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転職は当たり前という罠

 「転職は当たり前」という言葉が浸透してだいぶ経ちます。皆さんの周りでも転職をした人は多いと思いますし、皆さん自信が転職されたというケースもあるかと思います。転職は自分のキャリアを作り上げる立派な手段なので、これを有効に使って理想の人生に近づくのはとても良いことかと思います。ですが、この「転職は当たり前」という言葉、「転職するのが当たり前」という意味だと思っている人が多いのですが、これは大きな間違いです。本日はそんな内容です。

 では、「転職は当たり前」という言葉の正しい意味は何かというと、それは「転職したい人が転職できるのが当たり前」という意味です。比較的若い人は違和感を感じられるかもしれませんが、少し前の時代では転職というのはそれだけ市民権を得ていませんでした。新卒で入社した会社で定年まで働くことがスタンダードだった世の中なので、勤めている会社から別の会社に変わると言うのは「今の会社から逃げた人」と見られるケースも少なくありません。それだけ転職というのは珍しいもので、なかなか手を出せない仕組みでした。

 今は世の中が大きく変わり、新卒で入社した会社に定年までいると言うのは決して当たり前ではなくなりました。ですが「転職するのは当たり前」というのは間違いです。転職する必要がある人が転職するのは当たり前になりましたが、転職しなくても順風満帆に成功している人が転職する必要なんて全くありません。活躍する場を変えた方が経験値やスキルが身に付くという考え方もありますが、大きな会社にいればビジネス領域や職種は無限にありますので、同じ会社にい続けてもキャリア設計次第では十分大きな経験値やスキルを身につけることができます。

 以前、こんなツイートをしました。

 転職とは、自分のキャリア設計を実現していく手段の一つであり、これだけではないのです。転職しなければロクなキャリアを積めないなんて誤解はなくしてください。

 私は現在進行形で大企業とスタートアップの2社で働いていますが、どちらの会社でも転職者が後を経たないです。転職していった人がその後どんな人生になっているのか気になったので、それぞれ数名に話を伺ってみました。

 スタートアップから転職した5人に次の会社を聞いたところ、大手スタートアップに転職した人が1人、同レベルのスタートアップに転職した人が3人、独立した人が1人でした。皆さん共通しているのが「自分のキャリア形成に有効だと思っている」と堂々と言います。給料が増えた人も減った人もいますが、それも皆さん納得されていて、口々に「自分がやりたいことをやって、それが認めてもらえるのが嬉しい」と言います。

 大企業から転職した4人に次の会社を聞いたところ、同レベルの大企業に転職した人が1人、中小企業に転職した人が3人でした。大企業に行った人は「会社は変わったけれど、やることはあまり変わってないし、給料も変わらないかな」と言います。元々この人は珍しいスキルを持っている人だったので、どの会社でも立派に通用しているのかもしれません。残りの3人は「転職なんてやめておけば良かった」「大企業病にうんざりして中小企業に行ったけれど、今更バリバリ働く力は無かったと気づいた」と言います。特に、中小企業に転職した3人の内の一人は元いた会社では50前半で年収1100万程度になりましたが、最初の転職で年収600万になり、2社目で働くことに疲れてれてしまい更に転職し、3社目では年収400万まで落ちたそうです。それでも1社目より相当ハードな仕事をされていると。

 誤解をされたくないので断っておきますと、大企業出身の転職が失敗し易いとを伝えたいのではなくて、自分のキャリアをきちんと見極められている人が転職に成功する、転職することの価値を正しく認識できていれば転職先が格上だろうが格下だろうが本人にとっては関係ないはず、ということをお伝えしたいのです。たまたまかもしれませんが、大企業から転職した人は30半ば以上の人達で、自分が恵まれている環境にいることを忘れ、自分の理想とするキャリアをきちんと見極めず、自分の強み弱みなども正しく認識しないまま転職してしまっていた様に感じられます。麻痺してしまっていたのかもしれませんが、典型的な転職の失敗パターンになってしまったのかと思います。

 ちなみに私は、実は新卒で入社した会社に今でも在籍しています。それと並行してスタートアップでも働き、個人事業主としても活躍しています。大企業で働くことで生活の安定を担保し、スタートアップや個人活動という手段で新しい世界をしるようにしています。これはこれで立派なキャリアアップだと自分で思っています。

 如何でしょうか。転職は必要であればすれば良いですし、したい時にできる環境が今の世の中では十分に整っています。ですが、慎重にすることをお勧めします。転職しないでも理想のキャリアアップが狙えるなら、あえてする必要は無い可能性も十分あります。転職はキャリアアップの為の手段の一つだと思って、色んな選択肢を模索することをお勧めします。

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