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コックとして、アメリアで働き始める

見習いの僕の仕事は、次のふたつが任された

1、直径30センチもあるパセリの束、これをみじん切りにすること

2、直径80センチもある両手の鍋いっぱいの、アサリ・ムール貝・マテ貝の酒蒸しをした後、全て貝殻から身をむくこと

これを素早くやると、次の仕事がもらえる
なので、朝一番に誰よりも早くキッチンに入って、これらの仕事をしながら、他のコックのやっている仕事を見て覚えた
1日の日課は こちら で確認できます!→2段落目です!

朝10時になると、併設しているバールから差し入れが届く
大きなカラッファに入ったスピリッツだ!
これはヴェネツィアでは有名すぎる食前酒で、アペロールやカンパリに白ワインを加えて、最後に炭酸水で割ったものである
バールで注文するとオリーブやオレンジスライスなどが入ってくるが、キッチンスタッフにはオプションは入っておらず、その代わりに少々アルコールが強くなっていたな…顔を真っ赤にしながら料理をしていたなー!

実はこのTrattoria Dall'Ameliaは、オーダー表が無い

どの店でも使っている紙のオーダー表
ここアメリアでは全てのオーダーが口頭でのオーダーだったんです
席数にして100名前後、もちろんお客様はバラバラに入店されますので、順番にオーダーが入ってくる
僕は前菜のコールドテーブル前の準備とメインのストーブ前の準備をしたが、本当に容赦無くオーダーが入ってくる!

アメリアでこの前菜を目当てで来客する人もいるくらい有名な一品である
『帆立貝とポルチーニきのこ、ルッコラのバルサミコ風』
このトマトのコンカッセも、毎朝かなり準備したなー!

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カメリエーレとの口論

カメリエーレ達は、自分のテーブルの注文を早口でオーダーすると、すぐに客席の中に消えてしまう そこで、僕は聞きそびれたりすると、たちまち大喧嘩!
言葉で応戦できなかったので、最後には胸ぐらつかんで怒りをぶちまけるしか方法がなかった…

その中でも一番の思い出はミケーレだ!金髪のモジャモジャ頭、ほおはこけていて、下着の中にT-シャツとワイシャツを入れる癖がついているミケーレだ!
彼は言葉がわからないことを、すごく茶化していじってきていたので、ついに取っ組み合いになった
お客様から返ってきた余ったトマトソースがたっぷりついたオマール海老の殻を投げつけてきた、本当に悔しかった

その日の営業が終わり、帰宅した後はメラメラと怒りが込み上げてきたので、和伊辞典を引っ張り出してきた
stupido , testa di cazzo , scemo , stronzo , matto …と、さまざまな悪口をメモ帳に書き、それを翌日の仕事場に持参した

カメリエーレのミケーレとの ”リベンジ” 口論!

なんてワクワクする出勤!
今日はミケーレに悪態をついてスッキリできる!
営業が始まる頃、ミケーレがまたやってきた
今日の僕はいつもと違う、安心の ”悪態ノート” がある!

「ミケーレ!stupido!」とノートを見ながら第1砲弾を放つ!

ミケーレと取り巻きのカメリエーレ2~3人が笑いながら近づいてきた

「ミケーレ!testa di cazzo!」とノートを見ながら第2砲弾を放つ!

さらに後ろから他のカメリエーレも興味深そうに寄ってきた

「ミケーレ!scemo!」とノートを見ながら第3砲弾を放つ!

すると今度はコックたちも寄ってきた

「ミケーレ!stronzo!」とノートを見ながら第4砲弾を放った!

ついに騒ぎに気付きシェフも僕のところに来て、ゲラゲラ笑いながらノートを取り上げた「あーオーニー、オーニー、ブラーボー」というと一斉にみんなも笑ってミケーレとの再戦はあっけなく終わった

いうまでもなく、その日以降 僕はミケーレと一番仲良くなった

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