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タイはなぜ観光大国なのか。「サワディーカー」でつくられる世界観

こんにちは。世界一周しているライターのコージーです。

アジアを代表する観光大国といえば、どの国を思い浮かべるでしょうか?

中国?インド?日本?

観光業で大きく成功している代表国のひとつが、東南アジアのタイ王国です。

国連世界観光機関(UNWTO)によると、2019年にタイを訪れた観光客は4000万人。アジアでは中国、トルコに次ぐ3番目、世界で8番目の観光大国です。

タイは日本人からも人気の観光地です。タイを訪れる日本人は年間165万人(2018年)。世界で5番目に多く日本人が訪れる国なんです。

なぜタイの観光業はこれほど成功しているのか?タイのどんなところが旅人を魅了しているのか?

実際にタイを旅しながら考えたことを書いてみます。

ベトナム・カンボジアとは違うタイ人のあいさつ

旅行先として、タイがいかに素晴らしい国であるか。これまで多くの旅行者や観光の専門家が多くのポイントを指摘してきただろう。

お手ごろな物価、バラエティ豊富で美味いもの尽くしのタイ料理、仏教寺院や水上マーケットなどの観光資源など、タイの魅力は挙げればキリがない。

今回、東南アジア3ヶ国を旅したことで、新たな1つの仮説が生まれた。

タイが旅人を魅了する理由は、タイ人のあいさつにある。

タイを旅していると、そこら中から「サワディーカー(タイ語で「こんにちは」)」という声が聞こえてくる。カオマンガイ屋台のおばちゃんも、フルーツスムージー屋台のおじちゃんも、コンビニの店員さんも「サワディーカー(男性はサワディーカップ)」と笑顔で言ってくれる。

これは当たり前ではない。

タイは世界一周3ヶ国目。その前に訪れた同じ東南アジアのベトナムとカンボジアでは、状況が異なっていた。

ベトナムでは「シンチャオ(ベトナム語で「こんにちは」」という言葉はほとんど聞かれなかった。観光客相手に発せられるのはだいたい「ハロー」。こちらから「シンチャオ」とあいさつして、ようやく「シンチャオ」と返してくれるかどうか、といった具合だった。

カンボジアでも「スオスダイ(カンボジア語で「こんにちは」)」という言葉を聞くことはほとんどなかった(「オークン(ありがとう)」は数回耳にした)。

タイ人はベトナム人やカンボジア人と比べて、観光客に対して現地語で話しかける割合が圧倒的に高い。それが3ヶ国を連続で旅した僕の肌感覚だった。

旅の醍醐味を感じる瞬間

タイ人は観光客に対してタイ語で「サワディーカー」とあいさつをしてくれる。

では、なぜそれがタイを観光大国へと押し上げている要因と考えられるのか。

タイのフルーツ屋台でこんな出来事があった。カットされたスイカを指差して、たずねた。

「ニータオライカップ?(これいくら?)」
「イーシップバーツ(20バーツ)」

おばちゃんは僕の問いかけに対し、タイ語で答えてくれた。

嬉しかった。僕のタイ語での問いかけにタイ語で返してくれたことで、おばちゃんとつながれた気がした。

旅人の気持ちは案外シンプルなものだ。ごく簡単な会話でも、現地の人と現地の言葉でやりとりが成立すると、たまらなく嬉しいのだ。旅人として歓迎されたと思えるこの瞬間は、旅の醍醐味でもある。

ホスピタリティーとは

タイ人は、旅人の気持ちを知っている。ホスピタリティーとは何かをよく理解している(意識的か無意識的かはさておき)。

ホスピタリティーとは、豪勢なサービスを提供することではない。ほんの少しの想像力を働かせ、相手を気持ち良くさせることだ。

「これいくら?」
「20バーツ」

たったこれだけの会話でも、通じ合えた時の喜びは大きい。

あくまで仮説だが、タイは世界の中でも、現地人と観光客で成立する会話の数が圧倒的に多いと思う。

「サワディーカー(こんにちは)」
「サワディーカップ(こんにちは)」

たったこれだけの簡単な会話。それでも僕たち旅人はタイに来た実感を持つことができ、タイから歓迎されている気分が味わえる。

観光客に対して、現地語であいさつする。これが旅人から支持される国になるためのカギなのだ。

「ハロー」とドヤっていた過去の自分

日本ではどうだろうか。外国人に対して、日本語であいさつできているだろうか。

僕は大学生の時、渋谷のクリスピークリームドーナツでアルバイトをしていた。場所柄、外国人のお客さんが多く来店していたのだが、彼らに対して僕の接客の一言目は「ハロー」だった。

しかも、たかがハローなのに、少し得意気に話していた気がする。「僕、英語を話せますよ」といった感じで。今考えると、僕はホスピタリティーというものを全く分かっていなかった。

店員の僕が得意気に話して、どうする?歓迎する側の日本人がドヤって「ハロー」と言って、何になる?

僕がすべきあいさつは「ハロー」ではなく「こんにちは」だった。そうすれば観光客の方も「こんにちは」と返してくれる。「やったぜ、日本語で日本人と会話できたぜ」と観光客を気持ち良くさせるのが僕の仕事であり、それこそがホスピタリティーだ。自分が得意気になっている場合ではない。

「こんにちは」
「こんにちは」

このように日本語でのあいさつを交わした後、英語で細かい接客をするのがベストだろう。

「こんにちは」から始めよう

海外を旅する時、現地語の「こんにちは」くらいは覚えていく旅人が多いと思う。自分自身も最低限「こんにちは」と「ありがとう」はその国の言葉で言うようにしている。

だからこそ、実際に現地語を話せて、相手も返してくれた時の感動は大きい。

仮に、現地語の「こんにちは」を旅人が知らなかったとしても問題ない。

出会い頭の第一声は、どの国でもたいてい「こんにちは」のようなあいさつだろう。多くの旅人はそのように理解し、あいさつを返してくれるはずだ。

言葉は、世界をつくる。

外国で「ハロー」と言われると、たしかに言葉が通じる安心感はある。だが、せっかく訪れたその国の世界観が感じられない。

タイで出会う人全員が第一声で「サワディーカー」と言う。たったその一言で、「ああ、僕はタイに来たのだ」と実感する。タイならではのスパイシーな料理や南国らしい風景と相まって、そこら中で聞こえる「サワディーカー」がタイという国の世界観をつくっているのだ。

この世界観に魅了され、旅人の多くが「タイにまた行きたい」と感じるのだろう。

観光立国を目指す日本。外国人からもっと日本を支持されるために、タイの良いところを取り入れてみてはどうだろうか。

観光客を相手に商売をしている店員さんも、僕を含めた一般人のみなさんも、まずは「こんにちは」から始めてみませんか?





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