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アフリカの洗礼を浴びたタンザニア初日【世界一周170日目】

世界一周170日目まであと5分。23時55分、4日間お世話になった宿を出る。

午前3時発のバスでルワンダからタンザニアへ向かう。1時半くらいまで宿で時間をつぶしてからバスターミナルに向かおうと考えていたが、宿のスタッフから「1時過ぎるとモト(バイクタクシー)が捕まらなくなるから、12時には出た方がいいよ」とアドバイスをもらい、早めに出ることに。

大通りに出ると、モトはたくさんいた。やはりこの時間なら大丈夫だった。モトを捕まえる。

ケニアやウガンダでは、流しのタクシーは危険なのでUberやBoltなどの配車アプリを必ず利用していた。しかしルワンダでは流しのモトで問題ない。ぼったくられるケースは少ないし、必ずヘルメットを渡されることからも、安全への意識が比較的高いことが分かる。

ヘルメットを装着して準備完了。バイクは夜のキガリへと走り出す。

ルワンダは治安がいいとはいえ、こんなに夜遅くに外に出たことはなかった。だから驚いた。夜景の綺麗さに。真っ暗なキガリの街。家々の放つ光が美しい。

夜の街を疾走するのは気持ちいい。ただ、寒い。車通りが少ないからか、バイタクの兄ちゃんはなかなかのスピードで飛ばす。風を切る。めちゃくちゃ寒い。Tシャツに1枚長袖を羽織る程度では、話にならない。

寒さに耐えながら、バイクに必死につかまっていると、あっという間にバスターミナルに到着。バイクで約10分の距離で、運賃は1500ルワンダフラン(約180円)。

さて、問題はここからだ。バスは3時発で、2時半集合と言われていた。現在の時刻は0時9分。どう時間をつぶせばいいのか。

さすがにこの時間だ。近くのカフェも営業していない。バスターミナルで待つしかなさそうだ。バス会社の窓口に行くと「タンザニア行くの?チケット見せて」と言われる。チケットを提示すると、スタッフは名簿にチェックを入れていた。まだ乗車時間まで3時間近くあるのに、作業が早くないか。

「タンザニアシリングに両替しないか?」と兄ちゃんたちが寄ってくる。もちろん拒否する。ぼったくられるのはごめんだ。両替は両替所でするのが一番。

寒いので、もう1枚薄手の上着を羽織って、ベンチに座る。同じバスに乗る先客がいた。彼の名はクリスチャン。ルワンダ人で、お父さんと弟と一緒だった。

これまでの旅路やこれからの旅程についてクリスチャンと話していると、時間は過ぎていった。

待て待て、本当に寒い。僕はバックパックをあさって、秘密兵器を取り出した。

ユニクロのウルトラライトダウン。世界一周170日目にして、初登場だ。この異常な寒さはもうこいつに頼るしかない。

着るのが久しぶりだからなのか。ウルトラライトダウンを取り出すと、白い羽毛があちこちから出ていた。まあ何でもよい。温めてくれさえすれば。iPhoneの天気アプリを見ると、気温18℃と表示されているが、そんなものではない。体感気温は12℃くらい。

寒さをしのぎつつ、クリスチャンたちと交流していたところ、僕たちはスタッフたちに呼ばれた。「こっちに来い」

付いていくと、そこにはバスがあった。2時4分、バス乗車。3時間外で待つかと思っていたので、早めに乗れたのはありがたい。徐々に乗客が集まってきて、2時29分出発。

え、早くない?チケットには2時30分集合、3時出発と書かれているが...。乗り遅れた人はいないのだろうか。ギリギリまで宿で待機する作戦を実施していたら、僕はバスを逃していたかもしれない。宿のスタッフに感謝。

キガリから国境までは約5時間と聞いていた。ここが最大の睡眠チャンス。僕は目を閉じた。どこでもすぐに寝られるのは僕の強み。一瞬で眠りの世界に入った。

***

窓から入る光で、僕は目を覚ました。夜は明けて、日が昇っていた。

窓際に座る僕に、日差しが照りつける。暑い。ウルトラライトダウンを脱ぐ。7時35分、ルワンダとタンザニアの国境の町ルスモに着いた。

まずは健康チェックだ。体温を測られた。36.6℃。問題なし。ここまで20ヶ国を旅してきて、入国に際し健康チェックがあったのは初めてだ。

タンザニア入国にはビザが必要。ビザ申請書を記入し、簡単な質問に答えると、無事にビザ取得できる。値段は50ドル。カード支払いできるとの情報もあったが、ダメだった。しかたなく、貴重な50ドル札を手渡す。

入国審査を終えると、目の前に両替所が。ここで残ったルワンダフランをタンザニアシリングを手に入れることとしよう。

ところが両替所に行くと「あいつらに両替してもらって」と言われる。あいつらとは、そこらへんをうろついいる非公式の両替兄ちゃんのことだ。理由は謎だが、しかたない。街に行ってからしっかりと両替するにしても、少しは現金が欲しかった。

両替兄ちゃんに10000フランを渡すと、15000シリングが返ってきた。両替アプリで確認すると、10000フランは約20500シリング。ボラれている。

「やっぱいいや。10000フラン返して」と言うと、彼は慌てて20000シリングを渡してきた。これなら、レートは悪くない。ひとまず約1200円分の現金を確保した。

それにしても、おそろしい。普通にぼったくってくる。チャンスがあれば1シリングでも多くもらおうとする彼らに対し、チャンスがあれば1シリングでも安くしようとする僕。これは、絶対に負けられない闘いだ。

両替詐欺を何とか交わし、いよいよタンザニア入国。時刻は9時20分。実は、ルワンダとタンザニアには1時間の時差がある。ルワンダでは8時20分だが、タンザニアに入国し9時20分になったというわけだ。

ここからはバスを乗り換えて、タンザニアのカハマという町へ向かう。カハマには、用はない。僕が行きたいのはアフリカ最高峰キリマンジャロの麓にある町モシ。ただモシには今日中に辿り着けないため、途中のモシで1泊する必要があるのだ。

カハマには13時ごろに到着すると聞いていた。カハマに着いたら残りのお金を両替したり、SIMカードを購入したりしよう。そう考えていた。だから、タンザニアに入り、再びやってくる両替兄ちゃんやSIMカード兄ちゃんのことは完全に無視していた。

国境のよく分からない町よりも、ある程度大きいカハマでやる方がいいと思った。ところが、カハマ行きのバスが全然来ない。バスを待っている間に仲良くなったルワンダ人のモサによると、バスは11時に来るらしい。1本目のバスはすでに行ってしまったと。11時ということは100分待ちだ。スプラッシュマウンテンに乗れるではないか。

僕が買ったバスチケットはキガリからカハマ行きだ。バスを途中で乗り換えるのはいいとして、こんなに待たされるとは。そのくせして、バス会社のスタッフは「バスが来たら急いで乗るように。たくさん人がいるからテキパキ行動して」と言っているらしい。いや、カハマ行きのバスよ、お前こそテキパキしてさっさとやって来い。

11時に来るとのことだったが、11時になっても当然のようにバスは来ない。マジで、お前が急げ。

結局バスが出発したのは11時44分。直後、2つの異変に気がつく。1つ目は、座席が狭いこと。できる限り深く座り、姿勢を正しているが、膝が前の座席に当たって痛い。

2つ目は、バスのスピードが遅いこと。さっきは、バイクに抜かれていた。何で?しかもしょっちゅう停車するのだ。各地で人が乗り降りする。

13時に着くといったルワンダのバス停のスタッフよ、なぜ13時と言った?「早ければ13時」「調子のいい時は13時」ではなく、自信満々に「13時に到着する」と言い切ったよね?なぜ?

いや、よくない、よくない。ちょっとイライラしてしまった。遅刻や想定外は、旅につきもの。予定通り、計画的な人生を歩みたければ、東京にいればよかったのだ。想定外こそ人生の醍醐味。だから、僕は旅に出たのだった。

どうせカハマに早く着いてもやることはない。何時に着くだろう?と思考することはやめた。今日のミッションはカハマに着くことだから、無事到着できれば何時でもよい。

ただ、座席の狭さは本当につらかった。脚が呼吸困難に陥っていた。途中、思い切って脚の位置を変えた。

これはナイス判断だった。脚を前ではなく、斜めに伸ばすことで、少し距離を稼ぐことに成功。膝の呼吸が再開された。明らかに隣の席のスペースまで脚が伸びていたが、まあいいだろう。隣の人は通路側に脚が伸ばせるし。

それにしてもこのバス、停車が多すぎる。長距離バスなのに、路線バスのように人々の乗り降りが頻繁に発生するから、全然進まない。

たくさんの人が乗ってきて、気付けば立ち席が発生していた。立っている人もいると考えると、座れるだけありがたい。

とはいえ、苦しいものは苦しい。このつらさを忘れるためには、気を失うしかない。どうせやることもないし、バスに乗っている間の多くの時間を睡眠に費やした。寝て起きて、寝て起きて、また寝て起きて。

このサイクルを何度も繰り返ししているうちに、ついに、その時がきた。17時40分、カハマ到着。何時間遅れなどと考えるのはやめよう。とにかく無事に着けたことを喜ぼう。15時間越えの移動、よく頑張った。

ただ、僕にはもう一仕事残っていた。両替とSIMカード購入、明日のモシ行きのバスチケットの購入、それに宿泊先の確保だ。

バスを降りると、人が集まってくる。

「どこ行くんだ?明日どこ行くんだ?」

カハマはタンザニア北部を西から東へ行く際の中継地点になっている。カハマで1泊してから翌朝、目的地へ向かうのが多くの旅人のルートなのだろう。

バスのチケットも購入したいが、その前にまずは両替だ。「まず両替したい」と言うと、近くの売店に連れて行かれた。レートを聞くと、10000ルワンダフラン=18000タンザニアシリングだという。今朝、ぼられそうになった兄ちゃんより悪いレート。「ノーサンキュー」と店を後にする。

再びバス会社の連中に囲まれる。「ルワンダフランを両替したい」と言うと「オッケー。今から両替するやつを連れてくる」とおっちゃん。

「レートを教えてほしい。10000フランだといくらになる?」
「持ってる通貨は何?」
「ルワンダフラン。10000フランだといくらになる?」
「ドルはないの?ユーロは?」
「ルワンダフランしか持ってない。ルワンダフランだと両替できない?できるならまずレートを教えて!」(本当はドル持ってるけど、貴重なドルをこんなところで使うわけにはいかない)
「ルワンダフランの両替は大変なんだよ。ドルはないの?」

バカなの?言語の問題ではない。会話が通じない人が、僕は苦手だ。

質問に答えろ。ルワンダフランからタンザニアシリングに両替できるのか。できるならレートはいくらなのか。それを聞いてる。

その情報をもとにここで両替するのか、他の両替所を探すのか判断するのは、僕だ。勝手にドルがどうとか、フランで払うならいくらとか提案するな。悪い人ではなさそうだが、僕はこういう、人から主人公性を奪う行為が嫌いだ。

両替するのか、バスチケットをどの会社で買うのか、どの宿に泊まるのか。全てを決めるのは僕だ。勝手に意味不明な提案してくるな。ちゃんと質問に答えろ。

改めて確認すると、ルワンダフランからの両替はできないとのこと。両替するやつを連れてくるというのは何だったんだ?こっちは一貫してルワンダフランから両替したいと言っているのに。マジで意味不明。

バスターミナルを出てすぐ両替所を見つけた。何だ、簡単に見つかるじゃないか。と思いきや、CLOSEDの看板が。土曜日は16時で閉店だという。

もう少し歩くと、ATMがあった。本当は残りのルワンダフランを両替したかったのだが、この先を探してもいい両替所を見つけられる気がしなかった。ベストではないが、ATMでタンザニアシリングをおろすことにした。

無事現金をゲットし、バスターミナルに戻る。明日6時発のモシ行きのチケットを購入。SIMカードはパッと見、売ってなさそうだったので今日はあきらめることにした。宿にはWi-Fiあるだろうし。

ゲストハウスについては、バス会社が提携している宿があるという話だった。宿のスタッフがここまでピックアップにも来てくれるらしい。その宿のクオリティが気になるところではあったが、1泊15000シリング(約900円)の値段だけ確認して、ここに泊まることにした。

すでにあたりは暗くなってきており、この状態で1人、宿を探すのは得策ではない。何より、長すぎる一日に、疲れていた。

今思えば、国境でカハマ行きのバスを待っている間、両替もSIMカード購入もすませておけばよかった。

10000フランを20000シリングに変えてもらえるなら、悪くない。あの時、全額両替すればよかった。あの長いバスの待ち時間に、SIMカードを挿入しておけば、余計な不安を抱かずにすんだし、長いバス移動の時間にネットを使うこともできた。

後悔しても後の祭りだが、せめて聞いておけばよかった。「レートはいくら?」「SIMカードいくら?」と。国境付近はろくなものではないだろう、と決めつけて、何度も勧誘されたのに「ノー、ノーサンキュー」と突っぱねてしまった。中途半端な知識と経験で勝手に決めつけてしまうのが、自分の悪いところだ。

反省をしていると、宿の人が迎えにきてくれた。19時20分、チェックイン。思ったよりも清潔。しかも個室。なぜか料金は15000シリングではなく、20000シリング(約1200円)だったが、それでも安い。

宿の前の屋台で夜ご飯を調達。鶏のスープとフライドポテトをオムレツにしたチプシ・マヤイをいただく。

宿にはWi-Fiはあったが、なぜか機能していなかった。明日に向けて、連絡をとりたい人がいたのだが。まあデジタル・デトックスになるから、いいとしよう。

移動しかしていないが、とにかく疲れた一日。シャワーは水しか出なかったが、それでも充分に感じた。明日も早いので21時30分、ベッドイン。

明日はどんな一日になるのだろう。何があってもマイペンライ!

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