ゴールインマインド〜事業継承に部外者は存在しない〜

こんにちは。KM Pacific Investments Inc.の枡田耕治です。本記事をお読みくださりありがとうございます。

前回の記事「家業のリーダーとして次世代へ繋いでいく」で家業の運営に対する大まかな考えをお話しさせて頂きました。今回はその先の「ゴールインマインド」として、最終的に求めている姿についてお話ししたいと思います。まずは、何をこのプロセスのゴールとするのか?そのゴールをどうやって達成させるのか?達成に必要なものは何か?を皆さんと一緒に考えてみたいと思います。

1)何をこのプロセスのゴールとするのか?(目的)

やはり目的なくしては何ごとも意味を失ってしまうと思いますので、目標を立てて進める事はすごく大事だと思います。殆どの場合が「事業の継承を完了させる」という事だと思います。これは事業継承と言う目的になりますが、皆さんには「なんで」と言う事も同時に問いかけたいと思います。「なんで」事業の継承をするのか?「なんで」〇〇さんが継承するのか?「なんで」今なのか?もっと絞ると、なんで事業継承をするべきなのか、そしてなんで今なのか?がクリアになっているべきです。

「継承をするべきか」と言う事については、家業なので当たり前と言う返事が多いと思います。それで十分だと思います。しかし、じゃあ継承を行うにあたって、事業形態(経営スタイルや人材)は本当に継承出来る状況になっているのか?と言う枝先の質問に対しても気を配り答えられるべきではないでしょうか?最悪の場合、元経営者の体力が衰えてきたから次世代を立てるが本当の経営移行は行われない、なんて言うケースも存在します。

さらに継承させたは良いが、先代の経営の色が強すぎたり社員や職人が次世代リーダーを経営者として認めていないなんてケースも存在します。これについては平気ですか?これでは「継承すべきか」と言う質問の前に「継承する目的」が違うと思うのは私だけでないと思います。この様な場合には、先ず現経営者の責任として次世代が受け継ぎ易くする、そして継承後ダウンタイムなく事業が継続出来る環境を用意しておく事が大事です。

そしてこれが次の「なぜ今なのか?」と言うところにかかって来る質問です。「早すぎるのか?」と問われる場合も多いですが、私はあえて「遅過ぎないか?」と言うポイントを発したいと思います。殆どの場合、継承者は家業の中で経験を積んできている為、経営者(親)の背中を見て仕事をしてきていると思います。しかし、実際の経営と経営者の背中を見て働くのには大きな違いが存在します。そして社員としても、息子・娘と言う立場だからと言う固定観念のもと新経営者を受け入れている事が多くあります。そうすると、受け継ぐ経営環境はフィックスされてしまい、新風を入れた空気の循環は難しく感情的要素が入る事も多々あります。

ですから、40代半ばにもなり十分な経験を積んだ上で継承すると安心をもたらしてくれると思います。しかし、それでは後継者自身の新経営環境を確立させるのは至難の業となり、社員にとっても先代の経営環境の中にいる後継者像しか見えないが為に、考え方の転換は無理な場合が殆どです。この様な環境では承継した意味が不明になってしまい、家業の繁栄も危うくなってしまう可能性があります。

では「幾つで継承するのが良いのか?」と言う問題になるのですが、私個人的には社会人としての経験と人間関係が構築出来たのちだと思います。そして、その「見習い」期間中に現役経営者にとっても、次世代リーダーを迎え入れやすい環境を整える時間が必要だと思います。そしてその上で、役職を社長補佐、そして社長代理に繰り上げ、助走期間や現職経営者からのサポートを得ながら自分の色を出していく環境が必要だと思います。これは次世代リーダーにとっての助走期間を優先するというより、社員のマインドセットを徐々に変化させるという事がポイントだと思います。

2)そのゴールをどうやって達成させるのか?(プロセス)

目的が決まった際には、「どの様な方法で進めるのか?」が次の課題になります。これは最終的に求める姿(継承)の具体的な取得方法です。例えばこの経験を社外で得るのか、社内で部署のローテーションを組んで行うかによっても方法(そして次にお話しする仕組み)は異なってきます。しかし、どちらの場合においても欠かせないのが社訓(企業としての考え方)です。このような家族の生き方をベースとした考え方は私生活の中ですでに身についていることが多く、社内でも社外でも考え方を尊重した仕事をする事は可能だと思います。

その上で検討するのが、後継者の持ち得ているものと今まだ持ち得ていないものの見極めです。そして、その持ち得ていない必要ツールを如何に帰社前(社長補佐職就任前)に習得するかだと思います。私としては今後20年、30年先を見越したツール習得も必要だと思っており、海外への理解も必須事項だと思っています。

 海外への理解などは社長就任後でも早期対応案件でないとお考えの方も多いかもしれません。しかし、社長職に就任した後では、この様な基本的なことを勉強する時間がないのが事実です。そして海外などの将来を考えるツール(理解)がない状況で、どうやって20年後や30年後の家業の戦略や方向性をマクロ経済とその影響を理解しながら建てられるでしょうか?決して上目線でのお話ではなく、皆様の中で自問自答し、次期社長と御社の環境に合った準備をして頂ければと切願しております。

3)達成に必要なものは何か?(仕組み)

これらが施されれば、最後に考えることはどの様な次世代リーダー候補のサポート環境を構築するかだと思います。そしてこれは帰社前後のシナリオで考える事ができると思います。例えば、取締役会の役割は既存のままで良いのか?頻度や関わる内容についても検討するべきだと思います。「定款がXXだから」という事で既存のシステムに合わせるのではなく、必要に応じた枠組みの変更も検討余地のある事項ではないでしょうか?ましてや新社長になるというのは会社にとって一大イベントですので、企業の行末を担うという点から、仕組みの再考と再構築は大きな意味があると思います。

また、新次世代リーダーの参謀は誰にするのか?と言うのも、大きな問題だと思います。決して現在の参謀役の人材の解雇などを促している訳ではありません。しかし、過去の経営方法に囚われず、新規経営者のスタイルと色を出した新経営環境を検討することは大事だと思います。

この様な新環境を取り入れる場合には、帰社前の段階から人選と相性の確認は大切だと思います。それも社外で勤務している場合には、どの様に波長の合う人選を可能にして確認するのか?どうやってその為の時間を確保するのかなどは、ロジスティック上においても重要な検討事項です。

そして帰社後の配属はどうするのか?と言う問題もすごく大事だと思います。それは即社長補佐の様な職に就くのか?それとも社内の人事ローテーションに加わるのか?これらは先に申し上げた、本人の準備度や、社員や業務に対してのこれまでの関わりによると思います。よって、継承を受ける側だけでなく、与える側にも色々な準備と課題が与えられます。事業継承の過程には検討事項が多く存在し、どこかのタイミングで当事者だけでなく関係者全員に大小様々な変化が求められるということです。よって事業継承というのは重役レベルだけの問題ではなく、会社をあげた社員一同の問題である事を確認することがスタートラインであり、それから先のゴールを定めて欲しいと思います。


KM Pacific Investments Inc.ホームページ

著書「家業を継げなかった3代目、継がなかった3代目」

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