し画像

【報告】オンライン講座でティム・オブライエンの『本当の戦争の話をしよう』を読みました

 3月1日水曜日夜7時半から、 NHK 文化センターのオンライン講座「文庫で味わうアメリカ文学」をやりました。課題図書はティム・オブライエンの『本当の戦争の話をしよう』です。
 僕はこの本がむちゃくちゃに好きで、何度も読んできてますし、大学の授業でも取り上げ、そして『教養としてのアメリカ短編小説』(NHK出版)でも収録作品である「レイニー河で」を扱ったぐらいです。
 当日は受講生の方々がどういうふうにこの作品を読むのかと興味津々でしたが、まさに予想を上回ってきてくれました。
 自然と一体化する「ソン・チャボンの恋人」の女性は、まさに深い山に分け入る登山家の感じがあるという解釈には度肝を抜かれました。
 その他にも、登場する女性たちを中心に、彼女たちの視点からもこの作品を見直せるとか、彼女たちがちゃんと実感を持った魅力的な存在として描かれているといったジェンダー的な読みにも驚きました。
 最も心を動かされたのが、この本は傾聴についての作品なのではないか、という指摘でした。「レイニー河で」でロッジの主人である老人エルロイは、徴兵を拒否してカナダに逃げるかどうか迷っている主人公に何も言いません。そしてただ黙って主人公の言葉に耳を傾けるだけです。
 あるいは、「勇敢であること」では誰にも戦争のことを聞いてもらえない主人公が、ファーストフード店のインターコムに語りかけようとします。その他、この作品全体が戦争の死者たちや帰還兵たちの声に耳をすます構造になっている、という指摘もありました。
 この講座ではいつも僕が考えつく以上の指摘が受講生からどんどん出てきて本当に楽しいです。4月からは新講座も始まりますが、今からやる気満々です。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?