人生をかける遊びと仕事
2021年4月5日に発売された書籍のお話。
「キャンプ職業案内」(三才ブックス)
「キャンプ」を主軸にしたあらゆる職業から見たキャンプの本。キャンプにまつわる、フリーランス、メーカー、キャンプ場、ショップ、ブロガー、ユーチューバー、イベントプロデューサーなどが出ています。キャンプを最先端で引っ張る人たちから、裏方から築き、守ってきてきた人たちの本当の言葉が、佐久間亮介さんの文章になって書き綴られた書籍。
わたしにとっても今や切っても切れない腐れ縁のような仲間が本を出した。
この書籍、どう紹介すればいいのか悩みまくったけれども、
上手に書評なんてできないから。素直な気持ちを書こうと思う。
邪道から入ったキャンプの仕事
この本の著者佐久間亮介さんは脱サラをしてキャンプコーディネイター、ライター、モデル、ブロガーをしている、飛ぶ鳥を落とす勢いのキャンプ業界のなかの一人だ。
元々は日本を一周しつつ、その時全く皆無だったキャンプ入門向けブログを運営していたブロガーから、紆余曲折してキャンプ業界にもぐりこんだ。
おおよそ同時期(少しだけ先だけど)にわたしも脱サラ(?)をして、イラストレーターとキャンプコーディネイターになった。
実はわたしも入門向けではないけれども単なるキャンプ漫画ブログを書いてたことがきっかけで、仕事をやめてこの世界に入ってきたのだ。
(キャンプコーディネイターとは...わたしのなかでキャンプコーディネイターは、「キャンプx〇〇」を組み合わせたときにキャンプの視点でモノやコトができるということだと定義している。)
この本でわたしはイラストレーターとしてインタビューをさせてもらっている。イラストもキャンプもわたしの人生には切ってもきれないものだったので、本当にうれしかった。
この本は、合計二万字にもなるインタビューの話をたった2000文字ほどにまとめて、かつ自分たちが大切にしている部分をしっかり彼の言葉で書き綴っている。
30人もの人生を通したキャンプの仕事の話。
とてつもない重さにも感じられるけれども要点のようにまとめられているからか、さっと読める。
しかし、一人一人の言葉が読んだあとしっかり自分の心に残っているのだ。
インタビューを受け、それが文字になって戻ってきたとき、「この本はきっといいものになるだろうな」と率直に感じた。
たった2000文字のなかに、仕事への姿勢と人生をかけた想いがしっかり組み込まれていたからだ。
適当にやろうと思えば、できないこともない。しかし彼の性格がそうはさせなかった。
30人、一人一人と向き合い、飲み込み、丁寧に文字にしていく。
そんな作業を想像できる、誠実で愛ある一冊になっている。
よく、彼と仕事をすることがあるのだけど「え!?ここで考える!?」「なんでここでストップするの!?」と驚くことがある。(いや、逆に言うとわたしが猪突猛進すぎることもあるんだけども。)
彼は考える。
その仕事が、ちゃんと相手も幸せなのか、自分も幸せなのか。
周りも幸せなのか。
誠実で真面目で勤勉。嘘みたいだけどそんな人間も実際いるのだ。(だからと言ってアホでもあるから安心してほしい。完璧ではない。)
才能でもあるけど、結局思いやりから来る行動なのだと思う。
そんな彼が選んだ仕事が「キャンプ」で、それに人生をかけた結果が今こうしてある。
キャンプをずっと支えてきた人たちの言葉
この書籍の本当にすごいところは後半にあるとわたしは思う。
10年以上前、キャンプの「キャ」の字も聞くことがなかった時代から、
この世界にいて物作りから、場所から、支えてきた人たちがいる。
そこにしっかり焦点をあてているのが後半部分だ。
少し昔の話をさせてもらおう。
20代のころキャンプに出会い、キャンプで人生が大きく変わったわたしはこの業界に恩返したい!とまたよくわからない使命感に燃えて日々活動をしていた。
そんなときにたまたま居合わせた
ユニフレームさんと(この書籍には残念ながら出ていないのだが)新富士バーナーさんの会話が衝撃だったのだ。
「狭い業界なんだから、メーカー同志いがみあって競い合うんじゃなくって、手に取りあいながら一緒にこの業界を盛り上げて行かなければ」
あの頃のわたしは、もっと社会は残酷で、いがみあい競いあうようなそんな資本主義な人たちばかりだと思っていたから。
こんな言葉を素直に言える素敵な人たちと一緒の場にいれることがとてもうれしかったことを覚えていたし、伝えていきたいと思っていた。
その言葉が、この本にしっかりと残されている。
「小売店さんとの信頼関係を作って、ユーザーさんが喜ぶ製品を作って、彼らがキャンプに行く回数が増えればキャンプ場さんも喜ぶ。〜中略〜 そんな風にみんなが潤うには何が必要かを考えながら日々仕事をして、取引先やユーザーさんからありがとうって言葉をもらえた時にも達成感を感じられますね。」(「キャンプ職業案内」ユニフレーム営業担当インタビュー文中から抜粋)
1985年から創立された会社で受け継がれた本来の商売の意味。
キャンプが楽しいことの背景の1つに、わたしたちが使っている道具の良さがある。
その道具がどんな想いで繋がり作られているか。
それが誰にでも伝わるような言葉になっていたことが、
本当にうれしかった。
キャンプだから見えること
全国のキャンプ場に足を踏み入れると、
自然と、そこにある町が見えてくる。
それをどう言葉にしていいか悩んでいたからなのか、
ケニーズファミリービレッジさんの言葉にはっとさせられた。
土地が持つ風土はここでしか味わえないからこそ、キャンプを通してお客さんにそれを感じてもらいたい。自然があって人の営みが暮らしができていって、どこから水が流れて、地層がどうなっていて、山と林業がどう関係しているか・・・(「キャンプ職業案内」文中から抜粋)
そうなのだ。
キャンプで知りえることは、「自然が美しい」だけじゃない。
自然があって営みと暮らしがあることに改めて気付かされるのだ。(人によっては当たり前かもしれないけれども、実感としてわかりにくい場所もある)
そんな自分たちの暮らしの原点に気づけるのは、キャンプだからこそだと思う。
これは全く奥まった自然のアクティビティじゃ見えてこないと思う。
自然と里の間にある場所に行くキャンプだからこそ、そこを目的にしているからこそ気づける。
そんなことが、はっきり言語化されている。
そんなキャンプの本、すごすぎる。
最後に。
わたしもキャンプ業界の端くれにいさせてもらえているから、
この本ができたことは本当にうれしくてしょうがない。
別に身内褒めするつもりは全くない。
ただ単に、
「あぁキャンプ好きでよかった〜。こんな素敵な人たちに囲まれている仕事ができてよかった〜〜〜〜〜」
って、改めてうれしく幸せだなぁって思ったのだ。
そしてこの幸せの連鎖を日本中に広げて、誰か一人でも救えれたらもっといいなと思っている。
最後に、スイートグラスの社長の言葉を受けて彼がしめた一言を紹介したい。
キャンプ場の未来について考えることは、地域や自然との関わり合いを見つめ直すことでもある。「未来は自然の中にある」というきたもっくの合言葉を今一度思い返そう。キャンプ場の、地域の、日本のアウトドアの未来は、自然にこそ眠っているのかもしれない。
キャンプの未来を考えることは、
暮らしと自然の関わり合いを見つめ直すこと。
そして、日本の未来は自然にこそ眠っているのだ、と。
彼が生涯をかけた想いはこの言葉にあるのじゃないかと、
わたしは思う。
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