【シナリオ】土曜日の放課後(3枚)

   人 物
 中谷裕作(16)学生
 藤本哲也(16)学生・中谷の同級生

◯千寺川沿い・河原
   町の中心を流れる川。両側は土手であり、散り際の桜が立ち並んでいる。広めの河原には雑草が生い茂り、ゴミが点々と落ちている。
中谷裕作(16)は、トングとゴミ袋を持ち、橋の下の影でゴミ拾いをしている。腕で額の汗を拭う。

◯同・川
   中谷はズボンの裾をまくり、川の真ん中に投棄された錆だらけの自転車に向かって歩く。自転車を持ち上げようとすると何かが手に刺さり、少し血が出る。
中谷「いっ」
   藤本哲也(16)がその様子を土手の上から見ていて
藤本「おーい、何やってんの」
   藤本、土手を駆け降りて、裾もまくらず川に入って中谷に駆け寄る。
中谷「お、おう」
藤本「まあ貸せって」
   藤本、自転車を肩に担いで河原の方に運んでいく。
   中谷はそれを呆然と見ている。

◯同・土手(夕)
   藤本と中谷が並んで土手に座っている。錆びた自転車と中身の詰まった二つのゴミ袋が河原に転がっている。
藤本「へぇ、先輩との思い出の場所、かぁ」
中谷「そこまでは言ってない」
藤本「え、いつもキャッチボールしてたんでしょ」
中谷「そうだけど」
   藤本、手元の石ころを中谷の真上に投げる。
   中谷、左手でキャッチする。
藤本「うまいじゃん。うちの部活来ない?」
   中谷、石ころを藤本に返す。
藤本「いつもやってんの、これ?」
中谷「毎週」
藤本「(呟くように)ふぅん。中谷ってそういう奴だったんだ」
中谷「え?」
   藤本、河原の方に降りて自転車とゴミ袋を持ち上げる。
藤本「これ、どっか持ってくんでしょ」
中谷「ああ、うん」
中谷、立ち上がる。

◯同・河原
   雨が降っている。
   中谷と藤本が傘を差しながら草刈りをしている。

◯同・河原
   中谷と藤本を含めた3人の男子が竹箒で落ち葉を集めている。土手には葉の落ちた桜が並ぶ。

◯同・土手(夜)
   中谷と藤本を含めた男女6人が土手に並んで座り、石焼き芋を食べている。マフラーや手袋、ネックウォーマーを装っている。
   石焼き芋屋が土手の上に止まっている。

◯同・河原
   花見客で賑わう。所々にゴミ箱が設置されている。
   中谷を含め、何人かの学生は空のゴミ袋を持って周回している。
   藤本がやや遠くから
藤本「裕作ー、こっちゴミが溢れそう」
中谷「あいよ」
   中谷、走っていく。

〈了〉

*  *  *

 今回のお題は「一年間」でした。200枚原稿用紙8枚の中でいかにして時間を自然に飛ばすかということ。使いやすいのは四季や服装です。それに加えて今回は、掃除仲間が徐々に増えていく様子で表現しました。他にも、ビルが建設されていく過程とか、植物が成長する様子、受験生の様子など様々な表現ができそうですね。
 追記、写すものが変わる度にト書は改行することにも注意。

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