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バンクーバーの中国:リッチモンド市

※この記事は2018年ごろに執筆されており、文中のデータは最新のものではない可能性があります。各最新情報につきましては必ずご自身で専門家へご相談いただきますよう、お願い申し上げます。

今回はバンクーバー南部に所在する、リッチモンド市エリアについてお話ししたいと思います。先週の広域バンクーバーのまとめでも簡単に書きましたが、2036年までに、BC州の人口の54%が非白人になると予想されている中、アジア系移民人口が全体の60%を構成するリッチモンド市を無視して、現代のバンクーバーは語れないと思います。広域バンクーバーの23地区の一つでもあるリッチモンド市は約22万人の人口から成り立っており、50%は中国系の香港、台湾、中国本土出身者が占めています。下記でも述べる歴史から、日本人にとってもゆかりの深い地域です。

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BC州リッチモンド概要

リッチモンド市はフレイザー川河口の島都市で、近隣のバンクーバー市、バーナビー市、ニューウェストミンスター市やデルタ市への利便性が高い分、水関連問題に悩まされ続けているエリアです。初期開拓時も防波堤建設や大量の水捌けが発展の第一歩でした。その上、平均標高が1メートルという事もあり、周辺は防波堤で囲まれて水害を防ぐ様になっていますが、現在も異常な満潮時や災害時の浸水は懸念事項です。

また、リッチモンドは、北部と南部に大きく分ける事が出来、南部地域では、原住民、日系や中国系の移民による漁港として栄え、魚の缶詰加工産業が流行りました。スティーブストンでは、現在も日本の日本語学校、武道道場や県人会も存在するほど、日系社会が確立しており、漁港では、水揚げや販売を始めとする観光スポットになっています。また、島という立地条件が肥えた地質を提供し、このエリアでは農業(特にイチゴ系)も盛んです。余談になりますが、毎夏季はリッチモンドでのブルーベリーやイチゴ詰みが人気です。

北部エリアは中国系移民が大半を占める新中華街です。バンクーバー市内にもダウンタウンの東側に隣接した中華街が存在しますが、昔の出稼ぎ移民が大半を占めるダウンタウン中華街に対して、リッチモンドの中国系人口はここ20~30年間の間に移住してきた香港、台湾、中国本土移民が占めています。聞いた話によると、昔出稼ぎで来た中国人と最近の中国からの移民は考え方にすれ違いがあり、新中国移民者の多くはリッチモンドに生活拠点を構えているそうです。商業的にも、リッチモンドはインダストリアルエリアとして栄えており、インダストリアルの中でも大型ベイを要する、ロジスティック物件には、アメリカとの国境も近いという事で、適したエリアとして注目を浴びています。ただ、ほかのブログでもお話しした様な、Agricultural Land Reserve(農業専門地区)が多くを占め、リッチモンドにおいても今後のさらなる大型ロジスティックパークの建設は限界に来ています。また、店舗についても、アメリカで頻繁に見る様な車乗り付け可能な地域型ショッピング・センターやショッピング・モールも複数隣接する様に存在しています。その上、日本の100均で有名なダイソーをアンカーとするアートリウム式大型モールも、人気を呼んでいます。その上、地下鉄建設と近隣施設の建設が進むに連れて、駅直結型モールの建設も徐々に増えて来ています。ただ、こちらは鉄道局との連携が難しいのか、プラットフォームが上下線別れていたり、モール直結型入り口も一方のプラットフォームのみだったりと、すごく中途半端な感じがします。日本ではよくある、高架線路下の土地活用についても、こちらでは全く利用されていないのが現状です。

現在のBC州リッチモンドの状況

その様な中、現在のリッチモンドは、他の広域バンクーバー地域よりも、マンション建設ラッシュです。建設は高中低層の鉄筋や木造マンション全ての種類に渡り、最近数えただけでも20本を超える建設用クレーンがそびえ立っていました。また、こちらの建築方法は、日本の様にパイロンを打ち込むのではなく(多分打ち込んでも底なしの様に入って行くと思いますが。。。)、土砂を時間を掛けて沈め、地盤を固める方法をとっています。よって、着工前だと1年ほど前から、建設現場にはコンクリートブロックで囲まれた土砂が十数メートルに積もられ、着工時まで地均しされます。各プロジェクトにこの様な作業が施される為、建設期間は他の広域バンクーバーより延長し、長期計画が必要になって来ます。憶測にすぎませんが、この様な期間とコストを回収する為にも、また中国人購入者の好みに合わせる上でも、最近の建設プロジェクトはとても豪勢に計画されている感じがします。しかし、一回リッチモンドに住んでしまうと、英語を話す必要もなくなる様で、中国語しか話せない住民を多く見ます。

また、平均標高が1メートル(場所によっては0メートル)という事で、浸水や災害時の液状化の恐れとは、常に背中合わせになります。しかし、こちらの西洋人や中国人を含めたデベロッパー及び居住者は、日本人の様に自然災害(地震、水害、浸水)に対しての危機感が薄い様に思います。水辺の平地でも、平気で区分所有物件を建築して売りに出しているのをよく見ます。地球温暖化が原因で、この先10~20年で水面が1メートル以上上昇すると予測されている中、このエリアでは冒頭でもお話しした堤防のみがディフェンス・システムになっており、それ以外のリスク管理ができていない状況です(もちろん水面レベルのみならず、地盤の液状化や堤防破損などの危険性も存在します)。デベロッパーとして、竣工後(売却後)の建設責任を問われる可能性も今後でてくる事を考慮すると、弊社ではリッチモンド地区での建設リスクは高過ぎと考えています。

バンクーバーも感謝祭が終わり(アメリカの感謝祭は11月ですが、カナダの感謝祭は10月です)、典型的な雨の多い秋冬模様の日々になってきました。そんな中でも、気持ちだけでも晴天真っ只中と思い込み、日々活動中です。

皆さんの気持ちも晴天真っ只中という様な、清々しい一週間になります様に。

KM Pacific Investments Inc.代表
枡田 耕治

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