本当にあったアメリカでのテナントトラブル事例
今週は本当にあった業者とのトラブルについてお話ししたいと思います。
これはもう二十数年前の話ですが、サンフランシスコのオフィス物件をアセットマネージャーとして引き継いだ時です。引き継ぎ後には各物件と各物件の管理会社を回って、自己紹介をすると同時に、投資戦略について再度説明して歩きました。しかし、私が枡田の家業に入社するまでは、不動産を本業として関わっていた社員はおらず、管理会社も場所によっては好き放題していました。これは所有者である枡田の責任です。所有者で不動産事業を理解している人間が欠けていた事、そして各物件を頻繁に視察していなかった事が問題でした。同時に私も不動産事業家の家で育ってきたとはいえ、実務経験は限られていたので、即戦力としてはまだ足りないものがありました。また、不動産を知っている社員がいない中では、OJTは名前だけのものでした。
その様な中、サンフランシスコの50,000sf(約5,000平米)のオフィスビルでは世界的にも有名な管理会社がついていましたが、個人的にも何度話をしても管理担当者の考え方が理解出来ず、何度もニューヨークから電話をしたり実際に足を運んだものです。この時代はまだラインやzoomも存在していませんので、のちに分かった話ですが、居留守を使われ相手にされていませんでした。
管理面では一応の管理体制は敷かれていましたが、物件に使われた経費の割合より人件費に使われていたコストの方が多かったのも事実です。(注:グロスリース(オフィスなどの主流賃貸借契約方法)では、基本賃料には家賃と基本共益費が全て含まれており、別途で管理会社からは物件管理に関わった人件費が物件に請求されることになっています)
これらに対しての指摘も実態が見えていなかった状況では、「必要業務」の一点張りで通されてしまいました。しかし、物件の管理状況や各業者との契約内容、テナントスペースへの訪問記録やテナントとの問題などを細かく聞いていく事で、PMが全く物件の内容を把握していないだけでなく、不動産法が特に厳しカリフォルニア州の状況に対して全く準備不足であることが明らかになってきました。
前のブログでもお話しした様に、PMとのチームプレーは重要ですが、このサンフランシスコの物件ではPM会社から連絡をもらった事は一度もありませんでした。結局忍耐を切らせた私はPMのオフィスでのミーティングを強制的に確約させ、このミーティング一件のために5時間かけてニューヨークから入り、45分間のミーティングの最初の一言が「You are fired」でした。今でも鮮明に覚えていますが、当初はPMも粋がって興奮した状況で説明していましたが、各解雇理由となる項目をエビデンスと管理会社の対応記録を一つずつ思い出させる様に紐解いていくと、段々と静まっていき、説明は言い訳になっていました。
こんな状況ではラチが空かないと思い、最後には「僕は何度もあなたに連絡したけど、あなたからは一回も電話連絡してこなかったよね。」と言い伝え、解雇書面を渡し、全ての物件書類について処分する事なく、次の管理会社へ引き渡すように言い伝え先方のオフィスを後にしました。
我々の問題は、解雇言い伝えの前に管理を引き継ぐ業者を見つけて準備をしておく事でした。運営中の物件だったので、テナントに支障をもたらす事は出来ず、また癖のある社長がいるテナントだった為、野放し状態にも出来ませんでした。私も解雇した業者に乗り込む前から後任を探し出し、面接をして、引き継ぎ体制を準備していました。そして、前任者に解雇通知を言い渡すと同時に引き継ぎ業者の名前と担当者も前任者に言い伝え、後任担当者にすぐ電話をして書類受け取りの段取りを即行うよう手配しました。この様な場合、解雇された業者の嫌がらせで、低額経費のレシートや管理記録をわざと紛失させる事もまだこの当時はありました。なので、引き継ぎは速やかに行われる必要がありました。結果、全ての段取りを行う為に、解雇通知が数ヶ月遅れてしまったのも事実です。
業者を変える場合、解雇するのは難しい事ではなく、問題なく引き継ぎ運営をしてくれる業者をみつけ、スムーズに物件管理を継続させる事が一番の難関で重要ポイントになります。サンフランシスコの案件では同市場のビル協会の知人に連絡を取り、管理会社ではなく、頼りになる責任あるPMを紹介して貰いました。結果引き継ぎは問題なく終了し、物件運営も滞りなく行われていきました。それでも、アセマネとしては最初の数ヶ月はこまめな連絡と物件訪問を含めた管理業務内容の確認が必要です。この様な確認に割かれる時間は多大なもので非効率なのは言うまでもありません。私の経験話でも明確になる様に、管理会社の選定はとても重要で物件のパフォーマンスを左右させます。
KM Pacific Investments Inc.代表
枡田 耕治
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