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全社員で組織運営を考える会を実施した狙いと効果

この記事は「スクラムマスター Advent Calendar 2023」の10日目の記事です。

12/1にKDDIアジャイル開発センター(以下KAG)では、だいくしーさん(Chatwork株式会社 粕谷さん)をお招きして、「KAGの組織運営を皆で考える会」を開催しました。
この記事では、会の開催に至った経緯とその効果についてふりかえって行きたいと思います。


開催に至った経緯

現在の組織への危機感

KAGは昨年KDDI本体より分社化されました。
設立当時は社員数100人に満たない規模だったのですが、わずか1年とちょっとの間に急速に社員が増え、現在は155名となっています。さらに来年度からは新入社員を結構な人数を採用する予定です。
これだけ急速に社員が増えると気になるのは組織文化の維持です。自画自賛にはなりますが、KAGは経営層を含めた社員同士の距離が近く、これがアジリティを持って業務を遂行できる大きな強みとなっています。
Web上では、「組織拡大における〇〇人の壁」のような記事も多く出てきますが、そこでも社内文化の維持や、コミュニケーションの大切さについて多く書かれています。
こういった記事や自身の実体験を踏まえると、急速に増加していく従業員に対して、組織文化の維持について何も手を打たずに進んでいくことに、私自身結構な危機感を覚えていました。同じような危機感を持っている社員は何名かおり、社長との雑談の場や1on1でもその話題をするのですが、具体的なアクションに繋がるわけではなくモヤモヤは残ったまま時間が過ぎていました。

スクラムマスターとして出来ること

スクラムマスターは、スクラムチームと、より大きな組織に奉仕する真のリーダーである。

引用:スクラムガイド 2020

話は少し変わりますが、私の今年の目標は上記の太字部分を形にし、胸を張って「スクラムマスターです」と言えるようになることでした。前段のモヤモヤを解消出来れば、組織に奉仕するという目標に到達できそうです。
ということで、自組織をしばらくの間観察していたところ以下の課題が見えてきました。(他にもあったけど省略。)

  1. 参加メンバ・非参加メンバの温度差
    KAGは外部イベントへの登壇や社外発信が活発です。それ自体は本当に素晴らしいことなのですが、参加メンバはやや固定化されており、非参加のメンバは他人事化しているように思えました

  2. ロールによる壁
    KAGは採用の段階から、デザイナー、エンジニア、スクラムマスターetcとロールがはっきり分かれており、同じ案件にアサインされない限り殆ど接点がないです

  3. 組織運営への関心の低さ
    KAGでは、Scrum@Scaleを用いて組織のバックログを管理しています。このバックログは社員であれば誰でも見れる状態にはなっていますが、日頃の業務に直接関係のあることが少ないせいもあり見ている社員が少なそうです

ここまで長々と書いてましたが、この3つの課題であれば今回の組織運営を考える会で、まとめて解決しちゃえそうだと思ったのが開催に至った経緯です。
以下、それぞれの解決方法になります。

"参加メンバ・非参加メンバの温度差" :全員が参加する場でやってしまおう。KAGには毎週金曜日に各部の活動を順に紹介する時間があり、今回のイベントではその時間を使わせてもらうことにしました。
"ロールによる壁" :組織運営であれば全社員必ず関係しており、ロールを超えてディスカッションする機会になると考えました。
"組織運営への関心の低さ" は、組織運営をテーマに皆で議論する場を設けることで興味を持ち、理解を深めてもらうことに繋げられると考えました。

開催まで

だいくしーさんとの出会い

組織運営に関して学ぶ場を作ろう、ということは自分の中で決めたのですが、どうやって盛り上げていこうかなと思っていたところ、Scrum Inc Japanの研修で、たまたまだいくしーさんとお話が出来る機会がありました。
だいくしーさんの所属するChatworkでは、KAGと同様Scrum@Scaleを導入した組織づくりを実践しており、懇親会でだいくしーさんと話す中で多くの気付きを得られました。この学びを他の社員にも体験してもらいたいなと思い、ダメ元でこの会に参加してもらえないか打診したところ、快くOKをいただくことができました。
本当にありがとうございます!!

そこから開催まで

まずはSlackで社内の反応を見る。

昼ごはん食べて帰ってくるまでにスレッドが盛り上がってたので開催を決めました。(名前隠したけどアイコンで結構分かるな。。。)
この辺のノリの良いとこがKAGは本当に素晴らしい☺️

社長にこのSlack見せながら話してOKもらって、開催が正式に決定しました。ここまで数日🏃‍♀️

その後は運営メンバー募集して、日程調整したり会の詳細決めたり。
今回特に嬉しかったのは、運営メンバ募集時に3年目の方たちが手を挙げてくれたことです。どっちかっていうと非参加メンバ側なのかなと勝手に思ってしまっていたので(これは本当に申し訳ない)、手を上げてくれたこと自体がとても嬉しかったです。

当日の流れ

全社員参加する会は1時間半だけですが、せっかくだいくしーさんに来てもらったので、前後に個々の社員と話せる時間を多く設けました。

  • ランチ会

  • だいくしーさんとの個別相談会 (オフラインのみ)

  • KAGの組織運営を皆で考える会 (オンライン+オフライン 全社員参加)

    • 第1部 だいくしーさんの本から学ぼう

    • 第2部 KAGの組織運営を皆で考えよう

  • 懇親会 (オフラインのみ)

以下、イベント本編のレポートです。

第1部 だいくしーさんの本から学ぼう

本日のゴールとして以下を設定し、参加者に共有しました。
結果的には、理解を深めるまでにしたことでより深いディスカッションに繋がったのかなと思います。

本日のゴール

第1部では、だいくしーさんの本を読んだ社員(3名)がLTを実施。
残った時間でだいくしーさんへのQAを行うという進め方にしました。

FunDoneLearnの人
社長からも質問

だいくしーさんからの講演形式ではなく、社員によるLTとしたことで参加者の方がより現実的な話と受け止めて、ディスカッションに参加出来たように思います。
エンジニアに限らず、社長や、営業担当からの質問も出て、解決したかった
課題の一つ「ロールによる壁」は解消できてそうでした。

だいくしーさんとのQAでも、直接来ていただかないと聞けないここだけの話も多く聞けて、Scrum@Scaleの現実的な実践方法について皆で学ぶことが出来たなと感じました。
今回、配信トラブルで現地会場向けスピーカーが作動しないという問題があったのですが、それによって皆が物理的に近くに来てくれて議論の盛り上がりにつながったような気もします。

第2部 KAGの組織運営を皆で考えよう

こちらは、現在のKAGの組織運営を説明。
その後、参加者からの質問に対し、パネルディスカッション形式で回答していくという形で進めました。

Slackの書き込みを眺めながらのパネルディスカッション

第2部は、第1部にも増して大盛り上がりでした。
皆が組織運営に対して興味関心がないわけではなく、どう接していくか悩んでいただけだったんだなと思いながら進行してました。
ポジティブな意見だけでなく、ネガティブな意見多く出たし、これからどう良い方向に進めていけるかというのを時間をかけて議論できたのは、すごく素敵な時間だったなと思います。
司会進行なのに時間を忘れて、ディスカッションに夢中になってしまうくらい最高な空間でした。

Slack書き込み多くて素晴らしい

会の終わりに今日のゴールを達成できたかを聞いてみたら、現地の全員手を挙げてくれたのできっと参加者にとっても良い時間だったんだろう。

懇親会

懇親会では、作成中のRSGT2024のスポンサートークの模様を全体レビューしました。良いフィードバックも頂けたので本番までにより良いものにしていこう。

これからに向けて

今回の会を行うことで、解決したかった3つの課題(参加メンバ・非参加メンバの温度差、ロールによる壁、組織運営への関心の低さ)については、間違いなく期待していた以上の効果が得られたと思います。

ただ、今回の会を良いイベントだったね〜で終わらせてしまっては、価値がないとは言いませんが開催の意義は大きく下がってしまいます。
会のタイトルにもあえて第1回を付けており、この会をきっかけに今度はこの人を呼んでみたい、って声が上がって、第2回、第3回と継続して開催されることを期待しています。

会のタイトル

おわりに

イベント終了後もKAGの皆さんから感謝の声をたくさん伝えてもらい、やって良かったなぁと思えました。
piyoさんがポストした内容にほぼ同意なんですが、思っていることを吐き出して今後に繋げていくって、完全にふりかえりだなぁと。

今回改めて思ったことは、「場を提供すること」の大切さでした。
チームにはふりかえりという思いを吐き出せる場が毎週あるけど、今までのKAG運営には組織に対する思いを吐き出せる場がなかったなぁと。
組織に奉仕するスクラムマスターとしてそこは改善せねば。

おまけ

やりたいことをやって周りから感謝され、最高の時間を過ごさせてもらい、KAGのことをより好きになれたので、どう考えても私が一番得したイベントでした。
こう感じてしまうのは真の奉仕者に慣れてはいないんだろうなぁ。。。



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