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どうせまた僕はあの街に行く

出会いは5年前の秋だった。

コムローイと呼ばれるランタンが一斉に空に向かって放たれる。夜空一面が灯で埋まる幻想的な光景。ディズニー映画の「塔の上のラプンツェル」のような世界が広がる。世界にはこんなに美しい景色があるのか。僕は友人とただただ空を見上げていた。

タイ・チェンマイで迎える21歳の誕生日。毎年太陰暦12月の満月の夜に行われるロイクラトン祭りに僕らは参加した。タイ全土で行われる伝統行事だが、特に素敵な風景が見られることで有名なチェンマイまで、留学中のバンコクから夜行バスではるばる9時間かけてやってきた。

この世に生まれて21年。生きててよかった。本気でそう思わせる情景だった。美しいという言葉では言い表せられないほど美しかった。僕はチェンマイに一目惚れした。大学の授業があるので、翌朝には帰る1泊2日の弾丸旅行。ロイクラトン祭りに参加しただけだったが、この街には他にもたくさん魅力があるはずだと思った。

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それから1ヶ月もしないうちに再びチェンマイを訪れた。前期の期末テストが終わり、すぐに夜行列車に飛び乗った。今度は14時間。到着までの長い時間も好きな人に会いに行く旅のようにわくわくした。今回の滞在は9日間。優勝を目指したチェンマイマラソンでは3位に沈み、悔しかった。郊外にある温泉では久しぶりの湯船に浸かって感動もした。

そのあとはタイマッサージの学校に1週間通った。マッサージはされる方だけが気持ちよくなるものだと思っていたけど、する側にもストレッチ効果があると知った。「世界一気持ちいいマッサージ」の奥深さを身をもって体験した。レッスン最終日はクリスマスで、マッサージの実技試験があった。試験対策ということで、クリスマスイブは夜23時過ぎまで学校で知り合ったおばさま方と体を揉み合った。きっとまた僕はこの街に来るだろうと思いながら、バンコクに帰った。

翌年の6月にもまた行った。留学期間が終わり、帰国する直前にもう一度、行っておきたかった。マッサージ学校にまた通って、前回の続きでレベル2を受講。ナイトマーケットをぶらついたり、チェンマイ名物の美味しいカオソーイ(カレーヌードル)のお店を探し歩いたりした。喧騒の街・バンコクとは違って、のんびりとした穏やかな雰囲気。心落ち着く場所だった。

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それから4年。社会人になり、なかなか旅ができていない。でも僕は知っている。どうせまた僕はチェンマイに行く。

4度目のチェンマイでは何をしよう。もう一度、ランタンの光で満たされる夜空を見に行こう。今度こそチェンマイマラソンで優勝しないと。タイマッサージのレベル3を受講したい。カオソーイのとびきり美味しいお店も2つ行かなくちゃ。あと、行きつけのカフェでパッションフルーツシェイクを飲むのも外せない。

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