人生、毎日が自己ベスト
外資系との合弁会社に勤めていた、とは言っても、親父の顧客は大半が日本人。
時折商談のあった外人との商談は、英語が堪能な上司が担っていたそうで。
「アメリカに行きたい!」なんてことを言ってた割に、研修の後も結局日々の仕事に追われて、英語の勉強などしていなかった親父。
上司からは、「勉強しとけよ」と指摘されてはいたものの、身が入らずにいたそうです。
ある商談の後、上司から「お前、全く勉強してないだろ?やる気がないならこの仕事辞めていいぞ」と注意されたそうで。
流石に親父もこれには反省したそうで。
そらそうでしょう。英語が必要なのに、いつまでも上司に頼っていたら仕事が任せられない。
これをきっかけに英語を勉強し出すのですが、そんな中親父はある問題に直面します。
当時、東南アジアの市場と取引をしていた親父の会社ですが、「アジアは儲かる」ということに気づいたアメリカの親会社が、急に日本からの取引を止めてアメリカとアジアで直接取引をする、と言い出したのです。
当然、日本側は猛反発。せっかく苦労して開拓した自分たちの市場を横取りされたのではたまったものではありません。
アメリカ側との話し合いの場が設けられたのですが、相手の主張は「日本の取引のやり方は全くなってない。契約書も滅茶苦茶だ」というもの。
当時の親父はまだ相手が何を言っているのかわからず、ボロカスに言われている雰囲気は伝わってきていたものの、全く何も言い返せない状況が悔しくてたまらなかったそうです。
そんな中、唯一「ignore」という単語が聞こえたそうです。
「無知なやつが作るから、こんな契約書になるんだ」と言われたのだとか。
あんなに屈辱的なことはなかった、と親父は言います。それ以来、そのアメリカ人を見返したい一心で英語を猛勉強しました。
この時40の少し前。
この時、僕はすでに生まれていてまだ小さかったのですが、なんとなく親父が寝る直前にベッドでブツブツ呟きながら英語の本を読んでいたのを覚えています。
一年後、同じアメリカ人と商談する機会があり、親父はありったけの文句を言うために英語で台本を作って、それを全部丸暗記したそうです。
商談の場で、その文句をまくしたてた上で、
「お前、一年前に俺に向かって無知なやつだ、と言いやがったな。何が無知なんだ、言ってみろ!?」
と詰め寄りました。
相手は「そんなこと知らない、覚えてない。」とシラを切る。
親父は相手のそう言った反応も想定していたようで、「お前たちはそういうところがずるい。今回だってそうだ。日本側が頑張って開拓してきたマーケットを、儲かるとわかった途端に横取りしにきたじゃないか。何が無知なやつだ、お前たちこそ、卑怯者だ!」とまくしたてたのでした。
結局その後、なんとか両社の間で折り合いはついたそうですが、最後にアメリカ側の人間が親父に、「お前、英語上手くなったな」と言ってきたんだそうです。
その場では「関係ないだろ」と強がっていた親父ですが、その商談の後、暫くはご機嫌だったのだとか。
何かを始めるのに、年齢は関係ない、とか、
なんでもいいからモチベーションを保つことが大事とか、よく聞きますがとても身近な成功事例かな、と思います。
歳をとると新しいことを始めるのが大変とか、脳が衰えてるから物覚えが悪くなる、とか、
科学的に証明されてるのかどうか知りませんが、僕は全部その辺は迷信だと思ってます。
例えば92歳から陸上を始めて105歳で世界記録を樹立した宮崎秀吉さん
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/宮崎秀吉
還暦を過ぎてからパソコンを使い始め81歳でiPhoneアプリを開発した若宮正子さん
https://iphone-mania.jp/news-159604/
こういう偉大な先輩方を見ると、年齢なんてただの数字で、言い訳にしかならないと思い知らされます。
もちろん、宮崎さんはボルトより速く走れないし、若宮さんはアップルのトップITエンジニアとしては働けないかもしれません。
でも、そんな土俵で戦うことよりも、
今自分が置かれた環境で、一心不乱に打ち込むことができるか。
親父も仕事で不自由なく英語が使いこなせるようになったのは40後半から50ぐらいの頃だと言います。
だからと言って、ネイティブのようには今も話せません。仕事で必要なコミュニケーションだけ。
でも、それでいいのだと思います。
それで上手く物事が回っているのだから。
百点を目指す必要も、完璧になる必要も全くない。ただひたすら、新しいことを始める気概と、目の前のことに打ち込むことができるか否か。
それだけで、自分の可能性はいくらでも広げられるんだろう、そんなことを思っています。
僕が30を超えてなお、親父は「若いんだから、色々やってみたらいいんだ」と口癖のように言ってきます。
年齢を理由にせず、挑戦していいんだ、と思うだけで、少しだけ元気が湧いてきませんか?
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?