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【書評】ぱやぱやくん『陸上自衛隊ますらお日記』--女性ますらおとの出会い

 陸上自衛隊というとどういうイメージだろうか。実は僕には、自衛官の人達がどうやって暮らしているかに関するイメージが全然ない。だからこの本の内容はなかなかに衝撃的だった。
 全体として、特に体力自慢でもないまま陸上自衛隊に入ってきた人たちが「ますらお」であることを重んじる文化に出会い、自分自身の心身を鍛えていく、という過程をコメディタッチで描いている。
 というと、単にマッチョ主義という感じだが、この「ますらお」には女性隊員も入っているのがすごい。彼女たちは、ある時はたまの休みに八ヶ岳に登り、格闘の講習では男性隊員たちを投げ飛ばし、家では育児という名の戦闘に勤しむ。
 そしてぱやぱやくんは言う。こうした多様な人々がいるからこそ、自衛隊の強さが保証されるのだと。自衛隊内のこうした考え方には今まで全然触れてこなかったので驚いた。
 アメリカ軍との演習の話も興味深い。余裕があれば手伝ってくれればいいのに、アメリカ軍ではそれぞれの持ち場がきっちり決まっているので、他人の職分にまでは絶対に手を出さない。だがそのぶん、自分の持ち場はきっちりとこなし、しかも定時になると必ず帰ってしまう。
 それに比べて、自衛隊をはじめとした日本の組織は、会議だろうが宴会だろうが、始まる時間はきっちりしていても、終わる時間は予測不能である。こうした運営はアメリカ軍からは極端にだらしない、非効率なものに見える。こうした気づきには驚くばかりだ。
 ただの男ばかりの職場、というイメージの自衛隊に入って、性の多様性の大切さや世界の文化の違いに気づく、というこの本の展開が気に入った。

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