らぶらぶらぶ
はじめて買ったレコードは黒猫のタンゴで、はじめて買ったアルバムはカセットテープのさだまさしで、はじめて買ったCDはドリカムのLOVE LOVE LOVE。2歳の息子がドラマでこの歌が流れるとおしゃぶりをしながら身体を揺らして、とても気に入っていたのでCDを買った。
言葉が遅いですね、食に偏りがありますね、トイレトレーニングも終わってないのですね、遊び方にこだわりがありますねと訪問してきた福祉の担当者は心配してくださったが、お母さんは子どもが可愛いですか?子どもが夜寝ないと苛立ちますか?家族でなにか問題はないですか?ご主人が単身赴任だと子育てでお困りのことありますよね?と矢継ぎ早に聞かれたので、まるで取調室の容疑者になったみたいで怖くなってしまい、言葉に詰まってしまった。戸惑ってしまったら、刑事の取り調べに落ちたみたいになって、この先に何が起きるのか不安になったので、質問のひとつずつを丁寧に正確に答えた。そして、いつも一緒にプールを出して遊んだり、焼きそばやピザを食べたりする同じアパートの先輩ママさん二人を呼んで同席してもらった。二人は私と息子の普段の様子を話してくれて、子どもの成長についての早い遅いをもっと優しい表現で話すことが母親への労いになるというようなことを、力説してくれた。そして、次の日には役所のスーツの人が謝りに来て、先輩ママたちは「ついでで悪いけれど、いつも行く公園の砂が減ってきたから補充して欲しいです、その担当部署に伝えてくださいね」と笑顔でお願いしていた。2ヶ月くらいしたら、砂場の砂が満タンになっていたから、大人と子どもで砂の団子を恐ろしくたくさん作って、最後に団子の山に子どもたちは飛び込んだ。
だから私はこの曲の最後のLOVE LOVE 愛を叫ぼうの力強いフレーズを聴くと、今でも先輩ママたちが愛を叫んでくれていたことを思い出す。あのときの砂の団子は愛の塊だ。
初めての子育てでは、私も息子も「ねえ、どうして?」の連続だったけれども、ドリカムが歌う「ねえ、どうして?」のおかげで、時間をかけてひとつひとつの謎を解いていくことができたのだと思う。息子はお気に入りのこの歌を聴きながら、玄関からリビングにトミカの長い列を作る。その列には法則があって、車のメーカー別に並んでいる謎が解けたときは関心した。実際の車についているエンブレムを覚えていて、その列を作っているようだ。ねえ、どうしてそんなに細かなことがわかるの?と不思議だったのだが、私は子どもの頃に車の一部分を見ただけで車種を当てるのが得意だったと母が教えてくれた。車が好きな私と息子は寝そべって、小さな長い車列を眺めたまま毎日昼寝をした。ドリカムをリピートしながら。
この曲が流れていた25年前のドラマが再放送された。リビングの床に寝そべって、ドラマの二人の手話を見ていたら、その可愛らしいやりとりに涙が溢れてきた。涙が、出ちゃうんだよ。