映画『RRR』感想とエンドロールの正解
はじめに
今更ですが『RRR』を観てきました。事前情報まったく入れなかったのですが、それで正解でした。
今は、面白かったという素直な感情と同時に、恐怖と悔しさが同居しています。
ジャンルでいうなら『なかやまきんにくん』が一番近いと思います。
面白いとかの次元じゃなくて『パワー』。
私の他に50名ほど観客がいたはずなのですが、誰もエンドロールで立ち上がりませんでした。私は月に1回は映画館で映画を見ますが初めての経験です。
というより、最後までパワーに圧倒されて立ち上がれないという方が正しい。
この映画に余韻とかいらんのや!って感じで最高に良かったです。
終演後10秒ぐらいして大学生と見受けられるグループの笑い声(事情を呑み込む為の時間がかかった事に対する同調を呼ぶための笑い方)がしたんですが、その時に「日本負けたな」って思ってしまいました。
「…インドまじで世界取ろうとしてるじゃん」
以下、ネタバレを含むので承知された方のみ自己責任にてお読みください。
「これでいいんだよ」の更に上
私は「バーフバリ」を見てないので、監督はおろか役者は一人もわかりません。(そもそも俳優自体にあまり興味がありません)
この映画はポスター通り主人公が2人いるんですが、そのキャラ紹介からもうめちゃくちゃでした。(褒めてます)
まず、警察官の主人公「ラーマ」の登場シーン。
警察の拠点があれバイオハザード見てたっけ?と勘違いするぐらい物凄い数のインド人に囲まれています。
引きの画角にも入りきらないぐらいのインド人。しかも多分CGとかじゃなくエキストラなんですよね。
取り合えず、インド人が無限にいて拠点の防衛柵は今にも壊れそうになっています。主人公含め警察サイドはピンチなわけですね。ウォーキングデッドにもこんな感じのシーンあったよね。
一応、なぜ囲まれているのかは軽く説明が入るんですが、適当に流していいです。この映画はずっとこんな感じで細かい所は『凄み』で理解します。
私は「そうそう、こういうシンプルなシーンの方が人物理解しやすいよね」という気持ちで観ていました。
が、一味いや百味ぐらい違いました。さすがにインド、スパイスが多い。
経緯は省きますが、主人公が『1人』でその大群に突撃。武器は棒切れのみ。
そこの迫力が凄くて、ハリウッドでも撮らない、撮れないようなシーンが連続します。
体感として1人対五千人。見てるこっちとしても、何をしてるんだこいつって感じです。
漫画で例えるのも芸がない感じがしますが、ワンピースでいうと司法島のルフィぐらい暴れます。※実写映画です。
しかも五千人相手にちゃんと勝って帰ってきます。あんなにいたインド人は気圧されて散り散りになりました。警察仲間はドン引きしています。私も同じ気持ちでした。
一方、もう一人の主人公「ビーム」はなんか虎と戦って勝ちました。知らんけど。こっちの画角もかなり独特です。インド面白いな。
インドは手話が盛ん
そんなこんなでシーンが変わり2人はデリーにいます。橋の下の少年がガソリンだらけの海で火に囲まれています。
「何故こうなったのか」はステーキ定食についてくるブロッコリー程度で素早く消化します。インド映画はカロリーが高いのです。
まだ会った事もない2人ですが、ピンチの少年を助けるために身振り手振りで伝えます。遠くに居たときはともかく近くに来るタイミングもあるのに全く喋りません。
「なんで?」といった疑問はすべてガンジス川に流してください。紛れます。
結構複雑な作戦を高度な手話で理解した2人は、見事ガンジスクロスを決めて少年を助けます。
ガンジスクロスの時、インドの国旗持ってるのずるいけど面白いんですよね。なんで国旗?と思ったら体を覆って火を防ぐんですよ。
国旗で火を防ぐのは常識ですよね!いや、手話伝わりすぎやろとか思う人も国旗に包る練習はしてた方がいいです。
細かい所は抜きにして、もう絵が滅茶苦茶カッコいいので絶対劇場で見た方がいいです。
この時から何故かずっと続く「ラーマは馬」「ビームはバイク」という暗黙の了解も好きです。後になるほどじわじわ来ます。
少年を助けた後、2人して謎の人間ピラミッドに登って喜ぶんですが、もう気になりません。ここら辺からはもうひたすら楽しくなっててOKです。クラブで意味ないけど揺れるのと一緒です。
この後2人が仲良くなる差し込みVTRがあるんですが、これもとても微笑ましくて良いです。
こういうのハリウッドとかだとパッと終わらせちゃいますが、インドはがっつり時間をとります。
ナンの発酵を待つように、温かい気持ちでインド人男の青春を見守ります。
「ラーマなんで気付かないんだよ笑」
…とか言う人はナンのおかわりができなくなるので覚悟しておいてください。
ナショナリズムごり押しダンス
公私混同で英国女性に惚れるビーム。ラーマの助けもありパーティーに招待されます。パーティーの社交ダンスに参加するも、嫉妬した英国人男から足を掛けられた挙句に褐色人種である事を貶されるビーム。
「人種差別はよくないね。これは暴力で解決か?」
…ノンノン。ダンスでしょ!
突如ラーマが叩くドラムに合わせてビームが踊りだします。
おわかりですね?『ナートゥ』タイムの始まりです。もうひたすら踊ります。
英国男性を一切擁護せずインド人2人を応援する英国女性。
この映画中ずっと英国男性はずっと悪役です。悪役にも事情があって…みたいな展開も一切ありません。英国女性は親玉の女性だけ性格が悪いですが、他は主人公たちに好意的。かなりインド人補正かかってます。
この映画、国際社会とか多様性とかガン無視でイメージを植え付けます。最近の世論に負けた映画を見ていた方々は胸のすく思いではないでしょうか。私もそうです。
そういう意味でも、絶対ハリウッドだと撮れない映画だなと思います。
英国男性は悪者で、英国女性は身内を殺されてもニコニコしてインド人を応援してたりします。まあでも映画ってこれでいいと思います。皆もポリコレには飽きてきたと思うので。
エンドロールもですが、マジで国際社会に媚び売ってないです。ダンスしながら全然知らないインドの偉人を称えたりしてますが、勢いで誤魔化されます。
インド人はすごく愛国心が増す内容になっているんじゃないでしょうか。
インドのインドによるインドのための映画なのに世界に通用しちゃうのは恐怖です。日本もまたこういうの作れたらいいですね。
ええっ?2人でやっちゃうのかい?
色々話を飛ばしてクライマックス。シータからラーマの事情を聞き、単独ラーマ救出に向かうビーム。しかし、監獄から助けたラーマは足を怪我していました。
ここで伏線を張ってた新アクションが炸裂します。
肩車です。
もう一回いいます、肩車です。
ビームの上にラーマを乗せただけです。
「え?めちゃくちゃ不利じゃね?」って思うのはインド初心者。常識で考えてはいけません。
ビームonラーマは物凄く強い。考えてみてください、素手で虎倒すやつと棒切れでインド人五千人退けるやつの融合です。
「ビームとラーマが合体して…ビーマってとこかな…」
ってな具合にイギリス人兵士をなぎ倒します。肩車は字面だけみたらイメージが沸きにくいですが、ちゃんとアクションとして成り立っていて凄くかっこいいです。
2人は肩車状態のまま見事監獄脱出に成功します。
逃げ込んだ森でラーマの足はビームがその辺の草をゴリゴリやって回復させます。通常そんなすぐ治るはずないですが、ビームの薬草作成能力はカンストしているのです。
1時間で死ぬ毒もそこら辺の草をゴリゴリやって治してました。やっぱり自然って偉大だよね!
ゴリゴリやってるうちに追手が来ますが、足が回復してついでに戦いの神になったラーマが弓矢で無双します。何を言ってるかわからないと思うが….(略
追手も余裕で退ける2人。そこの戦闘での負傷は、覚えてる限りでは拳銃が腕にかすった程度です。マジでバケモンかよ。
ただ、私も展開に慣れてきているので正直ここまでは理解できました。インド映画はここからがすごいです。
敵の武器を得るためにラーマはわざわざ潜入していました。
それを考えると、ここは敵から物資を奪い→仲間に配り→仲間と一緒に突撃すると思うじゃないですか。
しかし、予想は遥か上を行きました。例のごとく奪った馬とバイクで敵本拠地に向かう2人。ん?
私の中のマスオさんが焦り始めます。
「ええっ?2人でやっちゃうのかい?」と
一応整理しておくと、ラーマは足を壊されて、飯も一週間に一度しか食べれない状態のまま足も伸ばせない独房に投獄、解放後ぶっ続けで戦闘してます。戦いの神の名に偽りなし。
そもそもこいつら倒すためにラーマは潜入して武器を得ようとしいたんじゃないのか、などとくだらない事を考えているうちに2人は敵陣に突っ込みます。
例のごとく卓越した手話でやり取りする2人。いや、もう口頭で話せよ。
という間にビームが空中で乗り捨てたバイクにラーマが火弓を放ちます。そのままバイクは火だるまになり敵城へ。
ぼーっと見ている敵陣。そりゃ火だるまのバイクが飛んで来たら放心しますよね。わかるよ。
そのまま火薬庫に引火し、敵ボスの城が爆散します。敵部隊壊滅。
展開激しすぎてニコニコ本社の爆破MAD見てるのかと思いました。
手話で何かを理解していたビームがちゃっかり大量の武器を確保しています。時間的に無理と思った方、ビームの脚力は半端じゃないです。マジで。
そのままラスボスも殺します。一応伏線回収みたいなものはありましたが、ラスボスは命乞いをしただけでまともに戦ってません。しびれるぜ。
エンドロールの正解
ここまで見て誰しもが感じたと思います。
「もう武器いらなくね?」と。
一応ラーマが銃を故郷に持って帰ってるのを見て、
「それ目的と手段逆になってない?」と意識高い上司みたいな指摘をしそうになりました。
もちろん、今回のボスだけが敵じゃないのはわかります。
ただ、あの規模の戦闘を2人で勝利する化け物がいるならもうインドは安泰だよ。
中盤にラーマが実は武器を手に入れるためにあえて英国側についているという事が発覚するんですが、その時から『お前ら素手でいいだろ!』と思ってました。
そして、物語は不自然なぐらい完璧な大団円を迎えます。
さらっとジェシーいたけどどういう心境なんだろう。
思いをはせる間もなく、ラーマとビームのダンスが始まっていました。インドってホントにダンス好きですね。
重要人物でした。みたいな感じでドアップで出てくるガンジーをはじめとしたインドの偉人を眺めながら、「あ、これエンドロールなんだ」と右側で申し訳程度に流れる文字を見て気付きました。
画面9割踊ってるから誰の名前も見なかった。なんて斬新なエンドロール。
一通り踊り終わったかと思うとIMAX上映の文字。
「終わり方そっけな!」10秒ぐらい観客全員虚を突かれていました。
エンドロールで観客が誰も席を立たずにいるのを体験したのは初めてでした。確かにあれは誰も立てない。
なんか他国の偉人をデカデカと見せられるの若干の敗北感あるので日本もぜひやってほしいですね。
まさかこの映画でエンドロールの正解を見るとは。そう思いながら劇場を後にしました。
インド映画なめてたので『バーフバリ』も見てみます。
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