2023年に読んだ本ベスト10冊

今年読んだ本で、心に深い印象を残した10冊を記します。順不同です。

◆モレルの発明/アドルフォ・ビオイ=カサーレス
ずっと読みたいと思っていたけれど、ようやく古書店で出会えた。噂(?)に違わぬ傑作。『去年マリエンバートで』を彷彿とさせ、映画にまつわるメタな構造もあり、自分のストライクゾーンど真ん中な一冊だった。

◆寝煙草の危険/マリアーナ・エンリケス
個人的にスパニッシュホラー文芸という新たな扉を開いた一冊。マジックリアリズム的でありながら、現代社会の厭な感じが作中に通奏低音のように響いている。過去作も読みたいな。凝ったデザインの装丁も素晴らしい。

◆アメリカへようこそ/マシュー・ベイカー
こちらも現代アメリカの歪みをうまく落とし込んだ一冊。奇想かつ皮肉がきいた作品が多く、なんとなくモンティ・パイソンに近いものを感じた。かなりのボリュームだけど一気に読ませるものがあった。

◆夜はやさし/F・スコット・フィッツジェラルド
友人のバンドが『ディック・ダイヴァー』という曲を演奏していて読みたくなり、せっかくなので新訳を購入して読む。角川文庫版よりもこちらの方がはるかに良かった。自分はフィッツジェラルドが大好きなことを再確認。


◆柴田元幸責任編集 MONKEY vol.30
オースターやダイベック、ミルハウザーなど既知の作家が素晴らしいのは折り込み済みだったけれど、ローラ・ヴァン・デン・バーグやブレンダ・ペイナードという新しい作家がとにかく面白くて衝撃を受ける。連載陣の作品では岸本さんの書き出しにドキっとする。


◆時の襞から/柿本多映
自分が俳句にハマったきっかけである柿本多映の随筆、評論集。文章がとにかく流麗で読みやすく、かつ、ただならぬ知性と審美眼を持っていることが伺える。美術への造詣も深く、こんな人になりたいと強く思った。

◆風よあらしよ/村山由佳
去年大杉栄の自伝を読んだので今年は村山由佳の評伝を、と思い読み始める。過去とは思えないほどの現代性を持っており、のめり込む様にページをめくった。同時期に観た『バービー』、『福田村事件』と完全に地続きだった。

◆砂の都/町田洋
待ちに待った町田洋の新作漫画。記憶が建造物になる不思議な砂漠の街で暮らす人々の物語。本当に、繊細な優しさを持っている人なんだな、と思う。久しぶりに漫画を読んで泣いた。

◆楢山節考/深沢七郎
日本文学の傑作と呼ばれる表題作をなぜ今まで未読だったのかと激しく後悔。来年は日本の作家をもっと読もうと決意する。三島由紀夫が賛辞を述べたという『東京のプリンスたち』も瑞々しい若さが作品全体を包んでいて、素晴らしかった。


◆越後三面山人記/田口洋美
この本を読んだからこそ、NIIKEI文学賞で佳作を頂いた『朽腐』が書けた。自分よがりの感傷で誰かの人生を計ってはいけない。そして自分が生きる文化圏の外の暮らしを知ることはとても大事なことなのだと痛感する。

読みたい本がどんどん積まれて、果たして死ぬまでに読み切れるのか不安ですが、量だけでなく、一冊一冊をじっくり咀嚼しながら読みたいと思う今日この頃です。

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